【野球】終盤の粘りも及ばず敗戦 義塾の威信をかけて負けられない2回戦に臨む/東京六大学野球秋季リーグ戦 早大1回戦 @明治神宮野球場

野球戦評

2025年11月1日(土) 東京六大学野球秋季リーグ戦 早大1回戦 @明治神宮野球場

東京六大学100周年のフィナーレを飾る華の早慶戦。早慶戦通算203勝目を目指す慶大は3回裏、2死一、二塁のチャンスをつくると、竹田一遥(環1・聖光学院)が左前への適時打を放ち、1点を先制する。しかし4回表、先発の渡辺和大(商3・高松商業)が4番の寺尾拳聖(人3・佐久長聖)に同点本塁打を許し、その後試合はこう着状態に。1対1と同点の8回表、渡辺和が1死満塁と絶体絶命のピンチをつくり、打席にワセダ主将の小澤周平(スポ4・健大高崎)を迎えると、堀井監督は投手交代を決断。主将の外丸東眞(環4・前橋育英)をマウンドに送る。外丸と小澤。両校の主将が誇りを懸け、4年間の想いをぶつけた対戦は小澤に軍配が上がり、中前への適時打で勝ち越しを許す。その後も稲穂軍団の勢いは止まらず、この回4点を失った。慶大打線は8回裏に今津慶介(総3・旭川東)の適時打、9回裏にも渡辺憩(商2・慶應)に適時打が飛び出し、2点差まで詰め寄るが、伊藤樹(スポ4・仙台育英)・田和廉(教育4・早稲田実業)のプロ内定コンビによる投手リレーを前に逆転までは至らず、3対5で敗れた。攻守に良い場面がありながらも、1回戦を落とし、3季連続5位の危機を迎えた慶大。翌日の2回戦では、”チーム外丸”の集大成を見せ、2季ぶりの早慶戦勝利を掴みたい。

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早大0001000405
慶大0010000113

慶大バッテリー:●渡辺和、外丸、水野ー吉開、加藤

早大バッテリー:○伊藤樹、田和ー吉田瑞

慶大本塁打:なし

早大本塁打:寺尾2号ソロ(4回)

◆慶大野手成績

位置選手1回2回3回4回5回6回7回8回9回
[8]丸田湊斗(法2・慶應)中飛空三振遊ゴロ
3渡辺憩(商2・慶應)中2左安①
[5]竹田一遥(環1・聖光学院)遊ゴロ左安①空三振三ゴロ右飛
[3]78今津慶介(総3・旭川東)一ゴロ四球左飛右安①
[9]7常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)右飛空三振空三振三直
[7]小原大和(環3・花巻東)空三振三ゴロ右安
78横地広太(政3・慶應)中飛
1水野敬太(経2・札幌南)
[4]林純司(環2・報徳学園)見三振左飛二併打
H吉野太陽(法3・慶應)一ゴロ
[6]八木陽(法2・慶應)空三振中安遊安左安
[2]吉開鉄朗(商3・慶應)四球
R2加藤右悟(環1・慶應)左安遊併打一飛
[1]渡辺和大(商3・高松商業)投安見三振空三振
1外丸東眞(環4・前橋育英)
9吉田雄亮(商3・慶應)四球

◆慶大投手成績

 選手投球回打者投球数被安打被本塁打与四死球三振失点自責点
先発渡辺和大(商3・高松商業)7 1/32991513344
2外丸東眞(環4・前橋育英)0 2/3517300011
3水野敬太(経2・札幌南)137000000

1925年に創設され、今秋でちょうど100周年を迎えた東京六大学野球は、圧倒的な強さを見せた明大が全勝優勝を達成した。両校ともに優勝の可能性がなくなって迎えた459試合目の早慶戦。慶大は勝ち点を取れば2位に浮上し、24年春以来3季ぶりのAクラスでシーズンを終えることが決まる。だがここで勝ち点を落とせば、24年秋から3季連続の5位でシーズンを終えることになる。一方ワセダも勝ち点獲得で5季連続のAクラス、献上で23年春以来のBクラスが確定する状況。うろこ雲に覆われた神宮は、試合開始前から臙脂と三色旗で染められ、伝統の一戦のプレイボールに向け緊張感が高まっていた。

慶大は、今季全カードで1回戦の先発を任されている渡辺和がこの日も1回戦の先発マウンドに。また、内野陣は大きく配置を変え、林純司(環2・報徳学園)が昨季の慶法4回戦以来の二塁手、今季出場全試合で二塁を守ってきた竹田一が三塁、今季慶明2回戦以降は三塁手に定着していた八木陽(法2・慶應)が遊撃に入る。また、今季慶法4回戦以降はベンチを外れていた打線の核・小原大和(環3・花巻東)が「5番・左翼」でスタメンに復帰。万全のメンバーで臨む。

「5番・左翼」でスタメンに復帰した小原

試合開始直前、現役時代は通算31勝を挙げた慶大OBの志村亮さん(平成元年卒)が始球式を行い、見事な投球で開幕を告げた早慶戦。背番号”18”を背負った制球派左腕の投球を間近で見届けた渡辺和は、初回から抜群のコントロールで投げ込んでいく。早大の先頭は、不動のリードオフマン・尾瀬雄大(スポ4・帝京)。1ボールから内野ゴロを打たせると、今季初めて二塁の守備位置に就いた林純がショートバウンドに難なく対応し、最初のアウトを奪う。その後、2死から小澤に単打を許すも、4番の寺尾を直球で空振り三振に仕留め、無失点で立ち上がる。

同じ背番号”18″を背負う志村亮さんと渡辺和

対するワセダは、先日のドラフト会議で東北楽天ゴールデンイーグルスから2位指名を受けた現役最多通算21勝の大エース・伊藤樹が先発。慶大先頭の丸田湊斗(法2・慶應)はカウント2ー1から捉えるも、惜しくも中飛。後続も打ち取られると、2回も三者凡退に終わる。

渡辺和は2、3回と得点圏に走者を背負いつつも無失点で抑えた直後の3回裏。1死から吉開鉄朗(商3・慶應)が持ち前の選球眼を生かし、今季10個目の四球で出塁。続く渡辺和の内野安打で1死一、二塁と先制のチャンスをつくる。丸田は空振り三振で2死も、続く竹田一が甘く入った初球を捉えると、打球は左翼手の前に落ち、先制に成功。その後も今津の四球で満塁機をつくったが、4番・常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)はカウント2ー2から空振り三振に倒れ、追加点を奪えない。

先制適時打を放った竹田一

貴重な先制点を挙げた後の守り。テンポ良く打ち取りたいところだったが、渡辺和は先頭の寺尾に初球を完璧に捉えられると、打球は左翼席中段に着弾する本塁打となり、すぐさま同点に追い付かれてしまう。

その裏、八木が追い込まれてから二遊間を破る中前への安打を放つと、前の回に吉開の代走で途中出場していた加藤右悟(環1・慶應)もしぶとい安打で出塁し、2死ながら一、二塁と勝ち越しのチャンスをつくる。打席には渡辺和。自らのバットで追加点を奪いたいところだったが、見逃し三振で二者残塁に終わる。

5回表、渡辺和は先頭の吉田瑞に左前への安打を許す。続く伊藤樹がきっちりと犠打を転がすと、捕手の加藤が一塁ベースカバーに入った林純に送球を送り、一塁アウト。加藤の一塁送球間に、走者の吉田瑞が二塁を蹴って一気に三塁まで狙ったが、林純から三塁の竹田一に送球が渡り、吉田瑞をタッチアウトとして併殺。前カードから大きく配置の変わった内野陣が、早慶戦の緊張をものともしない落ち着いたプレーでピンチを未然に防ぐ。

だが打線は6回に小原が復帰後初安打を放ち、7回には八木が2打席連続安打で出塁したが、続く加藤の打球は遊撃・渋谷泰生(スポ4・静岡)の好守に阻まれ併殺に終わるなど、4回以降は慶大のスコアボードに「0」が並ぶ。

6回に復帰後初安打が飛び出した小原

すると8回表、渡辺和は先頭の吉田瑞にこの日初めて四球を与え出塁を許し、伊藤樹の犠打、尾瀬への死球で1死一、二塁と勝ち越しのピンチを背負う。ここで、前の回に好守備を見せた渋谷を迎えると、この回2つ目の四球を与え、満塁。ピンチを拡げ、打席には早大主将の3番・小澤が入る。

堀井監督はここで継投を決断。渡辺和に代え、主将の外丸をマウンドに送り込む。高校時代から群馬県の強豪校の中心選手としてしのぎを削ってきた小澤と外丸。そして”早慶の主将”としてチームをけん引してきた両者が、最高の舞台で相まみえる。初球は外角に外れ、2球目は低めの球を空振りストライク。両校応援席から大声援が送られる中、カウント1ー1からの3球目だった。外角の変化球を捉えると、打球は中前に落ち、三走が生還し勝ち越しの適時打を献上した。主将の一打で活気付いた早大は、続く4番・寺尾のこの日2打点目となる適時打、さらに5番・前田健も適時打。小澤から中軸の3連打で畳み掛けると、なおも1死満塁から6番・田村が犠飛を放ち、この回4点で早大が大きなリードを取った。

渡辺和が招いた1死満塁から外丸登板も粘れず

なんとしてでも反撃したい打線は裏の攻め、途中出場の渡辺憩が伊藤樹の速球を弾き返し、二塁打でチャンスメイクすると、1死から今津が右前への適時打。3点差に詰め寄る。なおも1死一塁、走者を貯めたいところだったが、常松の強烈な当たりは惜しくも野手の正面を突き、三直に倒れる。続く打者は、昨季早慶2回戦の1点を追う最終回、2死満塁の絶好機で伊藤樹に打ち取られ、最後の打者となった横地広太(政3・慶應)。借りを返したい打席だったが、中飛に打ち取られて3点ビハインドで最終回へ。

反撃の狼煙を上げる一打を放ち吠える今津

これ以上の失点は許されない9回表、マウンドにエースへの階段を駆け上がる右腕・水野敬太(経2・札幌南)が上がると、2死から通算100安打に王手をかける尾瀬を遊ゴロに打ち取るなど、三者凡退の好救援。反撃のムードが生まれる。

9回をわずか7球で三者凡退に抑えた水野

3点を追う9回裏。早大はエースの伊藤樹に代え、読売ジャイアンツから2位指名を受けた剛腕・田和を起用。慶大は先頭の代打・吉野太陽(法3・慶應)が打ち取られるも、1死から八木が3打席連続の安打で塁に出る。その後2死となるが、今季初打席の吉田雄亮(商3・慶應)が四球で出塁。2死一、二塁とし、本塁打で同点の絶好機をつくる。ここで打席に入るは、前の打席で二塁打を放った渡辺憩。大きな期待を背に受ける中、初球の変化球を振り抜くと、打球は左前への適時打に。2点差とし、なおも2死ながら一、二塁と、一走が還れば同点、一発出れば逆転サヨナラのチャンス。3回に先制適時打を放った竹田一が打席を迎えたが、最後は右飛に打ち取られ、ゲームセット。反撃及ばず、3対5で敗れた。

渡辺憩の適時打で2点差に追い上げも及ばず

外丸が小澤との主将対決で痛恨の勝ち越し適時打を許し、早大のエース・伊藤樹に通算22勝目を献上してしまった慶大。しかし、渡辺和の好投と打線が終盤に見せた粘りは、まさしく今年のチームを象徴するようなシーンだった。翌日の2回戦ではこの1年で築き上げてきたものをすべて発揮し、2季ぶりの早慶戦勝ち点獲得へまずは1勝1敗に持ち込みたい。

 

(記事:柄澤晃希、写真:河合亜采子、島森沙奈美、鈴木啓護、加藤由衣)

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