2025年9月16日(火) 東京六大学野球秋季リーグ戦 法大4回戦 @明治神宮野球場
3試合を終えて1勝1敗1分と両校互角の戦いを演じている慶法戦。法大から3季ぶりの勝ち点獲得を目指し4回戦に臨んだ慶大だったが、先発・水野敬太(経2・札幌南)は2本の本塁打を浴びて4回途中2失点で降板。継投した中継ぎ陣も失点し、6回表終了時点で4点を追う展開に。6回裏、1年生・竹田一遥(環1・聖光学院)の安打から勢いづいた打線が3点を返して反撃が期待されたものの、8回表に3つの失策などが重なり3点を失った。その裏、渡辺憩(商2・慶應)の今季1号本塁打で1点を返すも及ばず。法大に4-7で敗れて勝ち点を落とし、4季ぶりの天皇杯獲得に向けて極めて厳しいスタートとなった。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
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法大 | 0 | 1 | 0 | 1 | 1 | 1 | 0 | 3 | 0 | 7 |
慶大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 1 | 0 | 4 |
慶大バッテリー:●水野、松井、渡辺和、外丸、小川琳ー吉開、加藤
法大バッテリー:○丸山、野崎、助川、山床ー井上和、土肥
慶大本塁打:渡辺憩1号ソロ(8回)
法大本塁打:井上和1号ソロ(2回)、今泉秀1号ソロ(4回)
◆慶大野手成績
位置 | 選手 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回 | 7回 | 8回 | 9回 |
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[5] | 渡辺憩(商2・慶應) | 遊ゴロ | ニゴロ | 死球① | 左本① | |||||
[8] | 一宮智樹(経1・八千代松陰) | 右安 | 見三振 | |||||||
H | 坪田大郎(商4・慶應) | ニゴロ① | ||||||||
R8 | 丸田湊斗(法2・慶應) | ニゴロ | ||||||||
[3]2 | 加藤右悟(環1・慶應) | 三ゴロ | 遊飛 | 四球 | 見三振 | |||||
[7] | 常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢) | 左安 | 右飛 | 遊ゴロ① | 左安 | |||||
[9] | 今津慶介(総3・旭川東) | 二併打 | ||||||||
H9 | 中塚遥翔(環2・智辯和歌山) | ニゴロ | ||||||||
H | 森村輝(総4・小山台) | 左飛 | ||||||||
1 | 外丸東眞(環4・前橋育英) | |||||||||
H | 今泉将(商4・慶應) | 空三振 | ||||||||
1 | 小川琳太郎(経4・小松) | |||||||||
[6] | 林純司(環2・報徳学園) | 三ゴロ | 遊ゴロ | 右飛 | 右飛 | |||||
[4] | 竹田一遥(環1・聖光学院) | 投ゴロ | 左安 | 中飛 | 右安 | |||||
[2] | 吉開鉄朗(商3・慶應) | 左飛 | ||||||||
H9 | 村岡龍(商3・慶應) | 死球 | 右2 | ニゴロ | ||||||
[1] | 水野敬太(経2・札幌南) | 右飛 | ||||||||
1 | 松井喜一(経2・慶應) | |||||||||
1 | 渡辺和大(商3・高松商業) | |||||||||
H3 | 上田太陽(商3・國學院久我山) | 左安 | 見三振 | 空三振 |
◆慶大投手成績
選手 | 投球回 | 打者 | 投球数 | 被安打 | 被本塁打 | 与四死球 | 三振 | 失点 | 自責点 | |
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先発 | 水野敬太(経2・札幌南) | 3 0/3 | 15 | 55 | 4 | 2 | 3 | 2 | 2 | 2 |
2 | 松井喜一(経2・慶應) | 1 2/3 | 9 | 33 | 1 | 0 | 3 | 0 | 1 | 1 |
3 | 渡辺和大(商3・高松商業) | 1 1/3 | 8 | 26 | 4 | 0 | 0 | 2 | 1 | 1 |
4 | 外丸東眞(環4・前橋育英) | 2 | 13 | 38 | 3 | 0 | 1 | 3 | 3 | 0 |
5 | 小川琳太郎(経4・小松) | 1 | 4 | 19 | 0 | 0 | 1 | 2 | 0 | 0 |
前日の3回戦は先発・渡辺和大(商3・高松商業)が好投し、一宮知樹(経1・八千代松陰)にリーグ戦初安打となる2点本塁打が飛び出すなど投打が噛み合い、今季初勝利を挙げて法大とのカードを1勝1敗1分のタイとした慶大。勝ち点獲得に向け、慶法戦2季連続となる4回戦に臨んだ。
慶大は2年生・水野がリーグ戦初先発。春のフレッシュトーナメントや夏季オープン戦で先発としての経験を積み、堀井監督も「外丸(東眞、環4・前橋育英)、渡辺(和大、商3・高松商業)に並ぶようなピッチャーになりつつある」と太鼓判を押す右腕は、リーグ戦の舞台でも試合を作る投球が出来るか。対する法大の右腕・丸山陽太(スポ4・成東)もリーグ戦初先発。ここまでの3試合はいずれもブルペンに入り、中継ぎとして好投を見せていた2投手による投げ合いとなった。

リーグ戦初先発となった水野
1回表の守り、水野は2回戦で同点適時打を放たれた1番・境亮陽(営1・大阪桐蔭)との対戦。俊足の境を塁に出したくないところだったが、カウント1ー1から中前に安打を許してしまう。しかし、続く中村騎士(営2・東邦)の打席で境の逆をつく絶妙な牽制球を送り、タッチアウト。中村騎を打ち取り2死とした後、藤森康淳(営3・天理)の左前安打、松下歩叶(営4・桐蔭学園)への死球で2死一、二塁と再びピンチを招いたが、片山悠真(文3・八王子学園八王子)に変化球を打たせて二ゴロに取り、無失点の立ち上がりを見せる。
その裏、春季から絶対的な2番打者として定着していた小原大和(環3・花巻東)がベンチを外れる中、この日「2番・中堅手」でリーグ戦初スタメンの一宮が1死から右前にポトリと落ちるチーム初安打を放つ。しかし、一宮は一塁を蹴って積極的な走塁で二塁を狙うもタッチアウト。後続も打ち取られ3人で攻撃を終える。
0ー0で迎えた2回表、1死から井上和輝(法1・駿台甲府)に外角の変化球を捉えられると、打球はバックスクリーン左横に飛び込むリーグ戦初本塁打に。1点を先制される。追い付きたい慶大はその裏、常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)が痛烈な左前安打で出塁するが、今津慶介(総3・旭川東)は二併殺打、林純司(環2・報徳学園)も三ゴロに打ち取られ、得点を挙げることができない。

反撃のきっかけとなる安打を放った打撃好調・常松
3回は両軍無得点に終わり、1点ビハインドの4回表。水野は先頭・今泉秀悟(キャリア2・石見智翠館)に速球を捉えられ、右本塁打を被弾し降板。初先発のマウンドは本塁打2発に泣く結果となった。代わって登板したのは、速球派サイドスロー・松井喜一(経2・慶應)。昨秋はリーグ戦デビューを飾るも1回2失点と辛酸を嘗める結果となったが、この日は無失点で後続を切り、反撃の流れを作る。しかし、4回裏の攻撃は1番からの好打順だったものの、丸山の力のある直球、カット・スライダー系の球種に苦しめられ、三者凡退に終わる。

今季初登板となった松井
続投した松井は5回表、1死二塁のピンチを招く。主将で4番を打つ法大の大黒柱・松下を中飛に打ち取るが、続く片山に右前への適時打を許し、痛い3点目を失ってしまう。次打者・今泉秀に四球を与え、2死一、二塁としたところで、堀井監督は前日先発した左腕エースの渡辺和をマウンドに送ることを決断。渡辺和は井上和に安打を放たれ、2死満塁とピンチを拡げると、ここで法大・大島監督も勝負に出る。8番・品川侑生(文4・三重)に代え、昨秋の首位打者かつ今春は2季連続のベストナインに輝いた熊谷陸(人2・花巻東)を打席に送った。ここで1本打たれればかなり厳しい展開となるが、渡辺和の球威が上回り、熊谷を左飛で三者残塁に封じる。

ピンチでの登板となった連投の渡辺和
流れを変えたい裏の攻め、1死から今季ここまで13打数2安打と不振の今津に代え、ベンチスタートとなっていた中塚遥翔(環2・智辯和歌山)を起用するが、二ゴロに打ち取られる。続く林純も内野ゴロに終わり、5回終了。打線は2回途中から11人連続で抑えられ、出塁は散発2安打のみと丸山攻略の糸口が掴めない。また、投手陣は2本塁打含む6本の被安打、6つの四死球を与えるなど守備の時間が長く、完全な法大ペースで試合を折り返す。
回を跨いだ渡辺和は6回表、3本の単打で1死満塁、打席に松下を迎える絶体絶命のピンチを迎える。カウント1ー1から捉えられ、打球は中堅・一宮が捕球するも、三走がタッチアップから生還。犠飛で1点を失い、0ー4と4点差をつけられた。
雲行きが怪しくなってきた6回裏、先頭・竹田一が追い込まれてから左前に安打を放つと、法大は早くも投手を交代。丸山に代わり、1回戦・2回戦でも中継ぎ登板し力投を見せたエース格の左腕・野崎慎裕(営4・県岐阜商)がマウンドに上がる。一方の慶大は、ここまでの3試合1人でマスクを被り続けた吉開鉄朗(商3・慶應)に代打・村岡龍(商3・慶應)を起用すると、村岡は死球で出塁。さらに渡辺和の代打・上田太陽(商3・國學院久我山)が三遊間を抜ける安打を放ち、無死満塁、一発出れば同点という絶好機を作る。ここで法大はまたしても継投。右腕・助川太志(グローバル3・茗溪学園)にマウンドを託すが、1ボールから抜けた球が打者・渡辺憩のユニフォームを掠め、押し出し死球で1点を返すと、なおも無死満塁。一気に逆転を狙う慶大は一宮に代え、坪田大郎(商4・慶應)を今季初打席に送る。坪田は追い込まれてから高いバウンドの二ゴロを放ち、4ー6と渡る間に三走が生還し2点差に。続く加藤右悟(環1・慶應)が四球を選び、1死満塁というチャンスで絶好調の常松はカウント1ー2から引っ掛けて遊撃へのゴロ、二塁はアウトになるも三走が還り、3ー4と1点差まで追い上げる。小刻みな継投を続ける法大は、1回戦で7回1死まで完全投球を見せた左腕・山床志郎(文2・高鍋)を登板させると、慶大も右の代打の切り札・森村輝(総4・小山台)のカードを切るが、森村は惜しくも左飛。追い付くことは出来なかったものの、試合の流れが変わり始める。

渡辺和の代打起用に安打で応えた上田
7回表、2回戦で先発するも6失点(自責5)と精彩を欠いた右腕エースの外丸東眞(環4・前橋育英)がマウンドへ。外丸は先頭に内野安打で出塁を許すも、神宮で初めてマスクを被る加藤との絶妙なコンビネーションで後続を断ち、無失点に抑える。主将の好投でさらに活気付いた慶大はその裏、2死から村岡があわや本塁打という右翼フェンス直撃の二塁打を放ち、一打同点のチャンスを作ると、前の打席で安打を放った上田が打席に。しかし、ここは山床に翻弄されて見逃し三振に倒れた。

同点機の足掛かりを作った村岡
8回表、内野安打と失策で2死一、三塁とピンチを作った外丸は、片山に右翼手の頭上を越える適時二塁打を放たれ、3ー5。重い1点がスコアボードに刻まれる。さらに、立て続けに失策が生まれて2点を追加され、3ー7。4点差と窮地に追い込まれる。その裏、表の守備で2失策とミスが出た渡辺憩が左翼席に名誉挽回となる今季1号の本塁打を放ち、1点を返して9回に突入する。

2回3失点(自責0)という内容だった外丸

渡辺憩の今季1号で3点差に接近
これ以上失点出来ない9回表、3連投中、今季ここまで計5回1/3を投げ無失点とフル回転の右腕・小川琳太郎(経4・小松)が登板。2死一塁から松下を前の試合に続き三球三振に打ち取るなど好投し、無失点で切り抜ける。

慶大唯一の4連投も無失点に抑えた小川琳
3点を追いかける9回裏、1死から竹田一がこの日2安打目を放ち出塁するも、続く村岡は変化球を引っ掛けて二塁へのゴロ、4−6−3の併殺打で試合終了かと思われたが、堀井監督は一塁アウトの判定に対しビデオ検証を要求。審判団の確認の結果、判定が覆りセーフに。首の皮が一枚繋がったが、最後は上田が空振り三振に倒れて試合終了。4ー7で敗れ、是が非でも欲しかった法大からの勝ち点を逃した。結果的には8回の3失策絡みの3失点が尾を引いたが、投手陣は2本塁打含む被安打12、与四死球は8を数える厳しい結果に。打線は6回に同点の好機を作ったものの活かしきれず、反撃は及ばなかった。
4試合を通じて、打線のつながりを見せた慶大。春から主軸を打つ常松を中心に、打力を活かすため捕手から三塁に転向した渡辺憩、捕手に定着し全試合スタメンマスクの吉開も結果を残し、また加藤や竹田一、一宮といった1年生の台頭も今後に向け大きな収穫となった。一方、春から大きく陣容の変わった内野陣は守備でのミスも目立ち、勝敗に直結するようなプレーも出ている。また、今津&小原の1・2番コンビは春から夏にかけて固定されていたが、今津は不調、小原は3回戦で途中交代すると、4回戦はベンチを外れるなど不安が残る状況に。

この日の3打席目で四球を選び、吠えた加藤

2戦連続先発出場し、攻守で結果を残した竹田一

この日リーグ戦初スタメンで1安打を放った一宮
投げては小川琳ら中継ぎ陣が安定感を発揮し、ラストシーズンにしてリーグ戦デビューを果たした坂中大貴(商4・高松商業)も3試合に登板し無失点と躍動している。一方で、先発の外丸、渡辺和、また先発候補の水野も本来の投球が出来ない場面があり、次のカード以降に大きな課題を残す結果となった。3回戦のように先発が試合を作れば、圧勝出来るだけの打力は持ち合わせている現状。野手陣の勢いと中継ぎ陣の安定感を維持し、先発陣が本来の投球を取り戻して、”チーム外丸”の有終の美を飾りたい。

前日の3回戦まで3連投し無失点継続中の坂中
慶大の次節は9月27日(土)から、春季2位・明大とのカードを戦う。明大相手には直近3季いずれもストレートで勝ち点を落としているだけに、厳しい戦いとなりそうだ。それでも4季ぶりの天皇杯獲得に向け、1試合も負けられない戦いが続く。
(記事:柄澤晃希、写真:奈須龍成、河合亜采子、加藤由衣)