今季の終了を以てして、慶大バスケ部は一つの時代の終焉を迎えることとなった。長きに渡って慶大を指導し、チームを幾多の栄光へと導いた名将・佐々木三男HCが、今季限りをもってHC職を勇退することとなったのだ。120点を取る攻撃的なバスケットで大学界に新風を吹き込み、2008年には史上初の2部からのインカレ制覇を成し遂げるなど、文字通り慶大バスケ部の黄金期を支えた佐々木HC。慶大バスケ部を率いての感想からご自身のバスケット観、今後の進退についてまで、勇退を迎えた今だからこそ出来るお話をうかがった。慶大HCとしての最後の佐々木三男先生の一言一句を、是非その胸に焼き付けて欲しい。
──今季を振り返っていかがでしたか。
佐々木HC: 昨年3部との入替戦をやったりしたので。とはいっても、3部との入替戦の中でも復調の兆しは感じていたので、なんとかなるかな、という気はしていて、それは春も同じだったので。3つの目標である早慶戦勝利、1部昇格、インカレ優勝の内1つしか達成出来ませんでしたが、3部との入替戦をやったことから考えれば、いい方だと評価しないといけないですかね。
──今季は選手のレベルに合わせた、というお話をされていましたが。
佐々木HC: 一番問題だったのが、結局ディフェンスでした。僕は長い間、ボールマンプレッシャーを大原則としてフルコートでそれを実施する、というルールでやっていたので。スクリーンプレーに対しては、オンザボールはファイトオーバー以外ないさくて、スライドもスイッチもだめと。それからオフボールは、スライドを早くしてパスレーンをディナイする、というのが大きな理想としてありました。ただ、弱くなってからはファイトオーバーが中々出来ないんですよね。強い時は「ファイトオーバーをしろ」と言っても、出来ない時には選手がスライドしたりショウしたり、ということをやりながらファイトオーバーをする努力をしていたんですが、近年負け始めてからは、ファイトオーバーが出来ないんですよ。それをやるとやられてしまう、という考え方がチーム内に広がってしまって、そこを解消出来なくてもたもたしている内に弱くなっちゃったんですよ。それで、一番最初に教えた時のビデオをたまたま見たんですね。退任しようと思っていたので、整理しなければいけないと思って見てたら、その時からファイトオーバーはしてたんですが、その時の子とスピード感が全く違うんですよね。今の選手達はもたもたしてるんです。当時は移動にスピード感があって、何でこのスピード感がなくなっちゃったのかなと。そういうこともあったので、ファイトオーバーについてあまり厳しく言わなくしたんです。ある意味、目を瞑ったんですね(笑)。技術的には色々教えたんですよ。前に行けなかったらロールをして早く移動しなさい、と。それを春、伊藤とか大元は上手く使ってたんですよ。全体的なところまでは徹底出来なかったんですが、それをあまり煩く言わなくしたということで、選手達が自分のプレーに対して自分で判断出来るようになったんですかね。私があまり言わなくなったので。
──それは選手自身のIQの問題ですか。
佐々木HC: そうですね。バスケットIQに関しては、こういうチームなので、他大学に比べて相当高くなければ戦えないと思っています。分解練習を沢山やっているのは、こういうケースではこういうチョイスをすることが正しい、というか。運動能力とかキャリアとか体格とかを、カバー出来ないでしょうということを考えていたので、IQは絶対に高くなければいけないと思っています。
──今季のリーグ戦で17勝1敗という成績を残しましたが、予想されていましたか。
佐々木HC: 実は、勝った負けたの数はあまり気にしていなかったんですよ。というのは、やっぱり勝つということへの成功体験が少ないチームだったので、出来れば沢山勝って欲しい。ただ、1部との入替戦の権利は絶対に取らなければならない、ということだったので、勝ち負けにあまりこだわらなかったですね。危うい試合があってやられそうなところも、僕としてはあまり慌てたりはしていなくて。なので、数字を意識したのは最後の方ですかね。これは1回も負けちゃいかんな、という気持ちになったのは。国士舘には絶対負けたくないという気持ちがあって、そこで少し色気を出したことが部員達の重荷になったかも知れません。
──今季は堅守速攻のカラーがやや薄かったようにも思われましたが。
佐々木HC: 結局、フルコートでボールマンプレッシャーをかけるという原点を、ある意味取っ払っちゃったんですよ。というのも、昨季は縦に切られるシーンが多くて、なぜそうなるのかということがしばらく分からなかったんですね。それで、ビデオを見たり冷静に考えたりしたんですが、やっぱり利き手でやられているケースが多くて、ああこれはミニバスに帰るしかないなと。利き手では絶対にやられるなということでやったので。結局、東海にやられたのは後半スタートの3回のシュートで、利き手でやられるなというシステムの中で一番弱いところをつかれたんですけれども。トータル的には簡単にした、利き手を使わせるなというルールが浸透したので。今まで私が理想としていた、サイドラインに追い込んで方向付けをして1人を2人で守りながら、インターセプトを狙っていくといったところからはちょっと離れちゃいましたが、結果的に言うと、東海の春の試合も、東海が一番苦労したのは左方向に方向付けさせられたという部分が強かったんですね。ただ、東海大#24田中大貴に左に行かれてジャンプショットを2つ決められたことが、大きく離された原因になったんですが。東海でさえ利き手を使わせない付き方が、あの頃はそんなに徹底していなかったんですけど、ノーミドルよりかは利き手を使わせるなということはちょこちょこ言っていたので。そういう意味で言うと、めちゃめちゃ単純化したので、玄人の目からすると面白くなかったかも知れませんね(笑)。ミニバスだったので。
『一石を投じたと言えるかなと思う』
──就任されてから今までを振り返ってみて、いかがですか。
佐々木HC: こ れまで、慶應大学の長い歴史の中で、他大学からの指導者というのはいない訳ではなかったんですよ。畑先生という東大を出た方が教えたケースがあるんです が、それ以外はありませんでした。慶應義塾というのは、授業をしっかりやれば自分の行動は自分で責任取りなさいという自由な気風があるので、私としては住 みやすいなと思っていたのですが、ある教員仲間から「AO入試の判定会議でごねる割には現場にいないよね」と言われてしまったので(笑)。勇気を出してOB会 長に、私にやらせてくれないかと言ってやり始めたんですよ。僕は学生の頃に慶應が強かった時をずっと見ていたので、慶應のバスケットというものはよく分 かっているつもりなんですよね。ただ、あれでは勝てないということも思っていたので、私を起用すれば今までより少しは勝てるチームになりますよ、という話 を、2年かかってしまったんですが通しました。外様の人間が入り込んで何かをやるということに関しては、色々な面で抵抗があったんですけれど。振り返ってみると、女子を13年やって男子を12年くらいやったので、25年バスケ部に関わりを持ったということは、授業を真面目にやってなかったという訳ではないんですけれど(笑)。バスケだけの教員生活だったかなという気はしています。
──充実した毎日でしたか?
佐々木HC: そうですね。サバティカルを取るのに、慶應では初めてケースだったようですけど、体育会バスケ部をインカレで優勝させる為にサバティカル取りますと申請を出したら、通っちゃったので。その時は丁度04年の志村(志村雄彦/05’環境情報学部卒/現仙台89ERS)の代で優勝出来たので、振り返ってみるとよかったですね。
──就任当初、苦労ややり辛さは感じましたか。
佐々木HC: やり辛いというのは、現役たちにありましたよ。体力を付けないと、今まで頭でバスケをやって勝ちましょうというチームだったので、いわゆる体力練習というのが向いていない人たちだったんですよ。合宿なんかやると、これ以上やると体が壊れますなんてことを言う部員もいましたよ。そういう人にはやめなさいと、これくらいの練習で壊れるような人は試合では使えませんと言いましたね。ですから、就任した当初は部員とのやり取りが少し大変でした。意識や考え方をかえて、体力勝負を挑んで行くチームカラーにするのが大変でした。
──女子を指導された後に男子を指導された方は、指導者として大成するという印象がありますが。佐々木HC: 女子を指導すると、細かいことまでアドバイスしなければいけないのと、平等に声かけをしないといけないんですよね。そういうことがあったので、男にはあんま り声かけはしなかったんですけども、技術的には細かいことを随分言ったので。学力が高くて賢い子達なので、理解力は高いですし、慶應の男子のチームとは マッチしたのかなと思います。
──慶應の持ち味として120点を取るバスケット、というものが挙げられると思いますが。
佐々木HC: 例えばね、高校とか中学の先生によくお会いすることがあるんですが、会うと必ず言われるのが「大学の男子の試合は、高校生や中学生を連れていけません」と。何故だと言うと、ダラダラしてると。切り替えを早くしろと言っている中で、とても大学生の試合は見せられないというお話がたくさんありました。僕は、トランディションゲームをやらないと慶應は勝てないよという上で、なおかつ120点取れと。インカレだって、5試合やって1試合だけ100点いかなくて、後は全部100点ゲームだったのですが、それは切り替えを早くしないと出来ません。もちろん相手も得点は取りますが、切り替えを早くすることによって、ダラダラした試合なんて見せられないよということを発信したくてやりましたね。100点では駄目だ、120点まで行くぞというのは、そういうところに原因がありました。
──今の大学バスケットボールを見て、その考え方は浸透したと思いますか。
佐々木HC: 特にですが、我々が2部でやっていた頃、その頃は青学もいたし東海もいたし拓大もいたしということで。そういう時代を見てると、やっぱり変わったなと思いますよ。青学が強くなり東海が強くなりましたが、それはやっぱり、あの慶應が40分間走り回ってフルコートのディフェンスをやるなんて考えられなかったのに、それに一瞬でも負けてしまった。それはちょっとマズイんじゃないかと、指導者の考え方が変わったってことから──多分変わったと思うんですけど。慶應には負けられない、ということで。そういう意味で言うと、一石を投じたと言えるかなと思っています。
──慶大でHCを務める中で、佐々木HCの中で変化などはありましたか。
佐々木HC: 多くのコーチの人たちの考え方に違いがあると思うのが、スポーツは頭使わないとダメでしょ、と言われるゆですよ。もちろんそうなんです。でも、じゃあ指導者が頭を使う練習を提供しているか、ということになると、実は提供出来てないんですよね。トランディションゲームをやるといったら、早く行ってポンと打ちなさい、というのはいいんですが、リバウンドはどうするの、なんでここから打ってロングリバウンドになるのにこういう体制を取らせないの。ということが、見ていて奇異に感じるんですよね。頭を使うためには、コーチがちゃんと考えてそれを提供した上で、なおかつ選択肢を2つないしは3つ揃えられるような練習をしないといけないでしょ、ということを私としても示したいですし。頭を使ってスポーツをやれということに対して、指導者こそ頭を使わなければいけないよということを、多くのコーチに言いたかったんです。
──慶大の練習は、他大学と比べて練習量が多いと言われますが。
佐々木HC: 先程の話じゃないですけど、お前自身変わったのかと言われると、ビデオ見たりすると昔はもっとすごいことやってたんだな、と思うこともあります。僕は練習は三分割が必要だと思っていて、一つは体力を作るための練習。もう一つはシュート練習。シュートが入らないと話にならないので、色んな組み合わせの中でシュートが上手になるように。あと一つは、走りながらのパスやポジショニングなんかを判断出来る練習。ですから、走る練習とシュート練習と体力練習の3つをやらないといけないので、45分を3つやるとどうしても2時間半~3時間くらいかかってしまう、ということなので。どういう時期であっても、その三分割は崩さない。試合前の1時間半しか練習しない時は、1つのタームが20分になったりということはありますが、三分割は毎日やらないといけないと思っていたので。私自身は練習が長いと思ったことはないです。結局、間欠的なスピードが必要なんですよ。ある意味抑揚がなきゃいけないんです。集中とそれの分散というのも必要で、パッと集中を解いても、その次のプレーではもう一度集中しないといけない。3時間全部それが出来るわけではないですが、下手な人は1回しか2回くらいしか集中出来ないんですよ、残念ながら。だから3時間やるぞ、という訳ではないんですけど、やっぱりそこでは先程言った三分割をやりたいので。もっと言うと、試合前の練習なんかはそうなんですが、時々OBが見に来ると、「試合前なのに何であそこでミスしてるのを流していくの」という方がいるんですね。試合前出ない時は全部止めて指摘をしているんですが、試合前の練習というのはあまり止めないようにしているんですよ。何故かと言うと、試合はある一定の時間で終わってしまうんです。ここでミスをすると、それを取り返すのに倍くらいかかるよ、ということを体験させておかないと、そういう場面になった時に対応出来ないなと思ったので。わざと放っておくんですよ。もう一つは、その前の基礎作りの段階でしっかり繰り返し練習をやっているから、ある意味習慣化されてるんですよ。試合になったら今の練習よりかはもう少しミスが少なくなるはずだよ、という気持ちがあります。
『大学バスケット界を引っ張って行けるような成績を』
──慶大バスケ部の良いところはどこだと思われますか。
佐々木HC: 一生懸命にやるとこですよね。僕がいつも言ってるのは、一生懸命やってるからこそ成果を出さなければ、ということで。周りが、慶應は頑張るよね、でも最後は負けるよね、というチームは、全然評価されているとは思わないんです。頑張ってるならば成果を出さないと、優勝だとか1部に上がるだとか、試合に勝つだとか。目の前で今起こってることに対して、成果を出していかないとダメなんじゃない、ということはいつも言っていたんですけど。そういうことに対しては、真摯に真剣にやる子が多いので、そこが慶應の一番いいとこじゃないかと思いますね。
──これまでで一番印象に残っている代は、どの年代ですか?
佐々木HC: 色々あるんだけど…あえて一つだけとなると、2年 目のシーズンですね。園(園基史/03’文学部卒)がキャプテンをやっている代なんですが、塾校生がたくさんいたんですけど、こんな練習をすると体が壊れるよということを言う選手が いっぱいいた中で、壊れるようなやつはもう使わない、という話をしました。一番やんちゃだったと私が思っていた園が、キャプテンになった途端にすごく頼れ るやつななっちゃって、シュートも入れるし走りますし。多くの選手は走れといっても走らないんですけど、そんなに変わっていいのというくらい彼は変わりま して。試合内容も、例えばリーグ戦なんかも1試合目で青学にコテンパンにやられて、これはダメだなというところから入替戦に行きましたし。東海大に15点負けててもうダメでしょ、というところから15点逆にリードして試合を終えた、というような時もありました。
──佐々木HCがご指導される中で最も大切にしているポイントはなんですか。
佐々木HC: ここという時に、シュートを決めるチームになって欲しいなと思っています。そこだけは何があっても譲れないですね。ディフェンスのファイトオーバーは譲ったけれども。でも、最後の試合もですが、リング下でシュートをミスしてるんですよ。やっぱり最後は、私が一番気にしてるところで決め切れずに自滅してしまっていますよね。計算すると、10点分そこでミスしてるんですよ。最後の点差が11点だったので、それを入れてくれてれば多分勝ててるんです。イージーシュートを外すことだけに対しては、譲れないですね。
──強かった代というのは、その部分がしっかりしていましたか。
佐々木HC: そうなんです。今年良かったのは、僕はずっと言い続けていますが、西戸が一番難しいペリメーターだったり、リバウンドやルーズボールを拾ってからのポン、と決めるシュート。あれを決めてくれたから試合になってるんですよ。去年までは落ちていたので。なので、やっぱりシュートというのは、素質が関係あると言われるけれど、僕は素質に加えて心の強さというか、ここで決めないとダメでしょと思える選手であって欲しいですね。イージーシュートのミスを譲れないという部分は、そういうことなんです。今年チームを助けてくれたのは、西戸(西戸良/総1/洛南高)なんですよ。大元なんて、試合の前に10分くらい試合をやってゲームに入ってくると丁度いいくらいかな(笑)責任を感じているのかも知れないですが、入りが良くなかったですね、彼は。
──ビックマンの指導に定評がある佐々木HCですが、ご指導に当たって意識されることは。
佐々木HC: だって、僕が高校の時からね──45年前くらいなんですけども。私全国大会出てるんですよ。168cmしかないんですけど、当時175cmあればもっと上手になってるな、と自分で思う訳なんです。それで僕が、この人大きいなと思って見ていた選手が、自分のチームにいた190cmくらいの上級生で、バカデカイな、と思っていました。それで、当時高校生ながら、何故うちのガードはバウンドパスばかりするんだろうと、背が高いんだから手を伸ばした先にパスをされたら絶対届かないのに、ということばかり考えていたので。大きい選手を見つけると、嬉しくてしょうがないんです。僕が大きい選手をよく使うのは、自分がそういう素質がなかったというか、羨ましいなと。僕があと10cm高ければもうちょっと上手になってるのにな、という考えの表れですね。大きい選手は大好きです(笑)。
──今後の進退については、いかがお考えですか。
佐々木HC: 一応定年退職なので、一回ケリをつけさせて下さいということで離れますけれど、希望としては塾内の中高生を教えてみたいな、と思っています。塾内の選手は吸収力が高いですし、一生懸命頑張るので、大学が強くなるためにも中高生を教えてあげたいな、という気がしています。
──ジュニア部門育成のプロジェクト長をされている佐々木HCですが、そちらも続けられるのでしょうか。
佐々木HC: そっちは協会の仕事なので、任期が2年なんですよ。偉い人が代われば人事も変わりますし、安定感があるところではないんですが、慶應にも恩返ししたいしバスケット界にも恩返しをしたいので。私がやり始めてからいい方向に向いているから頑張れ、と言って下さる方がたくさんいるんですが、そこだけでは気持ちは収まらないですね。指導の現場に身を置きたいと思っています。もちろん日本バスケットボール協会の方も頑張らないといけないですけどね。僕に言わせると、2020年のオリンピック誘致に成功しましたということで皆ワイワイ言ってますが、男子なんかで言うと、アジアで9位のチームがオリンピックに出れる訳がないじゃないですか、基本的に。だからこそ、フル代表の遠征を1回減らして中学生の強化費用に当てて下さいと。1回行くだけで800万円近くかかっていますしね。今やってるジュニアエリートアカデミーは620万円でやってるので、1回行かなくすればもっと若い世代の育成に力を入れられる。今やってるジュニアエリートアカデミーの方も、批判の声ももちろんあるんですよ。バスケットをやっている時間が短い、とかですね。でも、中学生や小学生なんですから、中学生活の延長でやらないと、集まった子達全員がプロになれる訳ではないんですから。多く出て欲しいと思いますが。だから、中学生としての生活だとか考え方がきちっと出来ない人を、ちょっと背が高いからとか上手だからと言ってチヤホヤする形を作ってしまったら、言葉は悪いですけどかたわになっちゃうでしょう、と思っているので。なので朝から勉強をやらせたり、夜遅くまで色んなことをやらせているんですよ。そこにも批判はあるんですよ。でも、折角の機会ですし吸収するのは子供たちなので、その材料をいっぱい見せてあげるというのが大人の仕事だと思うので。慶應の子を教えるのが一番いいんですけど、色んなことをしていかなければと思います。色んなところを教えますが、自分のチームだとか所属してる学校を自慢が出来るような人にならないとダメじゃない?というのも、一つ僕の指導理念なんですよ。慶應であれば慶應を愛して、隣の人も愛してということでないと。日体大の女子を指導している時も、そういうことを毎日言っていました。「他大学に負けていいのか。体育の先生になるのに、他所の学校には負けられないだろう」と言っていましたし、慶應の女子を教える時は「お嬢様だから負けていいのか、体育しかやってないようなやつらに負けるんじゃない」と、そういうことばっかり言ってましたね(笑)。
──選手の競争意識を煽るためですか。
佐々木HC: そうですね。それともう一つは、自分にプライドを持てるような集団にしないと、やっててもしょうがないんでしょうと。今日体大が男女共に奮わないですけど、それを見るに忍びないですよ。そういうことを喋ってるのかな、と思います。スポーツに賭けてる人間が、勉強もやってるようなチームに負けてどうするんだよ、と。それくらいのことを言って、それがいい方向に行くように指導しないとですよね。プライドを持つっていう、言葉にすれば簡単なことなんですけど、そういうことを毎日言いながら、だからこの練習はこうやらないとおかしいでしょ、ということをバスケットに結びつけつつ指導しないと、ダメかなという気がします。そういう意味で言ったら、慶應はやりやすいですよ。理解力が高い。技術だけじゃないですよ。バスケだけじゃなくて心の持ち方、考え方っていうのも言っていってあげないと、勿体無いですよね。
──ありがとうございます。では最後に、今後の塾バスケ部へ向けてエールをお願いします。
佐々木HC: やっぱり、普通の子たちというか──実は一昨日、上海の女子選抜チームが来て、六大学の女子を私が教えている時に遠征を作ったんですけどね。上海の人たちが来て、慶應でスポーツをやっている人たちはどうやって入ってくるんだと、そういう話があったんですよ。入部するのに選抜試験みたいなものをやって、あなたはバスケット部に入っても無理だよ、ということは一切しませんよ、ということを言ったのですが、上海の人たちはビックリしていました。でも、そういう選手が集まっても、関東リーグだとか日本の大学バスケット界を引っ張って行けるような成績を残して欲しいです。先ほども言いましたが、頑張るけど最後は負けるよね、というチームにはなって欲しくない。頑張ってるんだから、成果を残して欲しいです。それは2部でも1部でも同じです。その中で頂点というか、皆が目標にするようなチームになって欲しいなという気持ちがありますね。スポーツ推薦がない中での頑張りというのを見せないと、大学スポーツは変わりませんよ。──それと、さっき言い忘れたんですけど、どこか誘ってくれるチームがあれば関西のチームに行ってみたいなと思ってます。インカレは、関東以外優勝チームがないんですよね、65回やってて。それは日本のバスケット界にとってダメな傾向だなと。だから、まったく同じなんですよ。人が集まらないから勝てない、と関西の人たちは思ってると思うんですよね。でも、そうじゃないんですよ。たまたま慶應に2mの選手が来たから勝ったと思ってるかも知れませんが、もしそうならば2mが毎年いたら毎年勝ってるでしょう、と。やっぱりそれだけの練習と考え方を持ってやらないといけません。関西の大学でやってみないか、と言ってくれるチームがあったら行ってみたいですね。それで、3年くらいでインカレ優勝したいね(笑)。変な夢なんですけれどもね。
※これをもちまして、2013年度シーズンの男子バスケットボール部の取材は終了となります。部員の皆様、4年生の皆様、佐々木HC、並びに関係者の皆様、本当にお疲れ様でした。1部昇格の瞬間に立ち会うなど、我々にとっても充実した1年間となりました。これに伴い、慶應スポーツの記事もこれが最後となります。1年間のご愛読ありがとうございました。また、取材に快く答えてくださいましたバスケットボール部関係者の皆様に、この場をもって厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。我々は、来年度も引き続き塾バスケットボール部を精力的に取材してまいります。ご意見・ご感想等ございましたら、是非慶應スポーツまでお寄せくださいませ。今後共、慶應スポーツ新聞会をよろしくお願いいたします※
慶應スポーツ バスケットボール部取材班一同
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