16日、うららかな春の陽気に包まれた秩父宮ラグビー場で、慶大蹴球部のシーズンが始まった。緒戦の舞台はオール早慶明。東日本大震災の復興支援チャリティーマッチとして、現役部員だけではなくOBの選手も入り交じって行われるこの親善試合も、今年で7回目を迎える。通常よりも短いウォーターブレークありの40分で、2試合が行われた。初戦は全早大との対戦。序盤から積極的に前に出るディフェンスで試合の流れに乗り、リードを奪う。終盤は防戦一方となったものの、序盤のアドバンテージを守り切り、14-10で勝利を収めた。2試合目の全明大戦はスコアこそ僅差だったものの、明大のスピーディーな攻撃に対し、ディフェンスのセットが追いつかず終始押され気味。最後まで流れを引き寄せられず、10-14で敗戦となった。
4/16(日)オール早慶明三大学ラグビー@秩父宮ラグビー場
13:55K.O. vs全早大戦
全慶大 | 全早大 | |
2 | T | 2 |
2 | G | 0 |
0 | PG | 0 |
0 | DG | 0 |
14 | 合計 | 10 |
得点者(全慶大のみ)
T=堀越、関東
G=堀越2
ポジション | 先発メンバー |
1.PR | 細田隼都(商4・慶應) |
2.HO | 中本慶太郎(経3・慶應) |
3.PR | 坂田拓海(経3・慶應) |
4.LO | 永末千加良(法4・慶應) |
5.LO | 田中芳樹(政3・慶應) |
6.FL | 中村京介(文4・明和) |
7.FL | 小林嵩基(経4・慶應) |
8.No.8 | 松村凜太郎(商4・慶應) |
9.SH | 江嵜真悟(商3・小倉) |
10.SO | 南翔大(総3・常翔学園) |
11.WTB | 金澤徹(商4・慶應) |
12.CTB | 堀越貴晴(総4・茗渓学園) |
13.CTB | 豊田康平(総3・國學院久我山) |
14.WTB | 関東申崚(H26卒・現釜石シーウェイブス) |
15.FB | 高木一成(商2・慶應) |
慶大が果敢なディフェンスから試合の主導権を握った。6分、敵陣深くで相手のキックをチャージで防ぐと、そのこぼれ球をつかんだCTB堀越貴晴(総4)がインゴールに走り込み、先制点を挙げる。すぐさま8分早大のラインアウトから左にリズムよくつながれ、トライを奪われるが、13分ラインアウトから逆サイドに展開し、最後はWTB関東が大外でトライ。CTB堀越が難しい角度からキックを成功し、14-5に点差を広げる。だが、それ以降はお互いにペナルティーがかさみ、無得点の時間帯が続く。慶大は鋭いタックルを随所に見せ、相手のアタックを許さないものの今ひとつボールが手に馴染まず、ノックオンが目立った。試合終了間際、自陣でフェーズを重ねて攻め込まれ、相手FLにトライを奪われたところでノーサイド。14-10で勝利を収めた、今後に向けて課題の見えた一戦だった。
14:50K.O. vs全明大戦
全慶大 | 全明大 | |
2 | T | 2 |
0 | G | 2 |
0 | PG | 0 |
0 | DG | 0 |
10 | 合計 | 14 |
得点者(全慶大のみ)
T=阿井、和田
G=
ポジション | 先発メンバー |
1.PR | 松本拓弥(総2・常翔学園) |
2.HO | 佐藤耀(H27卒・現NECグリーンロケッツ) |
3.PR | 吉田雄大(総4・秋田) |
4.LO | 植竹創(商3・湘南) |
5.LO | 佐藤大樹(総4・桐蔭学園) |
6.FL | 阿井宏太郎(H22卒・現東京ガス) |
7.FL | 古舘健介(経4・慶應) |
8.No.8 | 川合秀和(総2・國學院久我山) |
9.SH | 小田嶋啓太(環4・桐蔭学園) |
10.SO | 古田京(医3・慶應) |
11.WTB | 権正拓也(政4・慶應) |
12.CTB | 石橋拓也(H26卒・NTTコミュニケーションズ) |
13.CTB | 柏木明(経4・慶應) |
14.WTB | 宮本瑛介(経3・慶應) |
15.FB | 和田拓(H23卒・現キヤノンイーグルス) |
明大の分厚い攻撃に、終始押し込まれた試合だった。先制を取ったのは慶大。相手ラインアウトのミスをFL阿井宏太郎(H22卒・現東京ガス)が逃さず突き先制トライを挙げる。12分、相手の素早いパス回しに必死のタックルで食らいつくものの、最後はインゴール中央に突破を許し逆転される。15分に自陣からBK陣がランプレーでつなぎ、最後は和田拓(H23卒・現キヤノンイーグルス)が走り込んでトライを挙げ、再度逆転したものの、以降は明大の連続攻撃に後手に回る展開になる。ウォーターブレーク後の26分、自陣でのペナルティーからスクラムトライを決められると、その後は盛り返せず。10-14で敗戦を喫した。
腰の入った鋭いタックル、積極的なチャージなど、新チームのはつらつとした力強さが垣間見えた一方で、シーズンの初戦らしくまだまだ荒削りなところも目についた2試合だった。試合後、佐藤大樹主将(総4)が「練習でもブレイクダウンのところはそんなに細かいところまでやれていないので、そういうところでペナルティーが多かった。試合は久しぶりだったので、みんなゲーム勘が無くなっていた」と反省の弁を口にしたとおり、戦術面や連携など、細かな部分の成熟に課題を残した。特に今回良くなかったのがディフェンスのセットスピード。防御ラインの整備が遅れると、どんなに鋭いタックルが入っても相手に突破を許してしまう。いよいよ1週間後に迫った春季大会開幕に向けて、早急な修正が必要になるだろう。
今日の試合は塾OBの三輪谷悟士(H22卒・三菱重工相模原ダイナボアーズ)、和田佑(H23卒・現キャノンイーグルス)の引退試合でもあった。現役選手に向けて、「まだまだ伸びしろがあると思う。今を大切に無我夢中でやってほしい」と和田。長いシーズンを戦い抜くために、まず目の前の一戦一戦を大事にしていきたいところだ。
(記事:江島健生)
以下、コメント
FB和田佑(H23卒・現キヤノンイーグルス)
——東日本大震災のチャリティーマッチとして行われた今日のオール早慶明だったが、どのような気持ちで臨みましたか
普段ニュースでも見ているのですが、まだ気軽にラグビーできない人たちがいるというのを頭に入れて臨みました。ラグビーができるというのを幸せに感じながら、今日はプレーしました。
——久しぶりのタイガージャージはどうでしたか
そうですね。身が引き締まるというか、昔いたところですが、新しい人たちがそういった伝統のジャージを着てやっているというのは嬉しい思いでしたね。
——出場された明大戦について振り返って
アタックすれば(逆に)攻められていたので、ディフェンスのところでディシプリン(規律)と、あとはセットが遅かったのでそこを突かれちゃいましたね。スクラムもやられちゃったんですけど、どちらかと言うとセットが遅かったのが(敗戦の)原因じゃないかと思います。
——トライも奪いました
そうですね。ごっつぁんトライをいただきました。今日はBKとして良いコミュニケーションも取れていたから奪えたトライだと思うので、そういう意味で良いトライだったかなと思います。
——後輩とのプレーはどうでしたか
楽しかったですよ。まだまだ伸びしろがあると思うので、彼らには日本一を目指して頑張ってほしいと思います。
——今日の試合が引退試合となるわけですが、今はどういった心境ですか
まあ、すごく寂しいですね。純粋に。こういうところでプレーすることに憧れてやってきた者としては残念ですけど、新しい人生のスタートだと思うので、これからこの経験をもとに何かしら良い人生を歩んでいけたらなと思いますね。
——現役の選手たちに何か伝えたいメッセージはありますか
もう本当に一日一日を一生懸命やるしかないと思います。(これから)強いチームとも当たるでしょうし、今を大切に無我夢中でやってほしいですね。
LO佐藤大樹(総4・桐蔭学園)
——東日本大震災のチャリティーマッチとして行われた今日のオール早慶明だったが、どのような気持ちで臨みましたか
チャリティーマッチっていうのもあるのですが、それよりも僕らの代になってからの初めての公式戦という意味合いの方が大きかったです。今年のチームのスローガンが一体感のあるチームということなので、その目標に向かって、4年生も変わっているというのを後輩たちにも見せられたらなと。そういう思いがありました。
——試合を終えてその手ごたえはありましたか
練習の感じが出ていたような気がしています。最近(練習でも)ちょっとミスが多かったですし、(明大戦は)ディフェンスのセットが遅かったりしたのもあったのですが、それも結構練習から出ているところがあったのかなと思いますね。練習のクオリティがそんなに良くなかったのでこんなものかなという感じはします。
——2試合ともペナルティーがかさんでしまった印象を受けました
試合は久しぶりだったので、みんなゲーム勘が無くなっていたというのもありますね。練習でもブレイクダウンのところはそんなに細かいところまでやれていないので、そういうところでペナルティーが多かったのかなと思います。それは最初なのでどんどん改善していきたいと思います。
——OBの選手と交じっての試合でしたが、一緒にプレーしてみてどうでしたか
やっぱりOBの選手は身体も強いですし、スキルもあったのですが、なにより一番思ったのは周りへの声かけとか、そういった意識のところが全然違うなと思いましたね。僕もキャプテンとしてまだまだ他にできることがあるなと思いましたし、練習でもそういったところをもっとやっていかないといけないなというのは感じました。
———来週の青学大戦に向けて
今日悪かったところを練習で直して、どんどん毎試合ごとにもっと良い試合をできるように頑張っていきたいと思います。