いよいよ東京六大学野球秋季リーグ戦が9月12日に開幕する。“強い慶應”を取り戻すべく挑んだ春季リーグ戦では、5季ぶり41度目の優勝を果たした。その後の全日本大学野球選手権大会でも、エース・渡辺和大(商4・高松商業)をはじめとする投手陣が粘り強く守り抜き、強力打線が得点を重ねて決勝まで駒を進めた。決勝では関西大の3枚看板に阻まれ、惜しくも準優勝。あと一歩届かなかった日本一への悔しさを胸に、チームは再び戦いの舞台へ挑む。新たな「秋の慶應」を示すべく、春秋連覇、そして今度こそ日本一へ。今回ケイスポでは秋季リーグ戦前企画として、選手たちの意気込みや4年生のラストシーズンにかける想いに迫る。
第10弾は、沖﨑真周(経4・幕張総合)主務、山口瑛士(商4・県立郡山)チーフコーチによる対談!(このインタビューは9月4日に対面で実施しました。)
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――山口瑛さんは昨季まで選手として活躍されていましたが、今季から学生チーフコーチに就任されました。その就任経緯と主な仕事内容について教えていただけますか
<就任経緯>
山口瑛:ありがとうございます。慶應は主将も副将も主務もチーフコーチも幹部全部選手たちで決めるんですけど、学年ミーティングの中でずっとやってきて。昨秋5位に終わって悔しくて、新チームになってどうやったら日本一になれるかなっていうので、実際に選手、学生コーチ抜きにして、一番日本一になれると思うチーフコーチの名前を出そうっていうことで、全員で一人ずつ言っていったら僕の名前が一番多くてその時に「俺か」ってなりました。昨秋の早慶戦で背番号貰っていたんですけど、ベンチに入れなくてめっちゃ悔しくて、僕は選手やる気満々だったので絶対春はベンチに入らなあかんな、と。今年の春こそはベンチに入ろうと思って野球してたら「お前がチーフコーチになったら日本一になれると思う」って言われて。そこで初めて考え始めて、色んな判断基準があると思うんですけど、僕は「自分が一番何が幸せかな」って考えたときに、僕は慶應に入った時に「日本一になりたい」、「神宮の打席に立ちたい」っていうのをずっと目標にしていました。日本一になるために、この大好きな同期のみんなが「俺がやった方がいい」って言うんなら、それは「俺の”天職”なのかもしれへんな」と思ったり。そこの判断基準でやった時に、俺は「もうこんなチャンスないし、慶應生を200人以上をまとめる機会なんてないな」って思ったんで、思い切って選んだ選択やったんですけど、今のところは「最高の選択をしたな」ってずっと思っています。こんな楽しい仕事ないですし、こんなに監督とお話できて、選手起用とかも僕に聞いてくれたりするのでこんな幸せな仕事はないな、と思っていますけど、あの時「ナイス判断したな」ってつくづく思います。で、僕がチーフコーチになる時に「じゃあお前ら優勝したら俺を胴上げしてな」って言ってなったんですけど、同期たちが有言実行で胴上げもしてもらえましたね。
<チーフコーチの仕事>
チーフコーチの一番の大きな仕事は、リーグ戦のメンバーを決める時に、僕自身に裁量権があるっていうところです。監督が僕の意見をしっかり聞いてくれるので、「このメンバー入れた方がいいんじゃないですか」とかを言うために、毎日毎日選手をしっかり見ないといけないというのがまず大前提です。それに付随して練習が円滑に進むために、まず前日に練習メニューを展開したり、「次これやりますよ」って指示はずっと僕自身が出して、それに選手が動いてくれるという流れをやっています。 あとは神宮でノック打ったり、バッティングピッチャーしたり、マシン入れたり、そういう選手が練習するために必要なサポートは全部やるというのが僕自身の仕事で、それを他の学生コーチに指示を出したり、監督にこういう練習した方がいいんじゃないですかとか。一方選手でこういう練習した方がいいと思うよというのを、監督、僕、選手っていう、このコミュニケーションの間をつなぐ役割も、メインの仕事かなと思います。
(主務の仕事内容は【野球】「勝つための環境を整える」 日本一に向け“チーム今津”を支える主務!/新幹部インタビュー第4弾~沖﨑真周主務~ | KEIO SPORTS PRESS にあるので割愛)
――「主務」「チーフコーチ」として半年以上過ごした中で、一番難しかったこと
山口瑛:監督が思っていることと選手が思っていることが違うことがあるんですよね。例えば選手が「こういうバッティングをしたい」というのと、監督が「こういうバッティングをするべき」という意見が違ったりしたら、そこをすり合わせる必要があります。「選手はこういう意見を持ってるんですけど、監督はどうなんですか」っていうのをずっと話すんですけど、監督も監督で自分の野球理論を持っているので。いい意味でそこの話し合いが一番大事なんですけど、難しいですね。監督が選手に直接言ってもそれが通じなかったりするんですけど、僕が噛み砕いて噛み砕いて伝えると、それが選手に伝わったりするので。そこをどれだけやれるかっていうのと、選手が「こういうことをやりたい」って言った時に、それは本当に勝つためにやってるのかとかもそうですし、一方それは正しいことやなって僕自身が思ったら、監督に絶対落とし込みたいなと思うので。それを監督に伝えて説得するんですけど、監督も頑固なので、それが難しいとこですかね。
沖﨑:春のキャンプに1ヶ月半行ったんですけど、各地たくさん(松山→中津→鹿児島→関西→愛知)回ったり、人も最初は全員で行ってどんどん減らしていったりとかで。飛行機で移動もあるし、フェリーも使ったし、バスも乗ったし、それがすごい大変でしたね。 やっぱり全部知ってるのは僕ですし、全部準備をするのも僕なので。行くまでももちろん大変でしたけど、行った後も僕も知らない土地なので、わからないことがいっぱいある中で、全部をスムーズに行わないと野球やる時間も減っちゃうので。何のストレスもないような遠征にするために、監督とかコーチたちよりも上に立って「こっちから行かないとダメですよ」とか、「こういうスケジュールにしなきゃダメですよ」とか、全てを頭の中に 1ヶ月半をイメージしながら準備したのはすごい。
山口瑛:これほんまできひんっすよね。予算もありますし、大変やと思う。それをノーミスでやるのはすごい。
――逆に一番やりがいを感じたこと
山口瑛:細かく言ったら、個別に打撃指導してる選手だったり、一球一球思い込めて投げてた選手が打ってくれるのがやっぱり一番やりがい感じる瞬間やなと思います。 もう1個は、例えば練習してたプレーがスムーズに決まった時とか、外野から内野にカットつないでホームで刺したりとか。そういう連携プレーがうまくいったら、僕自身がやってたことは正しかったんだなというのも思います。だけど一番は勝った瞬間ですね。 優勝した瞬間は全てやってたことはどんだけしんどくても良かったなと思える瞬間なんで。 一方負けたら何してんねんって思うので、勝つか負けるかの勝負の中で勝った瞬間が一番。
沖﨑:僕も勝った瞬間。 あとは監督がちょっと褒めてくれたりとか、認めてくれたなっていう時は確かに嬉しいです。監督は慶應卒業後に社会人野球で選手をやった後に、マネージャー、その後コーチ、監督とやっているんですよ。社会人マネージャーってめちゃくちゃ大変で、僕に厳しいし、無茶ぶりもめちゃくちゃしてくるので(笑)。それに日々必死に応えながら、認められたというか、そういう言葉がたまにあるんですけど、その時は良かったっていう思いになります。
――印象に残っている言葉はありますか
沖﨑:関西遠征行った時に三田会による歓迎会みたいなのがあって、監督が一人一人部員の紹介をしてくれたんですけど、監督は今7年目で、今まで6年やられてきたんですけど、その6年間で一番いいマネージャーだって言ってくれて。 その時はお世辞かもしれないですけど、嬉しいなって思いました。あとは監督からシンプルに意見を求めてくる時がある。瑛士だったら野球のこと、プレーのこと。僕だったら個人的なことですけど、スケジュールのことや「これどう思う?」みたいな。 トップダウン方式じゃなくて、ちゃんとこっちの考えも尊重してくれて、僕らに信頼があるからこそ考えを聞いてみたいと思ってくれてるんだろうから、それはすごい嬉しいです。
――夏の北海道キャンプやオープン戦を通して、秋に向けてチームとして取り組んできたこと
山口瑛:打って勝った試合も結構多かったと思うんですけど、いいピッチャーから打ってしっかり点を取るためにどうやってやっていけばいいかっていうので、僕が4年間いた中では一番振り込んだキャンプだなというのは思います。グラウンドを使える時間目一杯までバッティング練習し続けたんで、それが秋のいい結果につながる一つの要因になってくれたらなと思うんですけども、一番は打撃改革というか、打撃の中でこれだけ振ったから大丈夫やって思える自信にもなったらいいと思いますし。バッティングを一番僕は期待してるし、楽しみだなと思います。
沖﨑:あとはピッチャーも春は渡辺(和大、商4・高松商業)が7勝で優勝して。ただ秋は渡辺7勝もできないよっていう前提でピッチャー陣も奮起して、渡辺ばかり注目されてみんな悔しかっただろうし、その思いで必死にやってるピッチャー陣にも期待したいし、彼らも成長してるんで。秋は渡辺ももちろんですけど、新戦力も加わって渡辺以外のピッチャーも活躍すると思います。
――ハマスタの記念試合に六大学選抜メンバーとして出場
山口瑛:めちゃくちゃいい経験でした。僕東大ものを身に付けたいなって思って、東大のヘルメットを被ってたんですよ(笑)。っていうのは置いておいて、実際にその大学で活躍している選手を間近で見る機会はなかったですし、話していて「ここまでしっかり野球を考えてるからうまくなんねんな」というのを改めて感じました。 打席に入るときの考え方であったり、バッティング練習をどういう意識でやっているかであったり、守備はどうやって意識しているのかっていうのを、実際外側から見てわからないことを聞けるのが、そういうオールスターの醍醐味だったと思いましたし、それを慶應に落とし込むのが僕の仕事だなと思ったので。積極的に話したつもりではあったんで、一つ一つの動作の意識の高さは思いましたね。
沖﨑:やっぱり六大学のレベルがすごいなというのは、もう身をもって感じましたね。 相手もプロ注目のピッチャーも何人も投げてきて強いリーグですけど、ちょっとモノが違うっていうか。 明治の榊原(七斗、情コミュ4・報徳学園)、岡田(啓吾、商4・前橋育英)とか法政の境(亮陽、営2・大阪桐蔭)、井上(和輝、法2・駿台甲府)とか、プロ野球選手見てるような感じですけど(笑)。 でも僕らは勝たなければいけないっていうので、標準が合うというか、基準がやっぱりここだよなという、身の引き締まる思いにもなりました。
――今津慶介主将(総4・旭川東)を中心とした今年の4年生の特徴
沖﨑:めちゃくちゃいい代だと思いますね。 何が一番いいかっていうと、 4年生になるとリーグ戦に絡むようなメンバーと、なかなか出れないベンチメンバーとして分かれちゃって。 全員が同じ方向を向いて、高いレベルの野球を目指して練習することって難しいんですよ。 だから今年の4年生は本当に頑張ってるだけじゃなくて、実力も本当にあって拮抗するぐらい野球で飯食っていけるんじゃないか、社会人でやって飯食っていけるんじゃないかっていう選手がゴロゴロいて。みんな野球に今も真剣に打ち込んでいるのがすごいいいチームだなと思います。後輩からも慕われてますし、チームのこのいい雰囲気につながっていると思います。
山口瑛:僕は4年生全体として、野球を死ぬ気で頑張る、野球バカになることを笑わないというか。むしろそれが正しいというか、それが野球をやる選手としてのあるべき姿だっていうところをみんなが体現してくれてるんじゃないかなと。それは僕自身も意識してますし、全員がやるっていうのがめっちゃ大事だと思うので。学生コーチもトレーナーもマネージャーもそれをやってくれているのがすごいなと思いますし、その野球バカになるっていうところは、選手自身が体現してくれてるからこそ、熱くなって緊張しても爆発力が出せるっていう。それは日々の練習からやっていることがうまく出るところもいいと思いますし。今津の良さはそこなんで、推進力というか爆発力というか「俺が一番熱いから俺について来いよ」っていう感じのスタイルのキャプテンなので、”チーム今津”のいいところであり、それをうまくみんながついていってる感じがいいなと思いますね。
――この秋のキーマンとネクストブレイクを教えてください!
<キーマン>
山口瑛:まずバッターのキーマンは一宮(=一宮知樹、経2・八千代松陰)。理由は2年生ながら強烈なバッティングをしてるんですけど、やっぱりまだその若さというか粗さが残る部分があるので。こいつが打ってくれたらっていう場面があると思うんですけど、活躍してくれるべき場面でしっかり活躍してくれるというところを一宮に期待してる部分があるので、一宮って言っておきます。ピッチャーは沖村要(商4・慶應)にします。理由はこの夏から一番伸びてきてるなという選手だと思いますし、実際沖村が投げれないとイニングをゼロで増やしていけないなって実際に思うので、沖村のラストシーズンにはめちゃくちゃ注目してほしいなと思います。
沖﨑:バッターのキーマンはやっぱり今津ですかね。オープン戦でも今津が打てないと負けるんですよ。彼が打った試合は本当に勝ってることが多くて本当に今津のチームだなって思います。ピッチャーは渡辺はもちろんなんですけど、広池(=広池浩成、経4・慶應)。渡辺の次に先発するのは誰なのかという中で、沖村がいたり、広池がいたり、水野(=水野敬太、経3・札幌南)がいたりしますけど。広池は誰よりも野球に一番向き合ってる中で、春はちょっと本人にとっては多分不甲斐ない成績だったと思う。悔しい成績だったとも思うし、彼がずっと下級生の時から投げてる神宮のマウンドで、最後のシーズンどういったピッチングをしてくれるのかなっていうのはすごい楽しみです。
<ネクストブレイク>
山口瑛:ネクストブレイクのバッターは寳田裕椰(経4・三重)にします。まだリーグ戦では打席に立ったことなくて、フレッシュリーグではキャプテンを務めていた選手です。4年生になってから副将を務めてるんですけど、一番伸びてる選手かなと思いますし、右バッターで言ったら、それこそ一宮とかに引けを取らないようなバッティングをしているので、どこかで絶対活躍する場面が来ます。ピッチャーは熊ノ郷(=熊ノ郷翔斗、環2・桐蔭学園)。中継ぎとしてやっていってくれると思うんですけど1戦目、2戦目、3戦目と連投する力と、レベルの高いバッター陣をどう抑えるかってところは、絶対次世代のエースになれるので。秋は活躍して、もうプロにもバンバン注目されるような選手になってほしいっていう意味でのネクストブレイクにします。
沖﨑:ネクストブレイクのバッターは藤田(=藤田一波、環1・智辯和歌山)にします。春もちょくちょく出てたし、全日本で彼が最後のバッターだったんですけど、その悔しさは彼が一番感じていると思うので。彼はバッティングがすごくいいので、秋は打つと思います。ピッチャーは小宅(=小宅雅己、環1・慶應)。レベルが違うんですよ。他大がマークしてるのかわからないけど、別にマークされてたとしても打たれないと思う。投げた球はもちろんですけど、ひょうひょうとやる感じとか、全部の動きがスムーズなところとか野球うまいなっていう感じがするね。 全部がスムーズで。 これは甲子園で優勝するわという感じ。
山口瑛:あれと佳門(=鈴木佳門、経2・慶應)がいたらそれは(笑)。
沖﨑:佳門にしとくか。ブレイクしたけど再ブレイク。佳門が投げないと勝てない。
――最後にラストシーズンにかける意気込みをよろしくお願いします!
山口瑛:僕が春が終わってからずっと思ってたのは、本当に後悔したくないので。自分が思ってやらないといけないと思ってたことは全部やってきたつもりですし、言わないといけないことは全部言ってきたつもりなので、準備段階としては今のところいい感じで進んでるなと思います。例えば試合前にこういうことを言った方が選手を鼓舞できるだろうなとか、そういう最高の準備を僕自身もして、選手に声をかけれたらなと思うので。そういう後悔を一つもないようにしていくのが、僕のラストシーズンにかける思いで、選手だけでなく僕自身もやっていくことこそが勝ちにつながるんじゃないかなと信じています。 本当に言葉で言うのは簡単ですけど、後悔がないように毎試合戦いたいなと思います。絶対日本一に取ります。
沖﨑:この年のチームの最後の戦いですし、多分この秋のシーズンの結果が僕たちの代が残した功績にもなると思うんで。春勝ったけど、秋勝たないと今津の代を思い出した時に、秋の結果がやっぱり大事だと思うし、新チーム発足してから日本一だけが僕らの目標だったので。もう日本一しかないというか。日本一を取って終わるしかない。あと僕らに残されたのは日本一を取るだけなので、そこに向けて瑛士と同じように、後悔のないようにできることは本当に細かなことを一つずつ、僕は選手のグラウンドレベルと違って、他の細かい点もたくさん詰められるところがあるので。思い残すことがないように、残りのシーズンも全部今まで以上に全て野球に注ぎ込むようなつもりでいます。
(取材:河合亜采子、記事:加藤由衣)
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