慶大は昨季の関東大学リーグ1部で最下位に沈み、10年ぶりの2部降格という屈辱を味わった。「再建」を期して2月から始動した新チーム。2部優勝、昇格を目指し、シーズン開幕に向けて牙を研いでいる。ケイスポでは、新チームの中心を担う選手、スタッフに意気込みを語ってもらった。
第1弾は、2年目を迎える期待のアタッカー、松岡瑠夢(総2・FC東京U-18)の単独インタビューをお届けする。FC東京のユースで10番を背負った逸材は昨季、ルーキーイヤーにして15試合に出場。得意のドリブルで才能の片鱗を見せつけた。慶大の未来を担う松岡は大学2年目を迎え、今何を思い、感じているのか。
(取材日:3月14日)
――まず、入部して1年が経ちましたが、部や生活には慣れましたか
はい。部活というのは初めてなんですけど、1年経ってだいぶ慣れてきました。
――1年前のインタビューではユースと部活の違いについて話していましたが
まあサッカーも違うし、生活の部分でも違うところが多いんですけど、でも将来自分がプロになった時とかに、高校サッカーからプロになった人もいればユースから行った人もいて、両方知ることができるのは自分にとって良いのかなと思います。
――昨季についてお聞きしますが、チームが2部降格となってしまった昨季を振り返っていただけますか
去年は良い時がほぼなくて毎週毎週難しい戦いだったんですけど、正直自分も何もできなかったですしチームとしても何かを残すことができなかったので、不甲斐ないシーズンだったなと思います。
――シーズン前は優勝を目標としていましたが、実際にリーグ戦を戦っていく中で思っていたのと違った部分はありましたか
自分も初めてだったので、他の大学がどれくらいのレベルかも分からなかったですし慶應がどれくらいなのかも分からなかったんですけど、やっていく中で、去年なら明らかに筑波とかはやっていても次元が違ったというかレベルが高かったので、後期は残留に目標を変えてしぶとく戦うというふうにやったんですけどそれもなかなかできなかったので、まあしょうがなかったのかなと。降格も偶然じゃなかったというか、せざるを得なかったというか、そういう感じです。
3、4人抜いてシュートを打つ力がまだ足りない
――個人としては徐々に出場数も増やし、1年生としては最多の15試合に出場しましたが
まあちょっとシーズン最初にケガをして前期の最初の方は少し出遅れたんですけど、前期もほぼそこから試合に出させてもらって、後期もほぼ毎試合(出させてもらった)。自分はだいたいチーム的に後半の残りの勝負のところで投入されることが多くて、だけど1点も取れなかったので、自分としては今までで一番悔しかった一年だったと思います。
――前を向いたときにはドリブルの仕掛けがかなり通用した部分もあった一方で、なかなか得点には絡めませんでした
ドリブルは自信があるというか通用するのは分かっていて、いかに点を取るかを考えていたんですけど、なかなか良い形でシュートを打てるところでボールを持てなかったですし、難しいところもあったんですけど、でもなんとか点を取ったり絡んだりしないと自分の立場的にもいけなかったかなと思います。
――通用しなかったと感じた部分や得点に絡んでいくために足りないと思った部分はどこですか
ユースまでは自分で2人くらい抜いてシュートを打ったり、裏に抜けたりというのが自分の形だったんですけど、何人いても一人で局面を打開できるというか、3、4人抜いてシュートを打つというような力がまだ自分には足りないなと思っていて、やっぱりユースの時はほぼ自分たちでボールを支配していてかなり良い状況でやっていたので、それこそそれくらいの力で良かったんですけど、でもここに来て自分は本当に良かったというか、さらに自分のレベルを上げるのに良いかなと思います。ハーフラインくらいで持っても一人でシュートまで行けるような力が足りないなと思います。
――自分でドリブルで抜いていくという部分をもっと伸ばしていきたいということですか
そうですね。
――高校時代のユースと大学サッカーの違いはどのようなところだと思いますか
ユースの時はほとんど作戦とかがなくて、どの相手とやっても自分たちのサッカーをするというのがあって、だけど慶應に来て相手の方が格上の時もあって、そういう時は、例えば絶対に勝ちたい時の戦い方だったり、戦い方のオプションが多くて、そういうサッカーの戦術の多さとかは大学の方が多いかなと思います。
――今までとは違って自分の良さが出せない部分もある中で、それもまた自分にとってはプラスになる部分があると感じますか
そうですね。それこそこれから先、自分のいるチームがずっとボールを持っているチームだとは限らないですし、忍耐強く耐えてそこから出ていく力だったり走力だったりというのは間違いなく身に付くと思うので、そういうしぶとさだったりというのは付くかなと思います。
FWで勝負したい
――今季についてお聞きします。新シーズンが始まって新チームの印象はいかがですか
監督も代わって雰囲気も去年からがらりと変わって、厳しい中にも明るさだったり、みんな前向きにサッカーに取り組んでいて良いなと思います。
――やはり一番大きな変化は監督の交代だと思いますが、冨田賢新監督の印象はいかがですか
明るくて非常に良い人で、もちろん規律はありますけど思ったことを言い合えて、良い雰囲気で話してくれる人だと思います。
――昨季から変わったことはありますか
より主体的になったというか、去年までよりも自分たちでより考えてサッカーするようになったし、必要なミーティングの時間が増えるようになったと思います。
――戦術の面では新しい取り組みなどはありますか
3人目の動きなどですね。去年はどちらかというと守備(の取り組み)の方が多くて、今年ももちろん守備もやっているんですけど、少ないタッチで動かしながら3人目が出て行ったりとかダイレクトプレーだとかそういうところを重点的に監督はおっしゃっているので、何回か紅白戦でも良い場面はありましたし、そういう連携したプレーというのが今年は多いかなと思います。
――アタッカーとして新監督に求められていることはどのようなことだと思いますか
自分はまた今ケガをしていて、今日ようやく途中から部分参加みたいな感じでできているのでまだ試合とかは一回もやっていないんですけど、でもやっぱり自分のポジションは点を取ることを求められていると思うので、そこにこだわってやっていきたいです。
――昨季は2トップの一角や右サイドでプレーをしていましたが、今季はどのポジションでプレーをする予定ですか
それは監督と話して、自分は中央がいいのでFWで使ってほしいとは言っています。まだ始まってみないとどうなるのか分からないんですけど、FWで勝負したいなと思っています。
――FWでのプレーが一番得意ですか
はい、そうですね。
――昨季は前線で相手DFを背負うようなプレーなど得意ではないプレーも多かったと思います
なるべく前向きで受けたいですけど、でもやっぱり引いて守っている状況では、FWにいれば(DFを)背負っている状況が多いので、そういうところも上手くなって、でも今シーズンはもっと簡単に味方を使ってもっと前で勝負したいなと思います。
のびのびプレーをした方が自分はいいプレーができる
――昨季はベンチスタートが多かったですが、今季はスタメンに定着したいという思いもありますか
みんなサッカー選手はスタメンで出場したいと思うので、自分ももちろんそうですし、長い間プレーをしたほうが自分のためにもなりますし、なので今シーズンはスタメンを取れるように頑張りたいです。
――これからスタメンを取ったりもっと得点に絡んでいくために、今の自分に足りないと思うところやそのために取り組んでいることなどはありますか
フリーキックにちょっと取り組んでいて、自分はファールをもらうことが多いので、それで決められたら得点数も伸びると思うし自分はそれがなかったので、そこを極めたいと思っています。
――キッカーは任せられているのですか
任されているというか自信があるやつが蹴るという感じなので、練習して試合で蹴れるくらいになりたいなと思います。
――昨季は1年生でのびのびとプレーをする立場でしたが、今年はルーキーではなくなって徐々に攻撃陣を背負っていくという責任も生まれてくるのではないですか
自分はジュニアユースとかでキャプテンとか副キャプテンをやっていて、だけど自分は声を出したりとかしていると自分のリズムが狂うというか、そこを一回監督に注意されて、のびのびプレーをしたほうが自分は良いプレーができると言われて、そういう重圧というか引っ張るというようなことはあまり意識しないで自分は自分のプレーをやって、それでチームに貢献できればいいかなと思います。
――先ほどケガをしているというお話がありましたが、リーグの開幕には間に合いそうですか
そうですね。1週間くらいで完全に復帰できるんで。
――今季の個人的な目標を教えてください
前期と後期で、本当に今年は1点でも多く得点を取りたいと思います。
――チームとしての目標はやはり1部昇格ですか
そうですね。2部も簡単ではないですけど、自分たちにもプライドがあるので、一年で1部に昇格して、(自分が)3年生の時にはまた1部でやりたいです。
――最後に応援してくださっているファンの皆様にメッセージをお願いします
早慶戦だったりリーグ戦だったり、今年も4月が始まったら忙しいと思うんですけど、自分たちは上手くいかない時でもチーム一丸となって早慶戦勝利と1部昇格を目指して一生懸命頑張るので応援よろしくお願いします。
(取材:桑原大樹 写真:中村駿作)
松岡瑠夢(まつおか・りむ)
FC東京U-18を経て、総合政策学部新2年。ポジションはFW。仕掛け、フィニッシュの両局面で存在感を出せる天性のアタッカー。独特なリズムのドリブルが最大の武器で、独力で打開する力はチーム随一。