今回ケイスポラグビー班では、8月21日から8月22日かけて、蹴球部の山中湖二次合宿に密着した。シニアチームが菅平に移動し対外試合に臨むなか、山中湖に残ったジュニアチームも、対抗戦のメンバー争いに食い込むべく奮闘している。選手たちは22日、毎年恒例となっているハーキュリーズ(慶大蹴球部OBによる社会人チーム)との練習試合にその思いをぶつけた。
翌日のハーキュリーズ戦に備えて軽いストレングスメニューをこなした後、試合に向けてのメンバーミーティングも行われた。
菅平組と山中湖組に別れた1週間前からキャプテンとして山中湖組を引っ張っているJr.リーダー・石野創太郎(理4・川和)がミーティングを主導し、チーム全員で意見を出し合った。気候条件、グラウンドの状況、トレーニングの成果などを踏まえたゲームプランを全員で決定し、約1か月間行われた合宿の集大成となる試合に向けて意思を統一した。

山中湖合宿の朝は早い。6時から毎朝の体重測定が行われ、続いてリハビリ組のストレッチが行われた。ストレッチには青貫監督も参加。選手とフラットにコミュニケーションを取る指揮官の姿が印象的だった。
その後、朝食を挟んで全体ミーティングが行われた。冒頭、青貫監督と学生コーチから昨日のMVPが発表され、FWからは落合佑太(経3・江戸川学園取手)が、BKからは武居泰獅(法3・桐蔭学園)が選出。さらにスタッフ陣から、主務、4年生のマネージャーがシニアチームに帯同する中、円滑なマネジメントで山中湖組を支えた大門美沙希(商3・日比谷)、筱岡咲英(商3・高岡)もMVPに選ばれた。その後、3人1組に分かれて1ヶ月の合宿期間を振り返り、取り組んだこと、成長した部分について共有した。

全体ミーティング終了後、試合に出場するメンバーのみが食堂に残り、試合前の最終確認として昨日のミーティングで決定した戦術やフォーカスの確認も行われた。
リハビリ組はミーティング終了後、富士山の午後の試合に向けたグラウンド整備を行い、その後ストレングス、そしてランメニューをこなした。一人一人が怪我前より良い状態で復帰するため、細部までこだわってトレーニングに打ち込んだ。

午後、慶大は1ヶ月の集大成を見せるべく、蹴球部OBによって構成される社会人チーム・ハーキュリーズとの一戦に臨んだ。この試合の直前、菅平でAチームが関西学院大学との練習試合に快勝したなか、山中湖組も菅平組に続いてポジティブな形で合宿を締めくくりたい一戦となった。
しかし、立ち上がりの3分、自陣でマイボールラインアウトが乱れると、ルーズボールがハーキュリーズに入ってインゴールを明け渡し、先制を許す。さらに7分、2025年に蹴球部で副将を務めた山本大悟(令8環卒)のキックで自陣深くに押し込まれると、エリアを奪い返せず2トライ目を献上。今年2月に全国クラブラグビーフットボール大会を制した社会人の強豪・ハーキュリーズの圧力を受けて後手に回る。
反撃に転じたい慶大は19分、前日MVPに選ばれた武居のキックで敵陣深くに侵入する。直後、相手ボールのラインアウトが乱れると、素早く反応してボールを奪った玉塚雄大(経2・慶應)がタックルを受けながらインゴールに飛び込み、武居のコンバージョンも決まって点差を7点に縮める。

それでもハーキュリーズの勢いを止めることはできず、前半20分台には2024年度の主将・中山大暉(令7環卒)に得意のモールから2トライを奪われるなど点差を離され、前半を7ー26で終える。
後半も先に得点を奪ったのはハーキュリーズだった。冒頭の43分にトライを許し、逆転には4トライが必要という絶体絶命の状況に追い込まれる。それでも1ヶ月間過酷なトレーニングに打ち込んできた慶大は、培ってきた反骨精神で逆襲を見せる。
再開直後からペースを握った慶大は、奥田侃(商1・茗渓学園)が力強いキャリーを見せると、相見駿太(経3・慶應)の50:22が決まって一気に敵陣に侵入する。前半安定感を欠いたマイボールラインアウトを成功させ、モールからハーキュリーズのペナルティを誘発してじりじりとインゴールに迫ると、最後はハーキュリーズが反則を重ねたとして認定トライとなり、さらにシンビンで数的優位を得ることに成功する。


雨脚が強まる中、数的優位を得た慶大は選手交代でエネルギーを回復しながら主導権を掌握していく。すると66分、右サイドのエッジへの素早いパスワークからスペースのある状態でボールを受けたWTB武居が追跡を振り切りトライ。さらに難しい角度からのコンバージョンを自ら沈め、10点差に迫る。


続いて68分、こちらも前日MVP・落合のオフロードパスを受けた平田シャニョン武郎(総1・目黒学院)が巧みなランで相手ディフェンスを切り裂き一気にインゴール中央へ。コンバージョンをゲームキャプテンの石野が沈めて逆転までに必要なトライはあとひとつとなる。
終盤の10分間は、トライを挙げて決着をつけたいハーキュリーズと、逆転にかける慶大の意地と意地のぶつかり合いとなった。フェーズを重ねて自陣に迫るハーキュリーズに対して、慶大も伝統の〝魂のタックル〟で応戦。猛攻をしのぎきって最後の攻撃に転じる。

すると38分、自陣10mライン付近で相手のキックをキャッチした吉田千洋(理4・徳島県立城東)がランを仕掛け、ディフェンスラインを突破するとさらにギアを上げて加速。圧巻のロングスパートでインゴールを陥れた。最終学年を迎えた吉田千が最後の山中湖合宿を締めくくる鮮やかな逆転トライを挙げ、スコアを33-31として試合をひっくり返した。
ついに逆転に成功した慶大だったが、リードはわずか2点。ペナルティゴール、ドロップゴールによる再逆転の可能性も残し、1つのミスも許されない状況が継続した。それでも慶大は、高い集中力を維持して粘り強いディフェンスを続け、ハーキュリーズを相手陣内に閉じ込める。最後はハーキュリーズがサイドへのパスで突破を試みる中、山中湖組のキャプテンとしてチームを先導した石野がハードタックルを見せ、相手をタッチの外に押し出してノーサイド。
5年以上勝ちがなかったハーキュリーズから勝利を挙げ、出場メンバーだけでなく、ノンメンバーやスタッフも交えて歓喜の環が作られた。
試合のMVPには決勝トライを挙げた吉田千が選ばれた。ハドル内で吉田千は「目標はハーキュリーズ(に勝つこと)じゃなくて日本一。これを糧にして、もっと成長していこう」と、更なるレベルアップに向けて兜の緒を締めた。

夜には山中湖合宿を締めくくるバーベキューが行われた。途中、ゲリラ豪雨が直撃して屋内へ避難する一幕もあったが、きつかったメニューやオフの予定など、苦しくも楽しい濃密な1か月を過ごした仲間同士で思い出を分かち合い、終始和やかな雰囲気でバーベキューを楽しんだ。


23泊24日の合宿を終えた蹴球部。日吉に戻った今も、9月12日の対抗戦開幕に向けて、「ALL IN」し続けている。
(取材/記事:浅井外煕、髙木謙、奈須龍成)


