【競走】長距離ブロック、再出発の一年〜2025年の軌跡〜 箱根駅伝予選会直前特集①

競走

“歴代最強”の陣容で臨んだ昨年の予選会。そこで突き付けられた、大きな壁。総合29位で本戦出場を逃した慶大にとって、その悔しさが再出発の原点となった。強い4年生たちの卒業、部員数の減少、合宿の取りやめ――様々な困難が襲った2025年シーズン。だが、長距離ブロックのメンバーはこれらの逆境を乗り越え、今日まで走り続けて来た。

様々な困難が続いた2025年

チームは新たな核を必要としていた

29位に終わった昨年の予選会

今年のチームは“再構築の年”だった。安倍立矩、田島公太郎、木村有希(いずれも令和7年卒)という実力者3人がチームを支えた昨季。だが彼らの卒業と同時に、ブロックは新たな柱を必要としていた。

サポートスタッフの一人は次のように語る。「昨年は安倍さん、田島さん、木村さんの3人が中心でしたが、今年はそれに代わって安田陸人(商4・開成)、東叶夢(環4・出水中央)、鈴木太陽(環4・宇都宮)ら4年生がエースとしてチームを支えてくれています。」

第108代長距離ブロック長には東が就任。出水中央高校時代に、主将として母校を初めて全国高校駅伝へと導いたリーダーシップをかわれての抜擢だった。この東とヘッドコーチの保科光作氏を中心として、慶大は再スタートを切った。

駅伝主将の東叶夢(環4・出水中央)

生活から競技へ、“基本”の再徹底

写真は朝練習の様子

まず着手したのは、生活リズムの立て直し。「睡眠時間の確保など、基本的な部分が曖昧になっていた」と保科HC。学生主体の運営の良さを残しながらも、門限を設けるなど一定のルールを明文化した。

練習内容にも変化を加えた。朝練習では、これまで日吉トラックをランニングコースにしていたが、今年はそれに加え起伏のあるロードを新たに導入。アップダウンを走ることで脚をつくり、長い距離で粘る力を養った。この生活面と競技面での学生たちの自主性の尊重と管理体制とのバランスをとった変革が、次第にチームの結果へと結びついてゆく。

再起の冬から、結実の春へ

関東インカレ1500m3位入賞の鈴木太陽(環4・宇都宮)

成果は、春の大会で早くも形となって表れた。2月の丸亀ハーフマラソンでは東が自己ベストをマーク。5月の関東インカレでは、鈴木太陽(環4・宇都宮)が1500mで3位入賞。安田陸人(商4・開成)が3000m障害で入賞を果たし、関口功太郎(経4・宇都宮)もハーフマラソンで自己ベストを更新した。

同大会3000m障害5位入賞の安田陸人(商4・開成)

「去年の予選会直後は正直チームとしていい状態ではありませんでしたが、上級生を中心に徐々に立て直してきました」サポートスタッフの一人は当時を振り返る。“やってきたことは間違っていなかった”――試合での成功体験の積み重ねが、選手たちの日々の取り組みへの自信につながっていった。

“異例”を力にかえた夏

紋別合宿(8月)

むかえた夏。長距離ブロックは例年と異なるスケジュールを強いられた。費用問題や故障者を出すリスクをかんがみ、例年9月中旬に実施していた3次合宿を取りやめ、代わりに日吉で2週間にわたる強化練習を行った。

「昨年は予選会が非常に暑い条件下で行われた。涼しい場所に逃げるよりも、蒸し暑い環境で慣らす方がいいと判断した」と保科HC。移動による負担を避けつつ、暑さへの順応と疲労回復を両立する狙いがあった。限られた環境を前向きに生かす発想で、チームはこの夏を乗り越えていく。

発想の転換で乗り越えた夏

少人数だからこそ

写真はポイント練習前の集合

今年のチームは、例年に比べて部員数が少ない。少人数だからこそ、個々への目配りにより注力することができた。「主力がひとり欠けるだけで順位が2つ、3つ変わる。だからこそ、選手の状態を細かく見ることが大切」と保科HC。練習の消化具合や疲労度、メンタル面まで把握し、選手一人ひとりに合わせた調整を行ってきた。

チームを率いる保科光作HC

東主将も「怪我をしないこと、怪我人を出さないことが最も大事」と強調する。予選会まで1カ月を切った直前期。チームの雰囲気は引き締まり、全員がエントリー14枠を巡って競い合った。「当落線上にいるメンバーも、全員が“絶対にメンバーに入りたい”という強い気持ちで練習している。お互いに刺激し合えている」と東。少人数ならではの緊張感がチームに広がっていた。

試行の先に見えた手応え

本番を想定した記録会には多くのメンバーが出走

10月、予選会2週間前の記録会には、本番の実戦練習として10000mのレースに多くの主力が出走。「疲労が残る中でも予想以上の走りをした選手もいた。あとは調整次第で十分に上がってくる。このチームはハマった時に強い。ピーキングをどう合わせるかが鍵になる」と、東主将は前を向いた。

幾多の困難が立ちはだかったこの一年。それでも慶大チームは前を向き、一人一人が今できることに全てを注いできた。本番に向け、チームは静かに仕上げ段階へと入る。

(記事:竹腰環)

最後までお読みいただきありがとうございました。競走部の今を、これからもケイスポが追いかけていきます。明日以降も続く特集を、ぜひお楽しみに!

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