25年度に卒業を迎える4年生を特集する特別企画「光るとき」。第72回となる今回は、男子ラクロス部の主将・池田朋史(商4・慶應)に迫る。未経験からラクロスに挑み、主将としてチームを率いるまでに成長した池田。日本一を目指して歩み続けた4年間は、責任と重圧、挫折と学びを重ねながら、個人から組織へと視点を広げていった競技者の軌跡だった。勝敗の先にある人間的成熟が、この4年間に刻まれている。
未経験者から主将へ 池田が駆け抜けた4シーズン
高校時代はアメリカンフットボール部に所属し、体格が重要なポジションに就いていた池田。「日本のトップを目指すなら、アメフトでは難しいと思った。でもラクロスは、ほとんどの人が大学から始める競技。だったら自分から飛び込んで日本一、トップレベルの選手を目指そうと思った」その決断が4年間のラクロス競技人生の始まりだった。
すべてが初めての環境。新しい仲間、初めて触れる競技、毎日の練習。1年時はラクロス未経験者のチームであるアーセナルチームとして練習に励んだ。「毎日が挑戦で、成長だった。とにかく練習し、1年生は楽しいという思い出がある」そう語った。 無我夢中でクロスを握り、練習を積み、ひたすら吸収する日々だった。

アーセナルチームとしての練習を終え、2年生になると未経験者からわずか1年でトップのAチーム入りという異例の成長曲線を描いた池田。日本トップレベルの慶大ラクロス部の中心選手と共に行う練習であるからこそ、そのレベルの違いに圧倒され「とにかくついていくのに必死だった」と語る一方で、それと同時に刺激的だったと当時を振り返る。リーグ戦出場を目標に日々努力を重ね、スタメンを勝ち取るなど、大きく成長を遂げたシーズンとなった。
3年生になるとプレー面では中心選手として活躍する一方で、学年幹部として組織運営にも携わる立場となった。「来年幹部になることを見据え、組織運営を学びながら自分の力を蓄えてきた1年だった」。しかし、責任と役割が増えたことで、自分のプレーに集中しきれない時間が増え、得点も伸び悩んだという。「途中交代させられたりと悔しい思いをした1年だった。何か変わらなきゃいけないという意識はありながらもそれを行動にしていなかったことが多かったと思う。正直、伸び悩んだ印象が強い」と振り返る。

そして主将として迎えた4年生。先輩たちが築いてきた慶大ラクロス部の文化を引き継ぎ、主将としての重圧と責任を背負うラストイヤーとなった。「やることの多さに追われながら、チーム運営の難しさを痛感した1年だった」。7月に開幕を迎えた関東学生リーグでは5戦全勝。ブロック1位通過で、全日本大学選手権大会出場を決めるFINAL4へと駒を進めた。しかし、結果はFINAL4敗退。日本一への旅路は道なかばで途絶え、不意に引退という現実を突きつけられた。「当然うまくいくと思っていたことが、初めてうまくいかなかった。その経験が、自分にとって初めての挫折でした。結果は出なかったけど、多くの学びがあり、人として成長できた1年だったと思う」と振り返った。
忘れられない60分間
最も印象に残る試合として挙げたのは、2025年度関東学生リーグFINAL4の明学大戦。「最後の最後まで巻き返せると思っていたし、勝てるとどこかで確信していた。人生で1番刺激的な60分間だった」。池田にとって明学戦は、チームとして“負けるビジョン”がまったく見えない試合だった。しかし、明学大学の一戦一戦にかける思いの強さに押し切られたと語る。「練習試合では良い感触があった。ただ、本番に懸ける覚悟の差が出たのかもしれない。」この敗戦は悔しさだけでなく、自分とチームが次のステージへ進むために何が足りないのかを、はっきりと突きつけられた60分間でもあった。

FINAL4の明学大戦
ラクロスがくれた4年間
ラクロス部は、池田にとって『大学生活そのもの』だという。「主将としてだけじゃなく、自分自身を変えてくれた存在。ここで人として成長できた」と語る。そして最後に池田は2026年度の新シーズンのメンバーについて、「実力はある。まとまり、団結が強くなれば、本当に強いチームになる」。期待を込めて、後輩たちに慶大ラクロスの未来を託した。

日本一の選手を目指して選んだラクロスという舞台。主将として味わった責任、挫折、学び、成長。4年間で得たすべてを胸に、池田はまた新たなステージへと歩み出す。
(取材・記事:野口ことみ)


