第6回はアナリストの横山颯大(教4=東京・早実)、一木脩平(法4=神奈川・慶應義塾)のお二人にお越しいただいた。アナリストという役割はあまり注目されない影の立役者だ。選手やスタッフとは異なる客観的かつ独自の視点からお話を伺った。寝る間も惜しんでチームのために分析をこなす彼らにも注目してほしい。
※この取材は6月1日にオンラインで行われたものです。
ーー自己紹介をお願いします
一木:慶應義塾大学法学部法律学科4年、体育会バレーボール部のアナリストを務めております、一木脩平と申します。よろしくお願いします。
横山:早稲田大学教育学部理学科4年の体育会男子バレーボール部のアナリストを務めています、横山颯大です。よろしくお願いします!

対談中の一木(慶大男子部アナリスト)
ーー最近練習以外の時間で趣味やマイブームなど、よくすることはありますか
一木:趣味は散歩です!基本的に最寄り駅の1個手前で、大学の帰りも降りて1駅分歩くようにしています。マイブームは、ちょっと株を上げたい訳ではないのですが(笑)、SNSで小さい子の動画を見るのがすごく好きで、最近よく見ています。
横山:いや、これは株上げにいってるな(笑)。僕の趣味は音楽を聞くことですね。いろいろな人におすすめのアーティストを聞いてそれをよく聴きます。マイブームは、本当に最近忙しくてプライベートがないのですが、卒論の関係で英語の論文を探すことが多くなったので、英語の論文を探すことは得意になってきましたね。
一木:それいつ使うんだ(笑)。
ーーアナリストになった経緯を教えてください
一木:僕から行くと、高校時代は選手としてバレーボールをプレーしていたんですけれども、高校3年生に腰の方を怪我してしまったのと、大学のレベルだとどうしても自分は選手としては通用しないなと考えていて。最初は体育会に入る予定はなかったんですけれど、大学1年次に早慶戦を見に行って、その時に高校時代の同期で、今主将を務めてる山元(康生、法4=神奈川・慶應義塾)が試合に出て、活躍している姿を見て、そこで自分もやっぱりもう1度バレーボールに携わりたいなと思いました。前々からアナリストでやってみないかというお誘いをいただいていたので、そのままアナリストとして入部しました。
横山:僕は高校までは野球をやっていたので、本当にバレーボールとは無縁でした。それこそ今日の(野球の)早慶戦もちょうど7回ぐらいから投げていた人(田和廉、教4=東京・早実)などと同期でした。野球は怪我もあったのと、暑いのでもういいかなという感じの時に、早稲田のバレーボールが強いということを知って。やっぱりチームスポーツをずっとやってきた身として、それだけずっと勝ち続けられるその組織に興味があって、入部したいなと思ったのがきっかけです。その中で、じゃあ何を自分がやるんだろうなという時に、選手としてはもちろんやってきたこともないですし、トレーナーもそんなスポーツ科学部でもないからできないなと思った時に、分析は野球部時代からキャッチャーもやって、いろいろな戦略を立てていたので、面白いなと思って、アナリストやってみようって風に思ったのがきっかけですね。
ーー野球とバレーボールで戦略を立てるのってやっぱり全然違いますか
横山:そうですね。全然違います。でも、自分はキャッチャーをやってたのですが、キャッチャーとセッターは結構似てるのかなという風に思っていて。それこそセッターは5セットを通じて配球を考えるじゃないですか。野球も9イニングを通じてそのキャッチャーのリードを考えるところがあるので、ちょっと似てるなと思う部分もありますね。

対談中の横山(早大男子部アナリスト)
ーーお二人はどれくらい交流がありますか
一木 :お恥ずかしいことに、慶應バレー部が今2部に落ちてしまって。去年の春までは試合会場にいたらちょっと話すぐらいだったのですが、去年の秋からもう全く接点がなくなってしまったので…。この早慶戦でまた颯大と話せるのは少し楽しみに思ってます。すいません、2部に落ちちゃったもんで。
横山:いやいやいやいや。
ーー下の名前で呼ばれるほどには関係性はあるのですね
一木:みんな呼んでるからぐらいの感じです(笑)。
ーーお互いのイメージとか印象はあったりしますか
横山:僕からのイメージだと、まず慶應全体に言えることでもあるのですが、まず髪型が全員カチっとしてるじゃないですか。アナリストがやっぱりカチってしてるので、気合入ってるなというか、しっかりしてるなという印象を1番最初に思いましたね。
一木:去年の全日本インカレとか、全員オールバックで挑んだからね(笑)。
横山:そうそう。すごいなって(笑)。
一木:颯大はすごく後輩の面倒見がいいなというのを会場で感じていて。本当に僕は後輩への接し方が適当なので(笑)、もう適当にやってみろ!みたいな感じで、アナリストの後輩たちが勝手に育っていってるのですが、早稲田のアナリストは颯大を中心にしっかり面倒を見て、縦社会というとちょっと硬いですけど、後輩たちはその後輩の役回りをしてというようなのを会場ですごく感じていたので、そういった面倒見の良さみたいなところはあるのかなと思ってます。
横山:ありがとうございます!
ーー戦略を立てる上で大事にされていることはありますか
一木:これは慶應バレー部の特徴でもあるのですが、選手主体、学生主体でのチームというのを意識していて。戦術であったり、最近はスタメンまでアナリストや選手自身が携われるというところで裁量権が大きい中で、戦術を立てる上で特に意識しているのは、頭でっかちな戦術を立てないようにすることです。これまで、去年が特にそうだったのですが、試合に勝ちたいという、気持ちばかりが先行してしまって、チームに実行不可能な、今のチーム状況に見合っていないような戦術を立ててしまうことが多かったので、今は選手の意見も積極的に取り入れながら、チーム全体で戦術を立てるように心がけています。
横山:僕はアナリストとしてもですが、早稲田は結構「チームの4年生が」というのが結構大きくて。アナリストが出したデータを基に4年生でどうやっていくか練習メニューを決めるとか、そういう風にやっていってるのですが、特に今の時期は相手ではなくて自分たちがやりたいことをやってるのかということが根底にあった上で、その上で相手や試合に対策をしていく感じで、まず自分たちがやりたいことをやれているのかということに重きを置くようにしてますね。
ーー早稲田のやりたいバレーはどのような形なのですか
一木:これは聞いてみたい!
横山:本当に大それたことは何もしてなくて。本当に基礎基本ですからね。これは野球をやっていた時からバレーに来て1番驚いたことでもあるのですが、やっぱり強いチームというのは、当たり前のプレーを当たり前にやって、このぐらいならいいでしょという妥協をしないところが1番大切なのかなという風に僕は思います。
ーー慶應バレーのやりたい形はアナリストの立場から見ていかがですか
一木:慶應バレーのやりたい形…。ずっと掲げているのはサーブアンドブロックです。とにかく慶応はもともと守備が良いチームではないので、いかに常に自分たちが攻めて点を取るかといったところを意識しているので、サーブで攻めて、高さは関東1部にも引けを取らないぐらいの高さはあるので、ブロックで圧をかけるバレーというのは、もうここ2、3年ずっとチームとして掲げている目標なのかなという風には思います。

試合中の一木(慶大男子部アナリスト=右)
ーーアナリストは忙しいイメージがあるのですが、どのようなところが大変ですか
一木:個人的には早稲田さんとか、中央さんとかの方が忙しいのかなとは思うのですが、やっぱり他の大学に比べてアナリストの裁量が大きいというところで、他のアナリストに比べて、責任であったり、勝敗の鍵を握る部分が、慶應バレー部だと大きいのかなという風に考えています。特にリーグ期間の試合直前だったり当日は、徹夜で分析することが日常茶飯事なので、そういったところは忙しいのかなと感じます。
横山:基本的にはリーグ期間も忙しいのですが、やっぱりトーナメントが1番きついかなと感じていて。直近だと東日本インカレで、2日目にたぶんダブルヘッダーがあって、毎年そこがどっちが勝ってくるかは分からないけれど、一応対策しないといけないみたいなことがあるのでちょっと鬼門です。毎年そこは大変です。
一木:トーナメントで勝ち進んだことないからな(笑)。だいたい2回目ぐらいで負けるから次の対戦相手はここだろうなと思ってデータを収集したのが全部無駄になる。
横山:でも慶應と毎年当たるよね!
一木:毎年当たる。やめてほしい(笑)。
ーー逆に、アナリストの面白いところや魅力も教えてください
一木:アナリストの魅力、やりがいは2つあると思っています。1つ目はやっぱり、軍師ではないけれど、自分の考えた戦術がばっちりはまって、相手の攻撃を読んでブロックが決まった瞬間は、すごくアナリストとしてやってきたことが報われたと思える瞬間だと思います。2つ目は、アナリストはリーグ期間の戦術提案がメインの業務だと思われるのですが、実際は1年のうち半分は、試合がない期間で。鍛錬期になるので、そういったところで選手の自主練習であったり、課題をアナリストの目線からアプローチして、選手のスキル向上などにつながった際には、やりがいを感じられるのかなという風には思います。
横山:もうほとんど良いことを言われてしまったので、あまりないです(笑)。もちろん、自分の考えたものがバッチリはまるとか、自分の提供したデータや映像が選手の活躍に役立った時というのは、本当に面白いなと感じます。試合期ではない時の過ごし方でいうと、僕はもともとバレーをやってこなかったので、(バレー繋がりの)友達はあまりうまくできないんです。その分、バレーボール以外の生活の時の、チームの繋がりをみんなにどんどんもたらしていこうという風に活動しているので、そういう面でスタッフとしてコミュニケーションをどんどん取っていくのは面白いなと感じますね。
ーー今対戦する機会は限られてるとは思いますが、お互いに戦術面での印象はありますか
一木:早稲田のバレーは型がきっちり決まっていて、さっき颯大も自分たちがやりたいことを優先しているという話があったと思うのですが、そういったところで、どんな相手でも揺るがないバレーボールという雰囲気は対戦するたびに感じますね。こっちは割とどうにかして1点をもぎ取ってやろうみたいなバレーをしてるので、それと比べると早稲田は小細工なしに戦えるようなバレーボールをしてるなという印象があります。
横山:戦略でいうと、さっきサーブアンドブロックというのを言っていたと思うのですが、本当にサーブがもうガンガン来るので、それはちょっとやりづらいなと思います。これは戦略と少しずれるのですが、うちとやる時の慶應の気合の入り方が尋常じゃなくて!あれ、前までこんな試合してた?みたいな試合をうちにだけやってくるので、本当にそれはもう絶対に受け身にならないようにという風にみんな思っていると思います。
一木:早慶戦だけ別のチームだよね、俺ら。
横山:別とかいう次元じゃない(笑)。
ーー早慶戦での慶應の強さの秘訣は早慶戦への思いが大きいからですか
一木:そうですね。もちろんリーグであったり、入れ替え戦とか、いろいろと勝負しなければいけない場面は多いのですが、また1個早慶戦は別のベクトルだと思っています。チームでは祭りという表現をしてるのですが、もう失うものはないから全力で楽しもうというような機会で、そういうマインドの時に自分たちのチームは力を発揮すると思います。そこでライバルであり、かつ全力で楽しめる舞台というところで、早慶戦はいつも120パーセントぐらいの力を出しているのかなと思います。
ーーアナリストから見た今年度のチームの強みを教えてください
一木:去年はセッターが今までセッターを経験していない、山口(山口快人・経3=神奈川・慶應義塾)という選手がセッターをしていた部分もあって、なかなかやっぱり攻撃面でうまくいかない部分が多かったのですが、今年は付属校の慶應義塾高等学校から進学してきた、松田悠冬(商1=神奈川・慶應義塾)という、ユースにも選ばれるような、高身長のうまいセッターが入ってきてくれたので、そういった部分での攻撃であったり、やっぱり高さは今のチームの強みなのかなという風には思います。加えて、今年の春リーグ前からレシーブやつなぎを重点的に練習してきているので、早慶戦でも一球一球の粘りが発揮できればいいなという風に思います。
横山:早稲田の強みは、メンバーを見たら誰もが知ってるような人がいて、それこそあの人ベンチ入ってないの、あの子出られてないの、みたいなのがあるので、メンバーに関してはもう誰も文句を言えない状況にあって。そのメンバーたちが基本的なところを練習からやってきて、それを試合で出せている時というのは、本当にいいものがあるのではないかなという風には思いますね。
ーーこの機会にお互いに聞いてみたいことはありますか
一木:スタメン教えてほしいなとは思いますけど(笑)。
横山:スタメンか(笑)。いや、本当に申し訳ないけれど、今ちょうどオフ中なんですけれど、オフが終わったら少しだけ3年生がチームを回していく期間が始まって。だから全然何も知らないです(笑)。
ーー横山さんは一木さんに聞きたいことは
横山:あとは、結構「早慶」って言われるけれど、言われるほど早慶のバレー部で飲みに行こうぜとか、飯行こうぜって、ならないじゃん。俺は、集まりたいなって思うのよ。それこそ引退した後とかも半年に1回ぐらい集まって、近況報告みたいなことやりたいじゃん。それを慶應側はどう思っているのかなと思います。
一木 :正直、他大学との交流がある大学はすごく羨ましいなというの思っていて。慶應の体育会バレー部は付属校上がりが多くて、いろんな高校から集まってくるようなチームじゃない分、他の大学との接点っていうのがあまりないというのが特徴としてあって。颯大がよく学芸の田中夏希さん(東京学芸大学OB)とかと(試合後に)残ったりしていて、そういう、大学どうしの交流は羨ましいなと思うので、機会があったらぜひ同期を連れていくので(飲みに)行きましょう!
横山:ね!集まりたいよね。4年生だけでもいいからね。
一木:結論、羨ましいなと思ってるので(笑)、ぜひ飲みましょう。
横山:はい!
一木 :自分の中で早稲田の1つの強みとして、どんなに劣勢の場面や逆境の場面でも揺るがないバレーボールをしてるなという印象を持っていて。去年の東日本インカレとか、もう14対10で僕らが勝っていて、5セット目あと1点取れば初の東日本3回戦に行けるという時に、そこから逆転負けしまして…。チームはもうお通夜状態だったのですが、そういった、劣勢な場面でも揺るがない秘訣は何なのかなというのはちょっと聞きたいです。
横山:2つあると思ってまして。1個は、本当に僕たちが作り上げたものではなくて、今までの先輩たちが紡いできたものというのが、みんなの良い意味でのプレッシャーというか、力に変わっているというのはあると思っています。もう1個は、今は全然できていないと思いますし、去年も全然できてないことだったのですが、やっぱりバレーボール以外のところ。バレーボール選手として、バレーボールのことを一生懸命やるというのは当然だと思うのですが、それ以外の日常生活からちゃんとやってきたのというところで、それができている人たちは、これだけやってきたから大丈夫でしょという自信には繋がっているのではないかなと思います。去年はできていたか分からないですね。
ーーお二人にとっての早慶戦とはどんなものですか
一木:私自身、先ほども話しましたが、自分が体育会バレー部でアナリストを務める1つのきっかけが早慶戦だったので、見ている人たちに慶應バレーって面白いな、かっこいいなと思ってもらえるような、慶應バレーのことを好きになってもらえるような1つのきっかけになればいいなとは思ってます。
横山:早慶戦か…。僕が1年生の時に感じた早慶戦が1番印象的で。さっきもお祭りと言っていましたが、これだけ両チーム白熱するんだ、みたいな。言語化が難しいのですが、たぶん全日本インカレの決勝よりも盛り上がるのではないかというぐらいのボルテージはあると思います。でもそれはやっぱり、画面越しでももちろん分かりますが、会場に行った人はもっと分かると思うので、ぜひみんなに見てもらいたい、注目してほしい試合かなという風に思いますね。
ーー今回の早慶戦でお二人から見た注目してほしいポイントはどこですか
一木:さっき言ったように、早慶戦はお祭りで、失うものがないというメンタルで挑んでいるので、そういったところで、やっぱり早慶戦の慶応は一味違うなと思えるぐらいの、盛り上がりや迫力には、注目してもらいたいなと思います!
横山:注目してもらいたいところ…。注目してほしい選手は特にないというか、僕から優劣をつけるのもどうなのかなって思うので(笑)。いろいろな人が来ると思うので、チーム全員を見てほしいなという風に僕は思っていて。それこそアナリストの僕たちもそうですけれど。試合に出てる6人、7人がいて、それを支える下級生、1年生とかもいて、みんな一生懸命早慶戦という1つの催しのために頑張っていると思うので、それこそ試合に出ない主務の人とかも一生懸命会場を走り回ったりしていると思うので、そういうところを見て応援してくれたら、本当にみんないい尊敬戦になるんじゃないかなと思います。あと、やっぱり本当に死ぬ気で慶応がぶつかってくると思うので、それに対してこっちもぶつかりに行くので、すごいいい試合になると思います!それも見てほしいです。
ーー最後に早慶戦への意気込みをお願いします
一木:毎年早慶戦は本当に良い試合になると思っていて、今年も一泡吹かせてやろうという気持ちで挑もうと思っているので、早稲田さんは黒鷲旗と春リーグで優勝してますが、早慶戦で初の黒星をつけられたらなと思っております!
横山:僕たちはどの大会よりも1番慶應の早慶戦が怖いと思っているので、その一泡(吹かせてやるという思い)に負けないよう、百泡ぐらい吹かせてやれるように、返り討ちにしてやりたいと思います!
ーーありがとうございました!

アナリストのお仕事を連想させるポーズをしてくださりました!
【取材、写真、編集】
慶應スポーツ新聞会:長掛真依、村田理咲
早稲田スポーツ新聞会:井口そら、井口瞳、佐藤玲
◆横山颯大(よこやま・そうだい)
2003年(平15)6月18日生まれ。169センチ。役職はアナリスト。東京・早実高出身。教育学部4年。人一倍の『早稲田愛』を持ち、大学ではフィールドを野球からバレーボールへと変え4年間を部のために捧げてきた。最後の早慶戦は慶應を返り討ちにします!
◆一木脩平(いちき・しゅうへい)
2003年(平15)7月29日生まれ。171センチ。役職はアナリスト。神奈川・慶應義塾高出身。法学部法律学科4年。高校までのバレー経験と日々のデータ分析で、勝利へ貢献してきた。チームを導く強い責任感と共に、今年こそ早稲田に一矢報います。