【野球】先発・渡辺和が攻略され敗戦…東大に勝ち点献上の危機/東京六大学野球秋季リーグ戦 東大1回戦 @明治神宮野球場

野球戦評

2025年10月4日(土) 東京六大学野球秋季リーグ戦 東大1回戦 @明治神宮野球場

今季初の勝ち点獲得に向け、良いスタートを切りたい東大1回戦。初回に常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)の適時打で先制するも、先発・渡辺和大(商3・高松商業)が4回に一挙5点を奪われ、逆転を許す。その後はチャンスを作りながらも、4点差を追い越すような勢いは見せられず3対6で敗れた。これで法大4回戦から4連敗。翌日の東大2回戦を落とせば4季連続のV逸が確定するため、極めて痛い敗戦となった。

 123456789
慶大1000010013
東大00050001X6

慶大バッテリー:●渡辺和、坂中、小川琳、田上ー吉開、加藤

東大バッテリー:○松本慎、佐伯、江口、渡辺ー明石

慶大本塁打:渡辺憩2号ソロ(9回)

東大本塁打なし

◆慶大野手成績

位置選手1回2回3回4回5回6回7回8回9回
[8]今津慶介(総3・旭川東)中安中安空三振遊ゴロ二ゴロ
1田上遼平(商3・慶應湘南藤沢)
[3]吉野太陽(法3・慶應)投犠打三ゴロ
H3渡辺憩(商2・慶應)四球右飛左本①
[9]中塚遥翔(環2・智辯和歌山)一ゴロ一邪飛左飛四球二ゴロ
[7]常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)三安①空三振空三振死球遊飛
[5]八木陽(法2・慶應)投ゴロ空三振四球
H真田壮之(経4・慶應)遊飛
5今泉将(商4・慶應)二ゴロ
[6]林純司(環2・報徳学園)三ゴロ振逃右2右飛
[4]竹田一遥(環1・聖光学院)投ゴロ中安四球左飛
[2]吉開鉄朗(商3・慶應)三ゴロ左飛四球①
H8村岡龍(商3・慶應)一失
[1]渡辺和大(商3・高松商業)三ゴロ
H森村輝(総4・小山台)左飛
1坂中大貴(商4・高松商業)
H小山春(政4・鎌倉学園)一邪飛
1小川琳太郎(経4・小松)
H丸田湊斗(法2・慶應)遊飛
2加藤右悟(環1・慶應)

◆慶大投手成績

 選手投球回打者投球数被安打被本塁打与四死球三振失点自責点
先発渡辺和大(商3・高松商業)41871402355
2坂中大貴(商4・高松商業)1414100200
3小川琳太郎(経4・小松)2728100400
4田上遼平(商3・慶應湘南藤沢)1516201011

開幕カードの法大戦では4試合で26得点と好調ぶりを見せた慶大打線だったが、明大とのカードでは不振に陥り、計18回で僅か1得点。また、投手陣は強力明大打線相手に好投する場面もあったが、要所で手痛い一発を浴び、2連敗で勝ち点を落とした。現時点で慶大の勝ち点は0。自力優勝はなくなったが、まだ優勝の可能性は残されている状況で迎えた東大戦。今春リーグ最多の15本塁打を放った打線が爆発力を発揮し、投手陣が粘りを見せることで、今季初の勝ち点獲得を目指す。

東大はここまでの2カードいずれも1回戦で先発した右のサブマリン・渡辺向輝(農4・海城)の先発が予想される中、対する慶大はここまでと大きく変わるオーダーを採用し、アンダースロー対策を敢行。渡辺から今春1回戦で本塁打を放った今津慶介(総3・旭川東)を1番、昨秋に本塁打を放つなど通算打率.667(6―4)でOPSは2.111と好相性の吉野太陽(法3・慶應)を2番、今津と同様に今春1回戦で本塁打を放った中塚遥翔(環2・智辯和歌山)を3番に起用するなど、5人の左打者を並べた。しかし、蓋を開けてみれば東大は松本慎之介(理Ⅱ2・國學院久我山)が今季初の先発登板。今季ここまで3試合に救援登板し、計9回1/3を被安打5、2失点(自責1)、防御率0.96と好調の軟投派左腕を送り込んだ。

甲子園出場経験もある今季初先発・松本慎を攻略できるかがポイント

パラパラと小雨が落ちる1回表、先頭の今津がフルカウントから中前に運び、安打で出塁。続く吉野の犠打、中塚の進塁打で2死三塁の好機を作り、打席にはここまで打率.391と好調の常松が入る。1ストライクからの2球目を打ち損じ、打球は三遊間へのボテボテのゴロも、一塁に頭から滑り込んで間一髪でセーフ。適時内野安打で1点を先制する。

先制となる適時内野安打を放った常松

慶大の先発は、法大3回戦以降徐々に本来の投球を取り戻しつつある渡辺和。初回は自らの好守などで三者凡退に抑え、落ち着いた立ち上がりを見せる。一方の打線は、3回まで今津の2安打を除いて外野に打球を飛ばすことが出来ず、二段モーションと多彩な変化球を駆使した松本慎に凡打の山を築かれる。

3回裏、渡辺和は7番・明石健(農3・渋谷幕張)に初安打を浴びると、1死二塁のピンチを招く。東大の名応援歌『不死鳥の如く』が響き渡り、重圧のかかる場面だったが、先日プロ志望届を提出した淡青が誇る韋駄天・酒井捷(経4・仙台二)を抜群の直球で見逃し三振に打ち取り2死。続く春季リーグ2本塁打の強打者・秋元諒(文Ⅰ2・市川)にはカウント1ー1から捉えられ、打球は中前に抜けるかと思われたが、二塁手・竹田一遥(環1・聖光学院)が球際の強さを活かした好守で一塁をアウトにし、無失点で切り抜ける。

好守でピンチを救った竹田一

4回表は竹田一の安打などで作った追加点のチャンスを逃し、1対0で迎えた裏の守り。連打と四球で無死満塁の大ピンチを背負う。渡辺和は5番・荒井慶斗(文Ⅲ2・宇都宮)を膝下へのスライダーで空振り三振に仕留めるも、次打者・青貝尚柾(教4・攻玉社)に死球を与え、押し出しで失点。1対1と追い付かれる。なんとか同点で留めたいところだったが、7番・明石に右翼手の頭を越える走者一掃の適時二塁打を放たれ、1対4。勝ち越しを許すと、打者走者・明石には送球間に三塁まで到達され、なおも1死三塁とピンチが続く。続く松本慎は内野ゴロに打ち取るも、明石が生還してこの回5点目。ビッグイニングを作られ、大きなリードを許す。

今春の1回戦で14三振を奪い、完封を記録するなど東大戦を得意としていた渡辺和だったが、この日は4回を投げて被安打4、5失点(自責5)でマウンドを降りた。

4回に1死満塁から痛恨5失点を喫し無念の降板となった渡辺和

5回裏、渡辺和に代わり、坂中大貴(商4・高松商業)が登板。高松商業高校出身の2投手によるリレーで東大打線の勢いを止めにかかる。坂中は先頭に二塁打を許すも、二者連続三振を奪うなど無失点に抑える好救援で打線の反撃を待つ。

坂中は走者を背負うも二者連続三振に斬るなど追加点を許さず

グラウンド整備を終え、1対5と4点差を追う6回表の慶大の攻撃。1死から5番・八木陽(法2・慶應)がストレートの四球を選ぶと、東大の大久保裕監督は投手交代を決断。好投の松本慎に代え、佐伯豪栄(工3・渋谷幕張)をマウンドに送る。打ちあぐねていた松本慎が降板し、水を得た魚のように活気を取り戻した慶大打線は、林純司(環2・報徳学園)の二塁打、竹田一の四球で1死満塁とチャンスを拡げ、吉開鉄朗(商3・慶應)の押し出し四球で1点を返し、2対5とする。ここで東大は投手を江口直希(工3・海城)に交代。なおも一発逆転の場面で、慶大は坂中に代打・小山春(政4・鎌倉学園)を起用するが、一邪飛に倒れると、続く今津も遊ゴロで三者残塁に終わり、同点の絶好機を逃す。

押し出し四球を選んだ吉開

裏の守り、慶大は小松が生んだ鉄腕・小川琳太郎(経4・小松)をマウンドに送る。小川琳は2つの三振を奪うなど安定した投球で、相手に傾きかけた流れを取り戻す。

曇天に『若き血』が鳴り響いた7回表、続投した江口に対し、慶大打線は連続四死球で1死一、二塁と攻める。しかし、代打・真田壮之(経4・慶應)、林純が打ち取られて無得点。前の回に続き、この回も複数の走者を残塁させてしまう。

回を跨いだ小川琳は7回裏、酒井の安打と盗塁で1死二塁と追加点の危機を招く。しかし、この試合が今季6登板目となるタフネス右腕はピンチに動じず、無失点で切り抜ける。

この日リリーバー唯一の回跨ぎも零封した小川琳

8回表、東大は江口に代えて渡辺向を起用。ブルペン待機となっていたプロ注目のエースが満を持してマウンドに上がる。慶大は先頭の竹田一が左中間に大飛球を放つが、惜しくも左飛。その後は敵失などで走者を出すが、無得点に終わる。これ以上の点は与えられない8回裏、4番手・田上遼平(商3・慶應湘南藤沢)がマウンドに上がるも、2死二、三塁と得点圏に走者を背負う。ここで、第2打席に値千金の勝ち越し打を放った明石を迎えると、フルカウントからこの日3安打目となる左前への安打を放たれ、三走が生還。あまりにも重い1点を失った。

4番手・田上が粘り切れず、追加点を献上

このままでは終われない9回の攻め、先頭は途中出場の渡辺憩(商2・慶應)。カウント1ストライクから完璧に捉えると、打球は左翼ポール際に飛び込む本塁打となり、1点を返す。しかし、大学日本代表候補にも選出された渡辺向の繊細な投球に翻弄(ほんろう)され、後続が凡退して試合終了。3対6で敗れた。

渡辺憩の2号ソロで反撃も空砲

初回に幸先良く先制しながらも、2回以降は松本慎の老練な投球に苦戦を強いられた慶大打線。そんな中、先発の渡辺和が4回に大量失点を喫し、試合の主導権を握られる。試合後半に四死球を絡めて好機を作りながらも、なかなか1本を出せず、投打ともに奮わないままゲームセットを迎えてしまった。

野手陣は法大戦での勢いを完全に失い、投手陣は被本塁打こそなかったものの3本の長打を浴びるなど、今カードも厳しい試合展開が続いている慶大。2回戦も敗れれば東大に今季初の勝ち点を献上し、第4週終了時点で唯一勝ち点0のチームとなってしまう。4季連続のV逸も現実味を帯びてきたが、義塾の誇りを背負い、今季初の勝ち点獲得に向けて顔を上げたい。

(記事:柄澤晃希、写真:河合亜采子、林佑真、加藤由衣)

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