【ソッカー(男子)】チームのために磨いた「怖さ」がエンジの壁を貫いた/4年生卒業企画「光るとき」 No.13 齋藤真之介

ソッカー男子

25年度に引退を迎えた4年生を特集する特別企画「光るとき」。第13回となる今回は、ソッカー部の齋藤真之介(経4・桜修館/FC町田ゼルビアユース)。3年時から左ウィングで出場を続け、伝家の宝刀・カットインシュートで慶大の〝超攻撃〟をけん引した齋藤真。チームのために自分の武器を磨き続けた彼の4年間に迫る。

 

5歳でサッカーを始め、高校時代を町田ゼルビアユースで過ごした齋藤真が慶大への進学を決断したきっかけは、等々力競技場で早慶クラシコを観戦したことだった。「1万人以上の人たちの前でプレーする姿を見て憧れを持った」と語る。

しかし、齋藤真の道のりは決して順風満帆なものではなかった。下級生時代は関東リーグの出場機会をほとんど得られず、Bチームで過ごす日々が続いた。齋藤真は「同期がトップチームの試合に絡んでいる姿を見るのは辛かった」と当時を振り返る。

それでも齋藤真はくじけなかった。「下級生の頃はどこかベクトルが外に向いていた。自分にベクトルを向けることで、チームに対して自分がすべきこともおのずと見えてきた」。

自分と向き合い続けた齋藤真は、3年時に就任した中町公祐監督の元で左ウィングのポジションに定着。ソッカー部のDNAである「模範、利他性、総和」を体現し、入部以前よりチームのためのプレーを心がけるようになったという齋藤真は、ついに入部のきっかけである早慶クラシコの舞台に立った。

しかし結果は0-4。個人・チーム共に絶好調で迎えた決戦での大敗はショッキングな出来事として脳裏に刻まれた。それでも齋藤真は冷静だった。「悔しかったが、負けた理由は明確だった。『いつも通りやれば』というマインドが、勝負事に対する詰めの甘さを招き、徹底的に対策された時の打開策を見出せなかった」。いち早く敗因を分析し、悔しさを原動力にリベンジへの強い思いを滾らせた。

この屈辱の敗戦から、齋藤真は更に自分を追い込んだ。「怖さがない選手」を脱却すべく、毎日、チームの全体練習が終われば、毎日30分以上シュートを打ち込んだ。持ち味のドリブルを強化するべく、スプリントトレーニングにも汗を流した。この成果もあり、齋藤真は昨年度、関東大学リーグ1部で7ゴール4アシストを記録。リーグ屈指のアタッカーとして慶大の〝超攻撃〟をけん引した。

そして2025年8月17日、第76回早慶クラシコ。かつてスタンドから見た〝等々力劇場〟で、齋藤真のたゆまぬ努力は結実する。一進一退の攻防が繰り広げられる中、慶大が均衡を破る先制弾を決めた3分後だった。敵陣でドリブルを仕掛けた齋藤真が、エンジのディフェンスをかわし、右足を振り抜く。彼の十八番となったカットインからのミドルシュートは、美しい弧を描いてゴールネットに突き刺さった。このゴールは、慶大を4年ぶりの早慶戦勝利に導く決勝点となった。齋藤真は「早慶戦に負けてから1年間、ゴールを奪う能力を高めようと努力を続けてきたことが報われた」と歓喜の瞬間を振り返る。

学年全体で「ピッチ内ファースト」を掲げ、慶大の伝統である組織力に加え、個々のスキルアップにも重点を置き、早慶戦勝利を成し遂げた25年度のソッカー部。それでも、4年目にして初めて到達した関東1部の舞台では、最終節まで残留の可能性を残したものの、最後は2部降格の憂き目にあった。公式戦ラストゲームとなった残留プレーオフ・法大戦について齋藤真は「正直まだ整理はついていない。4年間やり尽くした結末があの0-3だったという喪失感、後輩たちに1部の舞台を残せなかった情けなさは簡単には拭えない」と悔しさをにじませた。

その上で、フィジカルレベルや個の能力が格段に上がり、どのチームにも理不尽に得点を奪える選手が居る過酷な環境で勝つために、慶大も更に高いレベルに到達しなければならないと齋藤真は言う。後輩たちには「『一部奪還・早慶戦勝利』を必ず達成することに加え、慶應の伝統である組織力も大事にしつつ、自分たちの代が残した『個の能力の追求』という部分も受け継いでほしい」と、彼らしいストイックなメッセージを贈った。

常にチームのことを第一に考え、チームのために自分を磨いた齋藤真。彼がピッチで見せる華麗なドリブル、芸術的なカットインシュートの裏には、壮絶な努力が隠されていた。齋藤真が背中で示し続けた「ピッチ内ファースト」は、創立100年目を迎えるソッカー部の新たな文化として根付いていくだろう。

 

(取材:髙木謙)

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