【ソッカー(男子)】早慶定期戦特集第3弾! 鴻巣良真インタビュー

ソッカー

7月7日(土)、等々力陸上競技場にて“第69回サッカー早慶定期戦~早慶クラシコ~”が開催される。早慶のプライドがぶつかり合う特別な一戦。ケイスポでは、7年ぶりの定期戦勝利を目指すソッカー部の選手・スタッフたちに意気込みをうかがった。

第3弾は、鴻巣良真(総4・国学院久我山)選手のインタビューをお届けする。守備陣の大黒柱として絶大な存在感を放つ鴻巣だが、早慶戦への出場はこれまで1度もない。下積み時代から貫いた彼の信念、そして最初で最後の早慶戦となるであろうこの大舞台に懸ける思いとは――。

(取材日:6月15日)

 

正直相手のFWの誰にも負けてない

――まず今季ここまでを振り返っていただけますか

守り切るところを守り切るとか、決め切るところを決め切るとか、そういった最後の部分が今の慶應に一番欠けているところで、だから結果が出ていないのかなと思います。


――
チームの雰囲気の面はいかがですか

雰囲気は悪くはないです。負けてても、切り替えて次頑張ろうっていう雰囲気がすごくあるので、そこはすごく良いと思ってます。俺は結構1回負けるとすごく気持ち的に落ちちゃう、引きずっちゃう人なんですよ。なのでそういった面ではすごく味方に助けられてるなと思います。


――
順位だけ見ると、開幕前に思い描いていたような成績ではないですよね

そうですね。本当はもっと上に行きたかったですけど、これが今の我々の力だし、それは1回認めないといけないと思います。


――
開幕2試合で7失点したこともあって総失点は多いですが、徐々に守備は良くなってきていますよね

最初の2試合は俺はケガで出てなくて、外で見ていてすごくやられてるなと思っていて、まあ自分が出た試合も中央に3点、立教に2点、関東学院に2点取られたり、それも結構連続で失点したりしてるので、悔しいですね、正直。去年も連続失点が多かったんですけど、今年もその現状をなかなか変えられてないなって。試合を続けていく中でちょっとずつ改善はできてきているので、これからももっと細かいところを詰めていかなきゃいけないなって思ってます。


――
ここ3試合(第7節から第9節)負けがなく、失点も少なくなっているのはポジティブな面ですか

そうですね。ポジティブですね今のところ。


――
個人的に今季一番印象に残っている試合はどの試合ですか

俺的には立教(第6節・立教大戦)かなと。すごく勢いがあって、5連勝してて、俺らとやった時に、どうしても止められなくて…。俺の中でモチベーションは相当高かったんですけど。それから個人的にも、それまでケガが怖くて、あまり自分なりのプレーができていなかったんですけど、立教戦でようやくコンディションが上がってきて、自分なりのプレーっていうのを出せるようになってきて、正直早々に失点して苦しい試合だったんですけど、個人的には分岐点となった試合と言うか、個人としてはパフォーマンスを上げていくきっかけになった試合でした。


――
立大のFWは強力でしたが、やり合えた手応えがあったと

FW陣とやれたっていうのもそうですし、ビルドアップとか攻撃の面でも、自分がやりたいことをみんなと共有して、それを攻撃につなげることができたのがすごく良かったかなと思います。あの試合は。


――
そして鴻巣選手個人のコンディションも上がってきたと

上がってきましたね。あの試合から徐々に徐々に。足の具合も良くなってきて、どんどんコンディションが良くなってると思います。


――
今季見ていて、鴻巣選手個人としては、2部のアタッカーに対して能力で負けていることはほとんどなかったように感じました

鴻巣の存在感は2部では圧倒的だ

 

そうですね。個人的には正直相手のFWの誰にも負けてないかなと。そこは自信を持っていい部分かな。去年の1部のイメージがすごくあって、三笘薫(筑波大)にチンチンにやられたんですよ。悔しくて悔しくて(笑)。そのイメージが今でも強いですね。だから2部では絶対に負けられないっていう強いプライドを持ってます。選手として。

――チーム全体を見つめる冷静さも一番持っているように見えます

その役割は意識してますね。自分が守備陣のトップであって、自分の考えのもとに守備陣を動かしているんですよね。自分のやりたいようにやらせてもらっている。それを前にも伝えて、前に行きやすいタイミングで(プレスに)行かせる、そして自分たちがボールを奪う。だから自分だけじゃなくてみんなの状態とかも考えてやらなきゃいけないと。去年とかは自分も正直勢いだけでやっていて、それでもまあ悪くはなかったんですけど、今年に入ってそういった冷静さというか、客観的にチームの状態を見られるようになったのは、選手として成長できたと思います。

 

悔しくて悔しくて、逆のことをやりました

――今でこそ不動の存在の鴻巣選手ですが、2年生までは溝渕雄志選手(環卒・現ジェフユナイテッド千葉)ら守備陣の黄金世代に阻まれて、なかなか出場機会がありませんでした

本当に1年生2年生の時は全く試合に出れなくて本当にキツくて…。言わばトップチームの底辺ですよね。トップにはいるけどベンチにも入れない。で、サブ組の試合があったとしても、自分は良い意味ではオールラウンダーなんですよ。どこでもできるんです。ただ、悪く言うと特長がないんですよね。だからサブ組のチームを作るときに、サイドハーフが空いてたら俺がサイドハーフになっちゃうんですよ。サイドバックでも左が空いてたら左、ボランチが空いてたらボランチに行っちゃうんです。どうにか須田さん(須田芳正前監督)にアピールして試合に出なきゃいけないのに、全然やったこともない左ハーフとかボランチとかで、できちゃうんですけどアピールはできないんですよ。それがすごくキツくて。1、2年生の時は本当にサッカー人生で一番キツかったですね。全く試合に出られない。須田さんにも全く認められない。(本職だった)右サイドバックや他の最終ラインの自分のポジションには絶対的な4人がいる。出られる気配が全くない。初めて「俺、4年間試合出られないかも」っていう挫折を味わったかなと思います。

――自身を「特長がない選手」とおっしゃいましたが、それを改善しようと努めたのですか?

弱点をなくす作業を続けた結果、今の鴻巣がある

いや、須田さんは全ての選手に「ストロングポイントを作れ。強みを伸ばせ」とずっと言っていたんですけど、俺の中では、「強みがない人はどうやっても強みを作れない」と思っていて、俺の中では自分の良さっていうのは逆に“弱みが少ない”ことなんです。だったら能力値の五角形を平均的に大きく大きくしていったら、俺はもっと良い選手になれるんじゃないかと思って。基本的に俺がやってきたことは常に自分の弱みを消すっていう作業です。それが今に生きてるのかなとは思っていて、そういう作業をやってきて良かったなって今では思います。

――「強みを作れ」という監督の指導とは逆のことをやったわけですね

俺は逆のことをやりましたね。「それじゃ俺はミゾくん(溝渕)に勝てない」と思って、悔しくて悔しくて、逆のことをやりました(笑)。

――そして昨季、3年生になってようやく守備陣の中心格になったわけですが、チームは思うような成績を残せませんでした。昨季の1年間はいかがでしたか?

チーム全体が一体じゃなかったというか…「全員でやろう」っていうのが口だけだったかな。だから試合中も崩壊してしまうし、それを何試合も改善できないっていうことになって…。苦しかったですね。個人的には、試合に出れるようになって、「俺は全然やれている。関東リーグでやれるんだ」っていう自信はつきました。個人としてはすごく良い1年を過ごさせてもらったと思ってます。チームがすごく苦しい状態にあるっていう状況も経験できて、結果的に(2部に)落ちちゃったんですけど、サッカー人生の中でも貴重な経験をさせてもらったなと。

――成長したと?

本当に1、2年生のころは、3年生で得た立場なんて考えられなくて、「自分は関東リーグで活躍できるのか?」という疑問のもとトレーニングしてたんですけど、3年になって一気に「俺は全然やれる」と、「他の選手に負けてない」と、それが証明できた。それが自信になって、さらに成長にもつながったかなと本当に思います。良い経験でしたね。

――昨季からチームに欠かせない存在になった一方で、ケガで戦線を離れることが少し多いイメージもあります

いや本当に…、原因がいまいちよく分からなくて、最近までもずっと肉離れが多くて、色々なトレーニングを積んでそれは改善しようとしてるんですけど。筋肉系のケガが多くて、一気にスピードをガッと上げた時とかにビキッってなったり…情けないですよね。

――昔からケガは多いですか?

いや、中学、高校では1回もケガしたことなくて。で、自分の中での分析の結果、体重がちょっと重くなったのと、自分の筋力が上がったことで、その馬力に俺の身体がついてこれなくなったんじゃないかって。わかんないですけどね(笑)。

――筋力は付いたんですね

付けたんですけど、それが良い方向に進んでるのかはまだちょっと疑問です。今は73、4kgぐらいあるんですけど、高校時代は俺はずっと69kgぐらいで、サイドバックでギュンギュンに走ってたんですよ。それが大学入って全然走れなくなって。筋力付けて体重を増やしたからなのか…。良くなかったわけじゃないですけど、そういう面もケガにつながってるのかなと。

――逆に考えると、少し体格が大きくなったことが、サイドバックからセンターバックへの配置転換にうまく働いたのでは?

センターバックになって、サイドバックの時とはやることが全く違うんですね。だからセンターバックで戦えるような体作りはもちろんしたし、1対1の対応とか守備のやり方も全く違うんですよ。それも結構苦労した部分というか、体作りの部分でも苦労しましたね。

――ソッカー部入部以降のすべての試合の中で、一番印象に残っているのはどの試合ですか?

(昨季の)専修戦かな。自分が点を決めて勝った試合が一番ですね。あの試合ってただ自分が決めて勝っただけじゃなくて、今まで自分が苦しんでいた姿を、同期が見ていて、後輩が見ていて、そして3年生で試合に出られるようになって決勝点を決めて、「自分はやれるんだ」っていうのをチームメイト全員に証明できたっていう、自分の中では一番分岐点になった試合ですね。すごく嬉しくて…自分のやってきたことは間違いじゃなかったって証明がみんなにできたっていうのが、大学入って以降一番嬉しかったかな。

――昔サイドバックだった経験というのは、今センターバックでのプレーに生きている部分もありますか?

高校生の時は本当に攻撃的なサイドバックの選手だったんですけど、「自分がサイドバックとしていつどのタイミングでボールをもらいたいのか」とか、「こういう時にセンターバックのカバーがいてくれると助かるんだよなあ」とか、そういうのを理解した上でできるようになってますね。サイドバック以外にも色々なポジションを経験したことで、色々なポジションの特性や役割を理解してるので、どういった時にボールが欲しいのか、いらないとか、自分の中では理解してるつもりです。その経験っていうのは自分の中ではスキルアップにつながっているなと思います。

――その経験はチーム全体を見る能力にも結びついているのでは?

めっちゃ役に立ってます。本当に左サイドハーフとかやってたんで(笑)。試合中、監督とかコーチはピッチ内のことって気付けないことも多いんですけど、例えば、慶應のサイドハーフってめちゃくちゃ(体力的に)キツいんですよ。それを経験して知ってるから、例えば裏に出すより後ろでボール回して時間を作ってやろうとか、そういった前の選手への心配りとかは、色々なポジションを経験したからできるのかなと思ってます。

――色々なポジションをやっていた中で、最終的にセンターバックに定着したきっかけは何だったんですか?

確かセンターバックがみんなケガでいなくなったんですよ。1人しかいなくなっちゃって、もう俺が出るしかないって感じで出たら、須田さんにハマッたみたいな(笑)。


――
じゃあ最初はそれも「できるから」だったんですね

できるからってことですね。逆に「もうお前しか残ってない」みたいな。で、出てみたらすごく良くて、須田さんにもそれからずっと信頼してもらって、という感じでしたね。

自分のサッカー人生のラストを早慶戦の勝利で締め括りたい


――
早慶定期戦についてお聞きします。これまでの3回の定期戦を振り返ってみていかがですか?

1年の時は上から、2年の時はベンチ、3年も上から見てて…なんか、情けない。ピッチに出てない俺が言うのもあれなんですけど、情けないなと。同じ相手にこう何年も勝てないっていう情けなさ。しかも圧倒的にやられてる。ひどいやられ方で、情けなかったですね。


――
特に昨年は本来スタメンのところを負傷欠場。そして1-5の惨敗を喫しました

早稲田に知り合いがすごくいっぱいいて、そいつらから「慶應弱くね」とか、そういう言葉を色々な人から言われたんですね、俺。それが一番ムカついて。でも認めざるを得ないんですけど、情けなくて、試合に出れない自分も情けなくて、本当に去年の夏っていうのは、ストレスが溜まると言うか、ムカついてましたね、めちゃくちゃ。


――
鴻巣選手にとって早慶定期戦とはどのようなものですか?

うーん…早慶定期戦とは…。


――
そこまで特別な思い入れはないですか?

鴻巣の定期戦へのモチベーションはMAXだ

正直言って俺は早慶戦に憧れてたわけじゃなくて、大学サッカーの関東リーグで活躍するというのが俺の中での絶対だったんです。正直早慶戦はただの祭だと思ってたんですね。最初は全然興味なかったんですけど、ただ、マネージャーだったり、同期の主務だったり副務だったり、多くの人が関わって作り上げられているということが、今までは知ってた風だったんですけど、今年やっぱりそういったものを身近に感じるようになって、そういう人たちが最後終わって笑ってる姿を見たいと。それが一番強いです。今までは終わって泣いてる選手がいて、集合して、みんな下向いてるんです。そういったことしか味わってないので、笑って終われるような早慶戦にしたいっていうのが一番です。で、早慶戦って俺にとって何かって言うと……サッカー人生最後の……壁?なんて言うんだろう(笑)。もうあと5ヶ月ぐらいしかサッカーやらないんですけど、自分のサッカー人生の中で、高校時代はそれなりに活躍して国立にも立って、色々なピッチに立って自信も付けてきたんですけど、早慶戦に全く勝てなくて、6連敗してる相手に勝ったらどれだけ楽しいか。(早稲田には)同期に有名人が、プロに行く人がいて、友達もいっぱいいて、そういう人たちに勝ったらどれだけ楽しいかっていう。それだけで俺のモチベーションMAXですよ。自分のサッカー人生のラストを早慶戦の勝利で締め括りたい。それが強いですね。


――
今年の早稲田は強いですよね

うーん、強いですね。どいつもこいつもうまいし強いし速いし。下馬評で言ったら確実にうちが負けると。まあそれでいいですよ。俺も正直簡単に勝てる相手だとは思ってないんで、全然いいんですけど。ただそういったものを覆すってのが、一番楽しいですよね(笑)。俺はそれが一番楽しみですね。どんなに泥臭くても、1点取って勝てばいいですよ。


――
守備陣の頑張りは本当にポイントになってくると思いますが、自信はありますか?

自信ありますって言った方が良いと思うんですけど、自信ないです(笑)。自分の能力は自分が一番知ってるんで。自分が個人で相馬勇紀を、岡田を、武田を止められるかって言ったら、正直個人では止められない。だからDF4人はもちろんボランチやサイドハーフも上手く使って、無失点で守り切る、というのを目標にやりたいですね。正直言って自信ないです。


――
たくさんの観客が集まりますが、ここを見て欲しいっていうところはありますか?

俺は、鴻巣良真はこういうプレーが得意だっていうのは正直ないんで、試合を見に来てくれた方々が、鴻巣良真の15年間のサッカー人生をピッチ内の俺を見て感じてくれたら、それだけで嬉しいです。自分の成長とか、そういったものを見てくれるのが一番嬉しいですね。それで勝てたら最高です。


――
最後に早慶定期戦に向けて意気込みをお願いします!

自分は1回も早慶戦のピッチに立ったことがないので、そういう意味でのフレッシュさと、あとは4年としての意地、慶應のプライド、1選手としてのプライドを持って、必ず勝ちたいです。

(取材:桑原大樹 写真:髙橋春乃)

鴻巣良真(こうのす・りょうま)

国学院久我山高を経て、総合政策学部4年。ポジションはDF。スピードとフィジカルを兼ね備えた万能型センターバックで、空中戦、対人守備の強さは他の追随を許さない。ハートの強さもピカイチで、最終ラインからチームを鼓舞する。

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