今節、慶大はここまでリーグ戦1勝にとどまっている拓殖大との一戦を迎えた。前半立ち上がりこそ慶大がペースをつかんだように思われたが、いくつかの決定機を外すと徐々に主導権を相手に渡す展開に。両者譲らないぶつかり合いの中、相手のミスにも救われスコアレスで前半を折り返すと、後半開始直後47分に山田盛央(総3・藤枝東)のゴールで先制に成功。前節の勝利(2○0)の勢いのままに勝ち切り、連勝を飾りたい慶大であったが、84分にクロスをフリーで押し込まれ痛恨の失点。終了間際の反撃も実らず、勝ち点1を分け合う結果となった。
第92回関東大学サッカーリーグ戦 第10節 vs拓殖大
2018/06/17(日)11:30KO @日立市民運動公園陸上競技場
【スコア】
慶應義塾大学1―1拓殖大学
【得点者】
1-0 47分 山田盛央(慶應義塾大学)
1-1 84分 青木義孝(拓殖大学)
◇慶大出場選手
GK上田朝都(総3・横浜F・マリノスユース) |
DF井出悠介(環4・桐蔭学園) |
DF鴻巣良真(総4・国学院久我山) |
DF篠原新汰(総1・FC東京U-18) |
DF野村京平(総3・国学院久我山) |
MF増田皓夫(商4・桐蔭学園) |
MF八田和己(総3・桐蔭学園) |
MF山田盛央(総3・藤枝東)→90+5分 橋本健人(総1・横浜FCユース) |
MF松木駿之介(総4・青森山田)→67分 内桶峻(政2・国学院久我山) |
MF多嶋田雅司(商3・国学院久我山) |
FWピーダーセン世穏(経3・FCトリプレッタユース)→75分 福本拓海(総3・済美) |
茨城県の日立市民運動公園で行われた今節の拓大戦。現在9位の慶大は、前期リーグ戦残り2試合で勝ち点を少しでも積み重ねるため、勝利だけを目指す。けがで戦列を離れていた八田和己(総3・桐蔭学園)がボランチに復帰し、連勝マークを狙う。
ここ数試合で少しずつ復調の兆しを見せている慶大は、今節も前半立ち上がりからボールを支配する。セットプレーから得点を狙い、滑り出しは上々。だが、拓大に徐々に流れを引き寄せられていく。15分には相手CKの折り返しがバーに当たるなど、胆を冷やす場面も目立ったが、鴻巣良真(総4・国学院久我山)を中心としたディフェンス陣が体を張った守備で応戦。なかなかペースをつかむことこそできないが、「相手が焦れてきたところをカウンターで狙っていく」(松木駿之介=総4・青森山田)というゲームプランに沿って試合を展開していく。この日攻守ともに抜群のキレを見せたボランチの増田皓夫(商4・桐蔭学園)を起点に、数多くのFKとCKから好機を創出。しかし、なかなか相手の堅い守備を崩し切ることができず、スコアレスで前半を折り返す。
迎えた後半立ち上がり47分、ビッグチャンスが慶大に訪れる。中盤でセカンドボールを奪った増田が中央を駆け上がると、増田からのスルーパスに裏へ抜け出した山田がマークをワンタッチで振り切り、強烈なシュートを叩き込む。「狙っていた」(山田)形で先制に成功すると、その後も理想的な後半を送る、はずだった。立ち上がりにリードを奪ったものの、その後は相手の攻撃陣が牙を剥き、苦戦を強いられる展開に。67分には松木に代えて内桶峻(政2・国学院久我山)を投入し、攻撃パターンの変化を図るが、相手は攻撃の手を緩めず、繰り返しゴールを脅かされる。GK上田朝都(総3・横浜F・マリノスユース)の好セーブや鴻巣、篠原新汰(総1・FC東京U-18)らの連携でなんとか難を逃れるが、84分にエリア内でクロスを合わせられるとついに同点弾を許す。終了間際に試合を振り出しに戻された慶大は、最後まで増田らを中心にゴールへ襲い掛かったものの、アディショナルタイム5分のアタックも実らず。順位を争う相手と勝ち点1を分け合う結果となった。
前節の6試合ぶりの勝利から、チームが勢いを取り戻したかと思われただけに、今節の引き分けは満足できる結果ではないだろう。チームの意識の共有の不十分さが失点につながり、またもやあと一歩のところで勝ち切ることができなかった。長い戦いも次節で折り返し地点。関東リーグも前期最終節を迎える。今節露わになった課題をしっかりと修正し、再び「慶應らしく一つになって」(冨田賢監督)——。前期の最後にもう一度、勝利の笑顔を届けて欲しい。
(記事:髙橋春乃 写真:中村駿作、桑原大樹、岩見拓哉)
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試合後コメント
冨田賢監督
しっかり僕らがブロックを敷いてカウンターにつなげていこうって中で、その中から1点取って非常に良い形でできてたなっていうところと、あとはもう最後しっかり守り切る、行かなきゃいけない時にちょっとやっぱりチームとして共有が足りてなかったなというところですね。
——前後半通して拓殖大に押し込まれている印象だったが
今日に関してはある程度持たせても僕らのリズムになるなっていうのは思っていたので、逆に持たれている中で変に慌てないでカウンターにつなげられるところはあったんだけど、ちょっと慌ててそこが見えないで戦い切れなかったっていうところがあるので、そこはしっかり修正して次につなげたいなと思います。
——前期残り2試合を迎える中で何か声を掛けたか
前期最後で、そのあとに早慶戦もあるし、そういう意味では慶應らしく一つになって戦う。ちょっとずつ今日もそれが出てきて、あとちょっとのところで勝ち切れないというふうに続いてるんだけども、そこをもう1回チームとして共有して2週間あるからしっかり良い準備して、勝って締め括りたいと思います。
——前半終盤の多くのCKを得点につなげられなかった
セットプレーっていうのは本当にポイントで、そんなに相手が身長高くないし、今日のうちの選手たちが身長高かったから間違いなくチャンスになると思って練習も結構やってきて。それで良い形で何本も取りに行こうって言ってて実際取れて、そこで1本攻め切れなかったっていうのが自分たちのまだまだ勝ち切れないところ。CK取ろうっていうところまではできてたから、チャンスもあったと思うんだけど、練習では良い形を作れてたので。あともしかしたらちょっとグラウンドのピッチ状態も悪くてキックの質っていうので、若干速いボールを蹴れなかったっていうのもあるかもしれないけど。もう1つは工夫だよね。工夫がもう1個あればもう少し良い準備できたかなっていうところかな。ただ明らかに相手より高さが有利だってわかってたから、あんまり小細工しないでシンプルにやるっていうのがね。その辺はしっかり工夫も練習からできるようにやっていきたいと思います。
——次節まで2週間空くがどのように準備していくか
ちょっとずつだけど良くなってきてるから、あとは本当に最後結果を出したいっていう思いでいっぱいで、選手たちもそう思ってると思うし、僕らもベンチからの伝え方が悪かったりとかもあるし、そういうところもしっかり良い準備して、一つになって勝てるように頑張りたいと思います。
——最終節に向けて
僕が就任して1試合1試合成長したいっていうのが1つの思いであるので、最後はやっぱり前期1番良い慶應を皆さんに見せられるように、そのために良い準備をして、みんながチームのために戦いたいと思います。
松木駿之介(総4・青森山田)主将
前半は僕たちがゲームプラン通りにしっかり守備をセットして相手が焦れているところをカウンターで狙って、セットプレーもたくさん取れていた中でやりたいことができていたゲームだったなと思います。その中で後半本当に良いタイミングで得点が取れた後に、チームの意識が前から行くのか後ろからしっかり守ってカウンターを狙うのかというところの統一がなかなか図れてなかったので、そういうところが課題かなと思います。
——統一できない時に声掛けなどはあったか
僕と鴻巣で声を掛けてそこははっきりしていたんですけど、時間が経つにつれて段々前の選手がたぶん前の方に行きたがっていた人もいたのかなというのがあって、そこのチーム全体を統一するというところは僕とディフェンスリーダーの鴻巣の二人でやっていかないといけないところだと思います。
——拓大相手にどのような準備をしてきたか
クロスを上げさせないとかシュートを打たせないとかそういう最近の課題を継続しつつ、相手が3-4-3でこれまでの相手とは違って前線で(プレスを)かけてもシステム上はまらないということが分かっていたので、そこは1週間の練習を通して前からかけるのは難しそうだという話をして、しっかり引いてじっくり堪えて相手が焦れてきたところをカウンターで狙っていくというサッカーを仕上げようとしていました。
——連勝がかかっていた中で同点とされてしまった
本当にチームとしてはやりたいことがやれていた中で、僕が途中ちょっと悪質なタックルというか、そこでチームとしての流れが、空気が重くなってしまったというか、そこは本当に僕自身反省していますし、結局それで僕が思い切りプレーできなくなって、多分ベンチもそれを感じて選手交代をしたと思いますし、結局左サイドからクロスを上げられて失点しているので、自分自身の責任だと強く感じています。
——チャンスを作りながらも追加点が取れなかった要因はどこにあるか
今日なんかはカウンターのシーンが狙い通り多く作れていた中で、体力の問題なのか技術の問題なのか、ラストパスの精度とかその辺のところが落ちてしまうので、ゴール前に人数をかけて走るというところまではできるようになってきているので、最後のラストパスであったりシュートであったり崩しの部分であったりをこだわっていきたいと思います。
——攻撃面で手応えを感じているところは
今日なんかは完全に自分達がやりたいことというよりは相手をしっかり分析した上で相手に合わせてカウンターを狙おうと取り組んできた中ではやりたいような攻撃はできていたと思いますし、セットプレーも1つ大きなチャンスだと捉えていたので、セットプレーも前半から取りに行こうと話していた中で何本も取れていたので、手応えはありましたけどやっぱり最後のところですね。
——次節に向けて
1週間空いて準備期間があるので、日体大は今上位にいますし、ここを1つ食ってなんとか後期に希望をつなげられるように絶対に勝ち点3を取らないといけないゲームだと捉えているので、チーム全員で本当にそこを目指して取り組んでいきたいと思います。
増田皓夫(商4・桐蔭学園)
後半始まって5分くらいで点が入ったと思うんですけど、そこから引いてしまって。時間帯によって自分たちが前から行くのか、それとも相手のミスを待つのかっていうところでベンチとあまりうまく連携が取れなくて、そこは課題だったかなと思います。
——得点シーンではアシストを記録
ピーダー(ピーダーセン世穏=経3・FCトリプレッタユース)のところに当てて自分が出ていくっていうのを今日の前半だけじゃなくてずっと狙ってたんですけど、なかなかピーダーセンが出してくれなくて。やっと後半のタイミングで出てきたので。相手のセンターバックの間を割っていくという動きは(山田)盛央の動きとしてすごく良いところがあるので、あそこを自分が狙って良いパスを出せば今後何点も取れるかなって思ってます。
——後半追いつかれた原因は
押し込まれるっていうのはうちの攻撃にも問題があると思ってて、サイドで起点を作るのかそれともボランチとセンターバックをうまく経由して作るのかっていうところがチームとしてなかなかできていなくて、皆が皆が前に行っちゃうというのが。うちがスピードを上げれば向こうもスピードを上げてくるし、うちが緩めれば相手も緩めてくるので、そこの落ち着く時間帯が出てくるとすごく良いのかなって思います。
——ゲーム全体のテンポを上げすぎたのが原因か
そうですね。だからそれをもう少し選手全体が理解してるのか、チーム全体として、もちろんスタッフも含めて理解してるのかというところを、再来週突き詰めて早慶戦に向かいたいと思います。
——フォーメーションの変更があったように思えたが
フォーメーションはなかなか今回うまく行かなくて、5-4-1にするのか、4-5-1にするのかっていうのが、中の選手とベンチワークでうまくいかなくて混乱してはいたんですけど、でも中でプレーしてるのは選手なので、そこをもっと突き詰めて、もちろん今回の試合で混乱してたところもあるんですけど、自分たちの時間をあのチームに対して作れないのは問題だと思うので、スピードアップするところだったり、相手の動きだったりオーラだったりを見てスピードを下げてもいい時間帯だったりっていうのを作らないと。去年とか一昨年みたいな苦しいシーズンは自分たちの時間が全く取れなかったところがあると思うので、そこをもっと突き詰めていく。そのために動かないと、僕はもう4年生なので自分から動かないとと思っています。今ちょうどワールドカップがあって、そういう試合を皆で見るとか、守備のところだったら昨日のアイスランド対アルゼンチンの試合だったり、学ぶところは絶対あると思うのでそういった試合をみんなで見ていって共有できればいいなと思います。
——次節に向けて一言
中大とは勝点16離れてますけど、2位はまだ狙えると思うので諦めないで、その1節にしたいと思います。
山田盛央(総3・藤枝東)
前半結構押し込まれた展開だったんですけど、うまくチーム全体で守り切ることができて、後半立ち上がりに自分が1点取ることができて、流れが1回こっちに傾いたかなと思ったんですけど、残り30分もあるなかで自分たちが引き過ぎてしまって、また相手にペースをつかまれて守り切れず失点してしまったという、もったいない試合だったかなと思います。
——自分たちのやりたかったサッカーはできていたのか
点取った後にそこまで守備的にはなりたくなかったですね、個人的には。2点目3点目取りに行きたかったですし、守るだけでずっと相手にボールを持たれるのはキツいから、自分たちでボールを持つ時間をもっと増やさなきゃいけないと思います。
——得点シーンを振り返って
拓殖大相手で、(ボールを)奪った後の逆サイドの裏がウィークポイントだと確認していたし、練習でもずっとそれを狙っていたので、その形で点を取れたのは嬉しかったですし、チームとして取った点だったと思います。
——2戦連続得点でチーム内得点王と、得点によく絡んでいるが
そうですね。点の匂いがするところに走っていくのが自分のプレースタイルですし、貪欲にゴールを狙うのが自分の特長であるので、どんなに調子が悪くてもそこだけは出していきたいです。
——次節に向けて
最終節ですし、早慶戦に向けてもチームに弾みを付けるという意味では大事な試合だと思うので、絶対に勝ち点3を取れるように頑張ります。