関東大学リーグ1部前期第4節。スコアレスで迎えた前半終了間際。佐藤凜(総4・常盤木学園)に待望の得点が飛び出した。
チームとして狙っていたプレスが見事にはまった。主将・野村亜未 (総4・十文字)が相手DFからボールを奪うと、すぐさまシュート。キーパーが弾いてこぼれたところを、野村と共にプレスをかけていた副将・佐藤が押し込んだ。しかし、後半に追いつかれ、惜しくも引き分け。勝ち点3につなげることはできなかった。
今季の慶大が掲げる目標は、“インカレ出場”。関東大学リーグ1部で8位以上の成績を収めると、年末から年明けにかけて開催される全日本大学女子サッカー選手権大会(=インカレ)の出場権を獲得できる。
ここまでの4試合は1勝3分。全国の夢舞台への切符を掴むべく、引き分けをどう勝ちに持っていくか。接戦を制するには、得点力は言うまでもなく求められてくる。
24年の後期第6節を最後に、大学リーグでは得点から遠ざかっていた佐藤。昨季は16試合に出場しながらも、得点を挙げることはできなかった。PKの絶好機を相手キーパーに止められたこともあった。1部昇格を争う中、リーグ戦終盤は5試合続けてベンチスタートとなり、出場機会は徐々に減っていった。チームは2部優勝という形で目標の1部昇格を果たしたが、個人としては悔しいシーズンとなった。
「佐藤凜はテクニシャン」。同期の竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)は、佐藤のプレースタイルをそう評している。相手の意表を突くワンタッチプレーや、DFラインの裏を狙ったスルーパス。繊細なボールタッチに、スペースを空けるフリーランニング。周りを見て、落ち着いてプレーできるのが佐藤の強みだ。そのプレーはどれも記録には残りづらい。チームがボールを運ぶ際に貢献できるプレイヤーだ。
それでも、「やはり前のポジションをやっているからには得点を決めることは求められてくることだと思うので、意識しています」と佐藤は語る。サッカー選手としての価値を測る上で、無視することはできない得点やアシストといったゴールに直結する結果。得点はなく2アシストのみにとどまり、後半戦にかけて出場機会が減っていった昨季のプレーには、満足できるはずもなかった。
しかし、苦しい日々から得たこともあった。「スタートで出られる時間が減って、途中から出る機会が増えたのは結構悔しくて、その中でできる貢献を考えた時に、自分のことだけでなくてチームのためにできることをしたいと考えて、練習中の声がけを意識したり、今まで自分がやってきたことのないような立ち振る舞いを意識していました」。チーム全体に気を配り、自分の結果が出ていなくても冷静に振る舞う。決して、自らの気持ちを抑えていたわけではない。チームの勝利のために見出した新しい貢献の形だった。
「これまで輝かしい結果を残すことができなかった私の逆転劇を大学4年間で必ず巻き起こしてみせます」。3年前の春。当時1年生の佐藤は、部員ブログにこう綴った。
名門・常盤木学園高校出身の佐藤のサッカー人生は、決して順風満帆なものではなかった。高校時代は試合に出られない日々が続き、ようやくメンバー入りを果たしたかに思われた全国大会では、大会直前になってメンバーを外れることを言い渡された。
大学入学後も、”起承転”と表現すべきか、ここまでの3年間は平坦ではない道を歩んできた。けがからのスタートとなったが、シーズン途中からレギュラーの座を射止めた1年目。順調に成長を遂げ、出場機会を確保した2年目。チームが結果を残す一方で、個人としては悔しい想いをした3年目。
そして、副将に就任した4年目。本人も、仲間も、誰しもが待ちに待った久しぶりのゴールは、チームのために地道に取り組んできたことが実を結んだ成果だった。
しかし、このゴールはまだ、逆転劇の序章に過ぎない。ここからの佐藤のさらなる活躍がチームの浮上のカギを握ってくる。
そして、その先にはきっと美しいフィナーレが待っていると思う。
高校時代はあと一歩のところで出場が叶わなかった、全国の舞台で。
「得点はずっと欲しかったので、取れたのは良かったですが、チームを勝たせるような得点ではなかったので、次はチームを勝ち点3に導けるような得点が欲しいと思います」。


(記事:柄澤晃希)


