慶大の体育会を深掘りしていく連載企画。「What is 〇〇部?」。第44回目は自転車競技部を取材。今回は主将の長谷川嘉洋(経4・慶應)、副将の髙島和真(法3・桑名)、主務の齋藤理子(文4・豊島岡女子)の3人のインタビューを交え、その魅力を深掘りする!

主将
長谷川嘉洋(経4・慶應)
乗っている自転車:TCR

副将
髙島和真(法3・桑名)
乗っている自転車:Canyon Aeroad CFR

主務
齋藤理子(文4・豊島岡女子)
きっかけは「弱虫ペダル」

まず、すごいなと思うところは、いるだけでその場の空気が明るくなるっていうところです。実務的な部分も紹介させていただくと、自分は経理部門で一緒だったんですけど、バッファを取った資料作成の計画を作っていたりとか、あとは収支の資料を自分で改良してはったりとか、仕組み作りが本当に上手な人だなと思っております。
彼は、いつも冷静で何事にも動じない安心感と、威厳のある主将です。後輩から見ると、初見はちょっと怖いかもしれないんですけれども、誰よりも優しくて、競技愛とか部員愛が強い。本当に、強い情熱を胸に秘めた主将です。
一言で言うと、“大きい子供”という感じです(笑)。でも、やるときはしっかりやってくれる副将かなと思っています。
長谷川:基本、慶應の自転車部はトラックもロードも両方やるんですけど、自分はロードレースが専門かなと思ってます。

「専門はロードレース」(長谷川)
髙島:自分はロード種目とトラック種目では中長距離の種目を中心に出ているんですけど、得意なものはそのロード種目で、高速で平坦路を周回するクリテリウムっていう競技になってます。
齋藤: 私の専門種目はサポートなんですけど(笑)、トラックもロードも全部やります。 専門というか、個人的に好きな種目はトラックの「エリミネーション」っていう競技です。集団でトラックを走るんですけど、毎周回ごとに集団の最後尾の人から「アウト」みたいな感じで降ろされていくっていう種目があるんですけど、それが断続的にスリルがあって見ていて楽しいです。
長谷川:自分は大学から始めたのですが、存在を知ったのは「弱虫ペダル」でした。そこから高校3年生の頃に、本場ヨーロッパのロードレースをネット観戦することにどっぷりはまって。「大学に入ったら自分でもやってみたい」と思ったのがきっかけです。
髙島:日本で開催されるレースの中で最も格式高い「TOJ(ツアー・オブ・ジャパン)」のステージが、地元のいなべ市(三重県)で行われていたのがきっかけです。高校から始めたかったのですが環境がなく、中高時代はソフトテニスをしていました。大学でようやく、念願の自転車競技に取り組めています。

「自転車レースが地元で行われていて…」(髙島)
齋藤:私も長谷川と同じく、入り口は「弱虫ペダル」でした。そこで自転車競技というものを知って、慶應のホームページでマネージャーを募集しているのを見つけて入部を決めました。
長谷川:体の大きい人、小さい人、爆発力がある人、持久力がある人など、本当にいろんなタイプの人に勝てる可能性があることが一番の魅力かなと思っています。
髙島:トレーニングからリフレッシュまで、すべて「自転車に乗る」ことで完結する点ですね。限界まで追い込む練習だけでなく、ただゆっくり乗るだけでも純粋に楽しいところが魅力だと思います。
齋藤:まずは「人力最速」と言われる圧倒的なスピード感です。あとは、とにかく種目が多いこと。種目によって活躍できる選手のタイプもガラリと変わるので、バリエーションが多くて見ていて本当に飽きないですね。

「やっぱり圧倒的なスピード感」(齋藤)
髙島:ありましたね。プロの選手って、昔からレースを配信で見たりしていて雲の上の存在だと考えていたんですけど、実際にレースを共にできることもあるっていう点が驚きでした。学生プロの選手もいるので、東日本や全日本の選手権大会で一緒に走ることもあれば、本当にプロの人と一緒に走れるクリテリウムがあったりして。そういうところで、実際に競り合えるのは刺激になりましたね。
——プロ選手は普通の人とどういう部分が違うんですか?
髙島:筋力とかパワーもそうですし、技術の面でもすごいです。なんかもうあらゆる能力で3段階くらい、いやもっと10段階くらいレベルが上だなと感じさせられます。
長谷川:自分が感じたギャップは、やっぱり奥の深さですね。入部前は、ただペダルを回すだけの簡単な競技かなと思ってたんですけど、実際にやってみたら全然違くて。ペダルの回し方1つとってもそうですし、空気抵抗、機材の選択だったり。いろいろ要素があって、どこまでも突き詰めることができるので……完全に沼にはまりました(笑)。

「完全に沼にはまりました(笑)」(長谷川)
——ご自身が一番にこだわっている部分は?
長谷川:ポジションにこだわってます。サドルやハンドルの高さ、ステムの長さとかですね。体の柔軟性とか筋肉の付き方も日々変化するので、その時の自分に合った最適な位置を選ぶようにしてます。 本当にいろんな要素があって、それによってペダルへの力の伝えやすさが結構変わってくるんです。
齋藤:(ギャップは)まず、危険さが本当にすごくて。バンク(競技場)とかでも時々人が落ちるし、大会中に救急車を呼ぶことも結構日常茶飯事というか。実際に自分が救急車を呼んで同乗していったこともあって、大きな事故や怪我が本当に身近なんです。だからこそ、安全面には一層気を配らなきゃいけない。命懸けなところがギャップでした。
あとは費用面ですね。機材1個取っても、例えばホイール1枚に4、50万かかるものだったりとかもあって。それを普通に使って競技するので、当然事故が起こったら一瞬でダメになるわけで……そういう意味でも緊張感のあるスポーツだなと思います。

長谷川:勝負どころまでにどれだけ足を溜めていられるか、ですね。ロードレースは主に集団で走るので、人の後ろにつくことで空気抵抗を避けて楽に走ることができるんです。かといって集団の後ろの方に居すぎると、前方の急な動きだったり、中切れ(集団が途中で分断されること)に反応しづらくなる。その集団内での絶妙な位置取りっていうのが、非常に重要になってくると思います。
髙島:僕は、同じレースを走る他の選手よりは基本的には力量がないと思っていて。だからこそ、どこで足を使ってどこで足を休ませるかっていうのを、冷静に考えることが重要ですね。集団の中で何か動きがあったら、それは他の選手に追わせて、自分はあまり空気抵抗を受けない場所で楽に便乗していく。そういった位置取りを上手にして、自分の足を休ませるのが大事だなと。

「自分あまり物怖じしない性格なんです」(髙島)
——周りはプロもいるわけですし、位置取りって結構難しそうですね…
髙島:でも、自分は結構ガッツがあるというか、あまり物怖じしない性格なんです。だから、格上の強い選手に対しても、自分のいたい場所にグイグイいられるところが強みかなと思ってます(笑)。
齋藤:裏方として思うことは、夏場の150キロのレースとかだと、直射日光のもとで何時間もずっと走りっぱなしになるんです。そうなると、「補給と消費を繰り返す」競技なんですよね。 だから、レース前やレース中に何を摂取する必要があるかを、その日の気温やコースに合わせて考えています。「足が攣らないためには何を摂ったらいいか」、「このレースは脱水防止のためにこれは補給しよう」とか。そういうのを考えるのも重要だなと考えています。

「”補給と消費を繰り返す”競技なんですよね」(齋藤)

長谷川:自分は、誰かを褒めるネタを常に探しています。あとはやっぱり、自転車は本当に危ない競技なので、安全意識は人一倍持って、練習前の声がけや周りへの周知を徹底しています。それと同時に、日頃の練習の姿勢そのもので、みんなの模範になれるようにっていうのは常に意識しています。
髙島:自分も「褒めるところを探す」のは同じですね。気恥ずかしくてあんまり面と向かって口に出せないんですけど(笑)、遠征の移動中や部室で会った時に、ちょっとずつ小出しにするようにしていて。普段の行動や「練習でここが強くなったな」っていう部分も含めて、選手全体を観察しています。あとは部のブログに目を通して、「今、本人はどんなこと考えてるんやろう」って想像したりもしますね。
齋藤: 私は選手・マネージャー関係なく、後輩には自分の経験や知識を余すことなく伝えるように心がけています。「去年のこの大会ではこんな出来事があったよ」とか。 あと、どんなことでもいいから、一緒にいる時はたくさん話すこと。それから、ただ褒めるというよりは、「前回の練習より何秒くらい速くなってない?」って、選手たちが自身の成長を気づけるように、できるだけ具体的な数字にして言うようにしています。

「前回の練習より何秒くらい速くなってない?」って(齋藤)
長谷川:2年の渡邊瑛俊(政2・慶應)選手。「エイシュン」って呼んでるんですけど、塾高の自転車部出身なんです。自分が入部した時に彼はまだ高校2年生で、当時から一緒に活動しているので結構付き合いが長くて。最近、練習中とかでも強くなってきてると感じるので、このまま主力選手になってほしいなと期待しています。
髙島:2年の山﨑直人(環2・八王子桑志)選手ですね。東京の名門校出身で東京都選抜にも選ばれていた、元々すごく力のある選手です。今はロード班長として、新入生たちの面倒を見てもらっています。冬場や春先に積んできた練習量は彼がピカイチだと思ってるんで、自分を信じてトレーニングを続けて、これからの大きな大会に向けて、手がつけられないほど強くなってほしいなと思っています。

齋藤:私は3年の中谷研斗(法3・北科大高)選手です。彼は1年の頃から部を一番先頭で引っ張ってきてくれた、ロードレースでエース的な立ち位置の選手です。私は「中谷ならもっと華々しい成績を取れるんじゃないか」って思っていて。他大学の強豪の中でも、ひときわ目立てるような選手になってくれると信じて期待しています。
長谷川:マイナーですけど、本当に奥が深くて面白い競技です。僕たちは学生の自転車界に「慶應」の名を轟かせるべく、日々練習に励んでいます。ぜひ応援をよろしくお願いします。そして、これから入ってきてくれる新入生の皆さん、入部を心からお待ちしています!
髙島:自転車競技はマイナースポーツではあるんですけど、大井埠頭で試合があったり、3月には明治神宮外苑で試合があったりと、意外と街中でもレースをやっています。ぜひ一度、足を運んでいただけたら嬉しいです。 新入生に向けては、僕たちは「未経験から日本一」というスローガンを掲げています。自分の努力次第でいくらでも華々しい結果を獲りに行ける、数少ないスポーツの1つだと思うので、ぜひ入部を検討してください!
齋藤:この対談を通して、自転車競技部の良さが少しでも伝わっていたら嬉しいなと思います。とっつきにくい競技に見えるかもしれないし、最初は何も分からないのが当たり前です。それは私たちもしっかりサポートします! ただ、今特にマネージャーの1年生がまだ誰も入部していなくて(笑)。このままだと来年はマネージャーが2人だけになってしまって、大ピンチです。未経験でも大丈夫なので、ちょっとでも興味を持ったらぜひマネージャーに! 24時間365日いつでも募集中です!

——インタビューは以上です!自転車競技部の皆様、お忙しい中取材にご協力いただきありがとうございました!
(取材・記事:竹腰環)

