【競走】“此処ぞ”の場面で魅せた激走!岡山の地で5種目入賞を果たす/天皇賜杯第94回日本学生陸上競技対抗選手権大会

競走

第94回全日本インカレが6月5日から4日間にわたり岡山県で開催された。慶大は、男子1500mで鈴木太陽(環4・宇都宮)が塾記録を大幅に塗り替え6位入賞、女子やり投で倉田紗優加(環3・伊那北)が初優勝、女子800mで仲子綾乃(総4・浜松西)が6位に食い込むなど、トラック/フィールド合わせて5種目で入賞を果たした。収穫とともに課題も見えた大会を終え、チームはシーズン後半戦へと臨んでいく。

繰り広げられた4日間の熱戦

試合結果♢

男子 30位 6.5点

女子 19位 11点

 

♢男子得点者♢

名前

種目

記録(決勝でのタイム)

順位・得点

鈴木太陽(環4・宇都宮)

1500m

3分42秒94(PB塾記録

6位・3点

林明良(政3・攻玉社)-岩舩遙信(環2・新潟明訓)-篠宮健吾(政4・慶應)-藤井清雅(総2・渋谷教育学園幕張)

4×100mR

39秒48

8位・1点

須﨑遥也(商3・丸亀)

走高跳

2m10

4位・2.5点

 

♢女子得点者♢

名前

種目

記録(決勝でのタイム)

順位・得点

仲子綾乃(総4・浜松西)

800m

2分8秒23

6位・3点

倉田紗優加(環3・伊那北)

やり投

57m20

優勝・8点

今年の全カレは異例だ。夏に世界陸上が開催される影響で、例年9月に行われる全日本インカレが2025年は6月開催に。調整期間の短さが各選手に問われる中、大島琉偉(経4・慶應)は先月の関東インカレ後に一人一人が自分にできる最高の準備を積み重ねていけば、必ず結果がついてくる」と語り、チームの結束を呼びかけていた。慶大競走部は8種目での入賞を目指し、岡山の地で全国の強豪と対峙することとなった。

 

〈男子1500m・鈴木太陽(環4・宇都宮)〉

4年目の今季、一番成長を遂げている選手。先月の関東インカレでも、塾記録/3位入賞を果たすなど、チームに新風をもたらしている。今大会でも、持ち味の巧みなポジショニングとラストの切れ味を存分に発揮。予選では序盤から集団の前方インレーンをキープし、3~4番手で終盤まで待機。

無理に1着を取る必要はなかったかもしれませんが、塾記録を狙えるペースだったこと、全国の舞台で視座をあげるという意味も込めて、ラスト30mほどで前に出ました

残り30mでスパートをかけ、組1着で決勝進出を決めた。記録は3分44秒68。自身が関東インカレで樹立した塾記録を3秒近く塗り替える快挙だった。向かえた決勝。レースは、2周目に早大・山口がペースを上げ集団がばらける展開に。鈴木は3位集団で粘り、残り200mでスパート。

全国トップクラスの東海大の選手の背中を捉えた時、心が躍ってしまい、少し早くスパートしてしまいました

一時は表彰台圏内に浮上するも、後続の猛追に屈し6位でフィニッシュ。それでも2位と0.8秒差の大健闘を見せた。試合後にはもう少し貯めていれば表彰台もあったかなと悔しさを口にしつつ、こんなハイレベルな悔しさを感じられるようになった自分に成長を実感していますと充実感を滲ませた。

 

〈男子4×100mリレー〉

 

関東インカレでは7位入賞した慶大。今大会はメンバーを一部入れ替えて臨んだ。林→岩舩の1・2走は変わらず、3走に4年生・篠宮、アンカーには2年生・藤井が新たに名を連ねた。予選では39.18の快走を見せ、塾歴代10傑に入りを果たすも、着順2位で決勝進出は逃すかに思われた。しかし、同組1着の大学が失格となり、慶大は繰り上げで決勝進出を決めた。3走を務めた篠宮は予選をこう振り返った。

「個々のラップタイムは劣っていましたが、バトンパスがうまくいった分トータルタイムも良かったと思います」

 

向かえた決勝。慶大は一番アウトレーンからのスタート。だが、バトンパスのミスが響き、39.48とタイムを伸ばせず8位。それでも全日本インカレ2年連続入賞を果たした。試合後篠宮は「過去に類を見ないハイレベルの予選を勝ち進み、入賞できたことは評価できます」振り返り、次なる大一番に向けてこう意気込んだ。

「日本選手権でもう一度決勝の舞台に進み、今度は先頭争いに加わって勝負します」

 

〈女子800m・仲子綾乃(総4・浜松西)〉

女子中距離のエース・仲子綾乃。ラストイヤーの今季は、4月の学生個人選手権で7位入賞と好スタートを切っていた。最後の全カレ、仲子は並々ならぬ思いで臨んでいた。

「昨年は怪我で出場すらできませんでした。その悔しさを晴らすため、絶対に決勝へ行きたい」

その言葉通り、予選を組3位、準決勝を2位で通過し、決勝進出を果たす。決勝は1周目を61秒で通過するハイペースに。仲子は3〜5番手をキープしながら好機を伺い、ラスト200mのスパート合戦に食らいついた。惜しくも表彰台には2秒届かなかったが、堂々の6位入賞。レース後に口にした言葉は冷静だった。

「“決勝に行く”ことばかりに意識が向いていて、行った先でどう戦うかを考えきれていませんでした。現状の力に対して、妥当な結果だと思います

今後は、今大会で果たせなかった自己記録更新を目指し、シーズン後半戦へ挑む。

 

〈女子やり投・倉田紗優加(環3・伊那北)〉

女子やり投で頂点に立ったのは、4月の関東インカレで自己ベストを更新し2連覇を果たしていた倉田紗優加だった。昨年は準優勝に終わっていたが、「記録を出せば優勝はついてくると思っていた」と語るように、順位以上に大会記録の更新を狙って今大会に臨んだ。倉田は、2投目で57m20をマークしトップに立つ。しかし、3投目以降はフォームの乱れに苦しみ記録を伸ばせない。

「気持ちが先走って身体が突っ込んでいました」

それでも、後続の追い上げを抑えきって逃げ切り、全日本インカレ初優勝を飾った。今季は冬から短距離選手に交じって走り込みを重ね、過去最多の練習量を積んできた。

「とてもキツかったけれど、今は頑張って良かったと思えています」

 

次なる目標は7月の日本選手権。さらにその先には世界陸上も開催される。21歳の瞳はすでに世界を見据える。

 

〈男子走高跳・須﨑遥也(商3・丸亀)〉

怪我からの復活を期す今季、須﨑は着実に調子を上げてきた。4月の六大学陸上では走高跳で優勝、続く学生個人選手権でも5位入賞と好発進を見せた。一方、5月の関東インカレでは入賞を逃す苦い経験も。

「助走にこだわりすぎた結果、本質であるバーのクリアに意識が向きませんでした。今回は“自分らしい踏切”で跳ぶことを心がけました」

本来の武器である力強い踏切の感覚を取り戻すべく準備を重ね、向かえた全日本インカレ。須﨑は2m05、2m10をいずれも1回でクリアし、順調な滑り出しを見せる。勝負をかけた2m15はクリアできなかったものの同種目4位で全日本インカレ初入賞を果たした。試合後須﨑は悔しさと充実感を口にした。

「順位は嬉しいですが、記録には納得していません。ただ、大学入学以降、最も内容の良い試合でした」

順位を狙う試合はこれで一区切り。今後は、自己記録(2m16)の更新、更に2m20超えを目指す。

 

善戦するもあと一歩届かない結果も多く並んだ。男子200mに出場した林は予選で好タイムをマークしたものの、0.1秒差で準決勝敗退。男子800mで準決勝進出を逃した市村瞭太郎(経2・慶應志木)も0.04秒差、男子110mHの岩井も0.03秒差で決勝進出を逃した。

市村(男子800m)

岩井(男子110mH)

3000m障害に出場した関東インカレで5位入賞の副将・安田。中盤まで粘りの走りで8位圏内を死守していたが、ラスト2周で後続にかわされ、競り合いの末9位。0.5秒差で入賞を逃した。

安田(3000mSC)

4日間の全競技日程を終え、慶大競走部は掲げていた「合計8種目での入賞」という目標には惜しくも届かなかったが、トラックで3種目、フィールドで2種目の入賞を果たし、競技の両輪で存在感を示した。

 

鈴木(男子1500m)

慶大競走部には実力者がたくさんいる。ただ、此処ぞの場面で真価を発揮できる者は一握り。その一人であり、特に今季快進撃を見せているのが鈴木太陽だ。

“よーい、ドン”からが本当の勝負。持ちタイムや去年までの結果なんて関係ない

レース後のインタビューで口にしていた言葉だ。ここには、鈴木の4年間の努力に裏打ちされた自信が顔をのぞかせる。実績だけでなく勝負強さを持ち合わせた者のマインドである。今の慶應は、強い選手を必要としている。

選手たちは4月の六大学陸上から6月の全日本インカレにかけて、激動の前半シーズンを過ごしてきた。残りのシーズンは、順位より記録を狙う試合が増える。この2カ月で得た成果と課題は、選手たちの次なる一歩を確かなものにするだろう。8月に早慶戦も控えるこの夏、新たに飛躍を果たすのは誰か?慶大競走部の今後の戦いから目が離せない。

本大会の戦評記事もぜひ併せてご覧ください(【競走】第94回日本インカレ 試合後インタビュー 倉田紗優加/鈴木太陽/篠宮健吾/仲子綾乃/須﨑遥也 | KEIO SPORTS PRESS

 

(取材:竹腰環、山口和紀)

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