【ソッカー(男子)】開幕前特集第4弾! チームを支える屋台骨、岩崎湧治副将インタビュー

慶大は昨季の関東大学リーグ1部で最下位に沈み、10年ぶりの2部降格という屈辱を味わった。「再建」を期して2月から始動した新チーム。2部優勝、昇格を目指し、シーズン開幕に向けて牙を研いでいる。ケイスポでは、新チームの中心を担う選手、スタッフに意気込みを語ってもらった。

 

第4弾は、中盤の底を支える仕事人、岩崎湧治(商4・ベガルタ仙台ユース)副将の単独インタビューをお届けする。これまでは決してチームで目立つ存在ではなかった岩崎だが、今季は副将に就任し、ピッチ内外で彼にしかできない役割を担うこととなる。大学サッカー最後の1年に臨む彼の思いとは――。

(取材日:3月1日)

 

 

――まず、昨季を振り返っていかがですか

 

シーズンの初めはレギュラーとして出させてもらっていたんですけれども、最初にチームが上手くいかなくて、それで自分も出場機会が減って怪我もしてしまって。そういった中でサブ組になる機会が多かったんですけども、そこでも自分としてはいつか絶対チャンスが来るだろうと思って、試合に出たいということとチームを勝たせたいという強い気持ちは持ってずっとやってきて、その中で雨の中の東洋戦で(決勝点を)決めることができたというのは、自分の中でもすごく自信になりましたし、一番記憶に残る試合になったかなと思います。ただひとつ悔しいのが、東洋戦の後にも試合には出させてもらってたんですけども、やはり最後のところで残留できなかったというところは、チームとしても個人としても、悔しいというか。最終戦の流経戦でいえば、相手の守田選手(現川崎フロンターレ)にすごく実力の差を感じたので、自分がもっと良い選手だったらチームを残留させられたんじゃないかなって思いはあります。

 

――決勝点を決めた東洋大戦、特に印象に残っていることなどはありますか

昨季、雨中の東洋大戦で決勝点を挙げ、ヒーローとなった

 

その試合まで自分はずっと試合に出れていなくて、ベンチには入ってたんですけど、練習でも自分としては良いプレーできているという実感があったんですけど出してもらえなくて、ただあのときすごく雨が降っていて、チャンスはあるんじゃないかなってふうに思っていて、ハーフタイムのときに池田(豊史貴=総卒)さんと一緒に行くぞと言われた時は、今まで溜め込んできたものというか、やってやるぞという気持ちがメラメラ湧いてきました。いざピッチに立った時は正直ゴール決めるとかは全然考えていなくて、0-0だったので、最悪勝ち点1でも、できれば勝ち点3をくらいに思っていて、自分ができる、本当の無理をせずできるプレーをしようと思っていて。あのシーンも八田(和己=総3・桐蔭学園)がずらしてくれて自分の前にこぼれてきて、正直触れるか分からなかったんですけど、無我夢中というか足を伸ばして、全然コースとか狙ってなくて、そうしたら本当に良いところに転がってくれて入ったっていう感じで。ネットが揺れた時は一瞬「えっ」って思って、そこからよっしゃーと、喜びが爆発しました。

 

――喜びのあまりチームメイトに駆け寄っていく姿が印象的でした

 

すごく楽しかったです。先輩も後輩も入り混じって、色々な人に声をかけてもらったし、自分としてもすごく嬉しかったです。

 

――試合に出られない時期があった原因は今どう分析していますか

 

一つは、恐らく最初にチームがあまり勝てなかったことで、チームとしても個人としても変化しなきゃいけないし、勝てないというのには何か原因があって、そういったなかで監督からの信頼をなくしているなというのは思っていて、それにケガも重なって…。自分が復帰した後に考えていたのは、「出たい」っていう思いよりも、出たらチームを勝たせようと思っていて、自分が出ている試合でチームが勝てば、自然と出ることにつながるし、出られないときもどうやったらチームが勝つかを考えながら練習でもプレーしていました。

 

松木の思いがチームに正しく伝わるように

――新シーズンが始まりましたが、今のチームの印象はいかがですか

 

例年であればこの時期にはスタメンが決まっていて、チームを作っていくという感じだったんですけど、すごく競争があります。監督もコーチ陣も結構変わったので雰囲気全体も変わりましたし、それは4年生としてもいいところは残しつつ、変えることは自分たちで変えようと思っているので、たとえば1、2、3年生から良い意見があったら、多少ぶつかり合っても取り入れていこうと思ってますし、それぞれが良さを持っているので、良さがぶつかり合って良いプレーも悪いプレー出ることはありますけど、チームとしてベストな11人が出てチームとして勝つことを一番に考えています。チームも今競争がある中、結果には結びついていないですけども、逆にこの時期に勝てないということは考えることにもつながるので、良い雰囲気だと思います。

 

――新監督とはどのようなコミュニケーションをとっていますか

 

冨田賢監督は2年前にBチームの監督をしていて、自分はその時Bチームで1年間一緒に戦ったので、すごく分かり合えるというか、色々とコミュニケーションが取りやすいですし、例えばトミケンさんが選手に何か伝えたいときでも、自分ができるだけ間に入るようにはしてるんですけど、意見を取り入れようという気持ちを感じます。

 

――監督とチームのコミュニケーションを取る役目というのを感じていますか

 

トミケンさんはとても親しみやすい人で、すごく選手に話しかけるように意識している人で、自分たち4年生だけでなく1、2、3年生にも話しかけるようにしてくれていて、そういった姿であったりトミケンさん自身の人柄がみんな好きだと思います。Bチームのときもすごく雰囲気が良かったんですよ。トミケンさんのことでみんなが笑顔になる、ということでチームが良い雰囲気になって、BチームとしてもIリーグで全国大会まであと一歩というところまで行けたので、今回も直接的にチームとつなぐということもそうですけど、チーム全体が良い雰囲気になるように、自分としてできることをしようと思います。

 

――2年前にBチームで共に戦った選手は他に誰がいますか

 

右サイドバックの井出(悠介=環4・桐蔭学園)、あとはフォワードの宮川(大史=総4・暁星)とか、あとは江本(優貴=総3・大宮アルディージャユース)とか多嶋田(雅司=商3・国学院久我山)とかなんですけど、結構いますね。

 

――副将としての立場から下級生とのコミュニケーションの機会も増えたと思います

 

大学に入ってきたころは4年間あるって思ったんですけど、今はもうラスト1年で、自分としてもなにか残したいというのが強くて、流経戦に負けて降格した時の悔しさというのは計り知れないものがありましたし、自分としても最後ピッチに立てなかった、立った時でもチームを残留させられるようなプレーができなかったっていう悔しさがすごくあって。ただ、逆に考えればあと1年チャンスをもらったと言えるので、自分たちがこの1年何をするかというので、1部昇格というのは本当に何が何でも成し遂げたいという思いが強いですし、さらに個人的には、学年で目標を話し合う時にも自分が意見を出して言ったことなんですけど、1部昇格が目標に決まった他に、自分としてはあと2つ。1つは早慶戦勝利というのを何が何でも成し遂げたくて、自分たちが入ってから1回も勝ってないですし、自分たちが勝ってない悔しさもあるし応援している人たちも勝つというのと負けるというのでは全然喜びが違うと思います。あともう1つは、自分が高校からずっと目指してきた日本一という目標があって、夏の1回しかチャンスがないですけども、自分はそのトーナメントも無駄にしたくなくて、2部でも上に行きたいし、総理大臣杯に出たいし、っていう強い思いがあって、1部昇格、早慶戦勝利、トーナメントという3つは自分の中ですごく強い思いを持っています。

 

――副将に就任した経緯を教えてください

 

まず主将を決めるミーティングで、投票で自分と松木(駿之介=総4・青森山田)と鴻巣(良真=総4・国学院久我山)の3人が残って、その3人の中でも話し合いましたし、Aチームの新しい4年生やスタッフとも話し合いをして、色々な意見も出たんですけど、ひとつは松木と鴻巣は気持ちを前面に出して引っ張っていくタイプで、自分は周りとコミュニケーションを取りながらバランスを取ってっていうタイプだという話になって、少し自分と、松木と良真でタイプが違うんじゃないかって話になっていて、自分と、松木か良真がバランスが良いんじゃないかという話になって、そのなかでも部員数が多いので、気持ちを前面に押し出す主将と、それに対して「ん?」と思ったりちょっとついていけない人と話したりコミュニケーションを取ったりして、主将を支えながら引っ張っていって、他の人ともコミュニケーションを取っていく副将、という話になったので、自分が副将で、松木が主将でということになりました。

 

――バランスを取るのが自分の役目、ということですか

副将としてコミュニケーションを取る役割を自負する

 

松木が本当に裏表がなくて良いやつですし、ガンガン引っ張っていってくれるので、逆に言えば彼自身がこうなる(背負いすぎる)こともあるので、それを支えていくというのが自分の役目だと思いますし、やっぱり主将というのは責任などが重くのしかかってくるので、それを近くでサポートできる、そしてサポートしながら自分自身も色々な人とコミュニケーションを取りながら、2人でチームを作るわけじゃなくて、チームを作るのは本当に1人ひとりだと思っているので、その松木を支えながらもみんなと話し合いながら一番良いチームにと思っています。

 

――主将の松木選手とはどんな話をしていますか

 

今年1部昇格したいというのはすごく大きくて、正直2部でも相手は強いですし、昇格するというのは簡単なことじゃない中で、その点を松木がすごく意識していて、試合後みんなでビデオを見ようとか、練習の時も声を出して引っ張っていこうというのはすごく感じているので、そこに自分がついていきながらも、周りと話しながら、松木はチームがより良くなるためという一心で行動してくれているので、自分もその気持ちに応えられるように、松木の思いがチームに正しく伝わるように、自分としてはその役目を果たしていきたいと思います。

 

――熱い主将と支える副将という関係性は、2年前の宮地元貴(総卒・現アスルクラロ沼津)主将と井上大(総卒)副将の関係性に似ているように思います

 

ミーティングの中でも意見が出ていたんですけど、そのさらに前の代から、主将が気持ちを見せて、こいつなら応援したくなる、こいつになら引っ張って欲しいって思いながら、副将がそれを支えつつコントロールするといった関係性はあって、自分たちの代でも意見として出ていましたし、慶應の伝統じゃないですけど、一種のイメージがあるのかなとは思います。

 

「湧治がチームを助けてるよな」と後から言ってもらえる選手になりたい

――ボランチの選手として、自分の特徴は何だと考えていますか

 

自分の特徴はサボらないというところで、あとはセットプレーの時に点を取れるというところだと思うので、たとえば守備面ではゴールキックを早く返して、セカンドボールを拾って、上手くて何人も抜くわけじゃないけど、試合を通して見た時に「気付けば湧治がいるよな」「湧治がチームを助けてるよな」と後から言ってもらえるような選手になりたくて、さらにセットプレーだったりミドルシュートだったり、試合の要所要所の苦しい時に、あの東洋戦のように点を決めてチームを助けられる選手になりたいと思います。

 

――改めて今季の目標を教えてください

 

1つは1部昇格、これは何が何でも成し遂げたいという思いです。正直個人としては自分はあまり目立つ選手でもないので、チームの守備面で言えば、チームに貢献するために走って気持ちを見せて、自分が活躍してもしなくても、チームが勝つことに貢献できれば、自分が出ている試合でチームを勝たせるその一役を担うことができれば、というのが目標です。サッカーをする学生ラスト1年というのもあって、自分の中では日本一という目標も消せなくて、その思いはすごくありますし、それと同時に1年の頃から負け続けて悔しさがある早慶戦もありますし、どれが一番とかは選べないですけど、自分は全部取っちゃっても良いんじゃないかなと思っていて、取れるように全力でやりたいと思います。

(取材:中村駿作 写真:桑原大樹)

岩崎湧治(いわさき・ゆうじ)

ベガルタ仙台ユースを経て、商学部新4年。ポジションはMF、DF。地味な仕事もいとわず常にチームに貢献する仕事人。昨季はCBや中盤の守備的なオプションとして重用された。

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