7月7日(土)、等々力陸上競技場にて“第69回サッカー早慶定期戦~早慶クラシコ~”が開催される。早慶のプライドがぶつかり合う特別な一戦。ケイスポでは、7年ぶりの定期戦勝利を目指すソッカー部の選手・スタッフたちに意気込みをうかがった。
第10弾は、松木駿之介(総4・青森山田)主将のインタビューをお届けする。満を持して臨んだラストシーズンに待っていた苦難。松木は現状をどう受け止めているのか。そして、最後の大舞台、早慶定期戦で見たい景色があった。
(取材日:6月22日)
僕は背中で見せなきゃいけない
――今季を振り返っていただけますか?
主将としても、10番を背負っている身としても、情けない前期だったと思いますし、チームを勝たせることができなかったというのが自己評価です。
――開幕前思い描いていた成績ではないですよね
シーズン前は本当に良い準備ができていたと思っていたし、今もそう思っています。筑波と練習試合をして勝つことができたり、本当にチームも1つになっていた中で、開幕戦を落としてしまって、そこから「もう負けられない」っていうメンタルの部分で意識しすぎてしまって、みんなが硬くなってしまったかなと思います。
――個人としても、ここまで9試合で2得点というのは納得していないと思います
全く納得できないですね。本当にみんなから期待されていたと思いますし、試合をやっていてもチャンスは自分のところにたくさん来ていた中で、決め切ることができなかった。すごく責任を感じているし、後期は自分次第だなと思ってるんで、そこは本当に強い責任感を持ちながら挑みたいと思っています。
――第3節・青学大戦で2得点、チームも初勝利を挙げて波に乗るかと思いましたが
自分としても青学戦でようやく点を取ることができて、チームも勝ててこの調子でいきたいなと思っていたんですけど、なかなか波に乗ることができずにパフォーマンスも落としていって、スタメンを外れることもありましたし、僕の考える主将としては、もちろん試合に出なくても存在感のある主将はいますけど、僕は背中で見せなきゃいけないって思ってるんで、90分ピッチに立っている存在にならなきゃいけないと。それがまだできていない、ピッチに立ち続けてチームを勝たせる存在になれていないっていうのは自分でも感じてますし、それができないと、同期が僕を主将に推してくれた期待にも応えることができていないと思うので、そこは本当に後期やっていかないと、みんなを裏切ることになるんで、頑張っていきたいと思います。
――スタメンを外れた時はどんな気持ちでしたか?
仕方ないなっていう気持ちもありましたし、素直にそれだけまだ信用を勝ち取れてないんだっていうのは受け止めることができたので、良い時間にはできたかなと思います。
――ここ4試合負けなしというのはポジティブな結果ですか?
失点が圧倒的に少なくなったのはポジティブに捉えられるかなと思います。ただその中でやっぱり下位のチーム相手に勝ち切ることができなかった、勝ち点を積み重ねられなかったっていうのは後期にも響くと思いますし、後期にもっと楽に入っていきたかったというのはあります。ラスト1試合、去年一緒に2部に落ちた日体大とやれて、そこと早慶戦、アミノバイタルときっかけにできる時間があるんで、そこで良い時間を過ごして、後期は爆発的に、全勝する勢いでやっていかなきゃいけないと思います。周りはみんな「慶應終わったな」っていう目で見てると思いますけど、僕は諦めないですし、諦めちゃいけないと自分にも言い聞かせてます。本当に数字的に可能性がなくなるまでは奇跡を信じてやっていきたいと思います。高校時代にも、高円宮プレミアリーグで前期1勝しかできなかったんですけど、インターハイでベスト4まで行って自信を持てたのをきっかけにして、後期は1敗しかしなかったんです。たぶん後期だけなら1位か2位の成績を収められた経験があるので、僕はまだここから自分次第で変えられると思ってるので、自分を信じてやっていきたいと思います
――冨田賢監督も「きっかけ1つで変わるだろう」とおっしゃっていました
学生スポーツなので、基本的にどのチームもそんなに差はないと思っていて、今上位にいる中央、立教、日体とかもこれから厳しくなってくるだろうし、その時に俺らが追い上げて最後までプレッシャーをかけ続けられれば、去年も中央が前期たくさん取りこぼした中で最後まで早稲田と国士舘にプレッシャーをかけ続けてあと一歩のところまでいったのも見てきたので、諦めずに上位にプレッシャーをかけ続けてなきゃいけないと思います。
――今季個人的に一番印象に残っている試合はどの試合ですか?
開幕戦(第1節・立正大戦)ですね。自信を持って入って、前半立ち上がりも良くて先制点を取ることができて、さあここからだというところで1失点してしまってから、チームを立て直すことができなかった。これまでのサッカー人生でこんなにも難しいゲーム展開はなかったというくらい、自分の中では印象に残っている試合です。
――その思わぬ躓きで気持ちが落ちてしまった部分もありますか?
もちろん立正はシステムも3バックで試合前から難しいゲームになるなとは感じていたんですけど、自分たちも本当に自信を持ってシーズンに入ることができていたので、それだけダメージは大きかったです。
今こうして万全な状態でサッカーができているのはすごく幸せなこと
――慶大に入学してからの約3年半は振り返ってみていかがですか?
本当に先輩方に感謝しなくちゃいけないっていうのは感じていて、先輩方と一緒に良い成績を残せたからこそ僕も夢を叶えることができたし、やっぱり僕も、後輩たちにもプロを目指している人がたくさんいるんで、そういう人たちにチャンスを与えなきゃいけないっていうのは、先輩方にやってもらった分やらなきゃいけないと思ってるんで、なんとか後輩たちに良い舞台を残してあげたいなと思って今シーズンやってます。仮に今シーズン上がれなかったとしても、今の状態から何かを変えて、何かきっかけを持って勝つ組織になれた時は、来年にもつながると思うし、それを全力で追い求めていかなきゃいけないと思ってます。
――ここ2年ほどは、悔しいことの方が多いですか?
そうですね。僕が1年生の時は本当にすべてがうまくいって、チームも優勝争いしてましたし僕自身も新人賞を頂けて、ゴールもたくさん取れて本当にサッカーが楽しいシーズンでした。それからはもう残留争い、そして去年降格してしまって、なかなか勝つ感覚がないんで、やっぱり勝ってなきゃ面白くないし、もっともっと勝ってみんなで喜びたいです。
――昨季はケガで長期離脱を経験しましたが、自分がトップフォームに戻ってこれるのかという不安は感じましたか?
もうずっとありましたね。リハビリをしていた中で何をしてもうまくいかなくて、「ずっとこの膝の状態を抱えていくのかな」という不安もありましたし、もちろん1年間出なかったので技術的にも差をつけられてしまう不安もありました。ただ今こうして万全な状態でサッカーができているのはすごく幸せなことだし、その中でパフォーマンスがまだまだ戻せていないというのは自分の責任だと思います。そこはまだ努力が足りてない、もっともっと努力しなきゃと思ってます。
――離脱期間にやっていたことは何ですか?
トレーナーの三浦さんと、一緒に膝をケガしていた佐藤海徳(政3・桐光学園)と一緒に体作りをやってきて、本当に今、体の基盤の部分はできてきていると思うし、ベストな体重とかはまだまだ探っている状態なので、そこが見つかれば一気に変われると思うし、もっともっと動ける体を作らなきゃいけないと思います。あの時やったことは絶対無駄じゃなかったと思っていて、それをどう生かすかはこれからだと思うんで、ベストなコンディショニングを早く見つけようと今は取り組んでいます。僕は今ちょっと体重つけすぎかなと思っていて、まだまだ探っている状態ですけどそこがフィットすれば本当に変わってくると思うので、もっともっと体に柔軟性を持って、強く柔らかい体を作っていきたいです。
――この春、来季のファジアーノ岡山入団が内定したときはどんな気持ちでしたか?
これだけケガでやってなかった中で、それでも僕を見ていてくれた唯一のクラブで、オファーをしていただけたというのは本当に感謝していますし、このクラブのためにサッカーを懸けたいという思いが素直に出てきました。岡山のサポーターの方々も、今の慶應での結果を気にかけてくれている方々もたくさんいますし、まだまだ良いニュースを届けられていないので、もっともっと期待していただけるように結果を出さなきゃいけないって感じてます。
下手であっても人を感動させることはできる
――過去3回の早慶定期戦を振り返ってみていかがですか?
僕がピッチに立てたのは2年生の時の1回だけなんですけど、そこで負けた時の印象がすごく大きくて、勝った早稲田の主将が、今横浜FCにいる新井純平さんなんですけど、ボロ泣きしてて、それだけ早慶戦に懸ける思いって強いんだなと思いました。僕がこうして4年生になって主将の立場になって、こみ上げてくるものはそれだけ大きくなってきてるし、仲間と一緒に喜びを爆発させたいという思いがあります。これまで勝った景色を見られていないので、それを全部員で見たいという思いはすごく強いです。
――その2年前の試合では、前半に松木選手にヘディングの決定機がありました。あのシーンは振り返ってみていかがですか?
あれは本当に自分の良いところが出て、ゴール前に入っていってGKの前で触ることができたんですけど、あそこで決められないのがあの時の自分であって、やっぱりそこから成長した姿を見せなきゃいけないし、あの時は早稲田相手に自分が勝たせる力はなかったけど、今年は自分が決めて勝たせたいという思いが強いし責任もあるんで。みんなが本当に運営とか準備を頑張ってくれて、ああいった観客がたくさん集まるピッチでやれることに感謝して、その感謝の気持ちをピッチで表現できるように。よくトミケンさん(冨田賢監督)が言うんですけど、「ピッチで生き様が出る」と。本当に自分の生き様というのはピッチで出ると思いますし、自分のこれまでやってきたことや思いをピッチに出して、見ている人が何か心を打たれるような、そんなプレーをしたいなと思います。
――ピッチで見せたい松木選手の生き様というのはどんなものですか?
自分はうまくないんで、泥臭くひたむきにやる姿です。下手であっても人を感動させることはできると思いますし、僕はそこにプライドを持ってサッカー人生15年以上やってきたので、下手でもこれだけ人を感動させることができるんだっていうのを、色々な人に見せたいと思います。
――昨年の惨敗は振り返っていかがですか?
すべてにおいて早稲田に負けていたと思います。セカンドボールでも勝てない、空中戦でも勝てないとなれば当然ああいう結果になりますし、早稲田の強い気持ちがスタンドの僕にも伝わってきたので、やっぱり慶應はその早稲田の気迫に負けちゃいけないと思いますし、これまでOBの方々が作り上げてくれた歴史と伝統があるので、本当にプライドと責任感を持って早稲田をぶっ潰しにいかなきゃいけないと思ってます。
――2年次まではリーグ戦でも早稲田と対戦していましたが、リーグ戦も含めてすべての早慶戦で最も印象に残っているのはどの試合ですか?
1年後期のリーグ戦ですね。優勝争いをしてた時です。上位の直接対決で早稲田に負けて、残り3節で順位がひっくり返ってそのまま早稲田が優勝してっていうゲームだったんで、本当に悔しかったし、その日が自分の誕生日で、ゴールも決めることができて、それでも早稲田に勝てなかったっていうのが印象に残ってます。
――リーグ戦を含めてもやっぱり悔しい思いの方が強く残っていますか?
そうですね。2年の時はリーグ戦では早稲田に全部勝って、でもそっちよりも負けた時の印象の方が強く残ってるんで、やっぱりそれだけ早稲田相手には悔しい思いをしてきているし、もう早稲田とやれる機会はきっと定期戦だけだと思うんで、そこにすべてをぶつけて、終わり良ければすべて良しと、最後早稲田に勝って卒業できたら、「俺たちは早稲田に勝った」と、そういう気持ちになれると思うんで、最後だからこそこれまで以上に特別な思いがあります。
――今年の早稲田は強いです
そうですね。もうこのままリーグ全部勝ってくれと思ってます。もう今首位独走状態ですけど、それは僕にとってすごく刺激になってますし、その早稲田を早慶戦の舞台でぶっ潰すっていうのが、どれほど気持ち良いものなのかと思ってるので、首位独走しててくれて嬉しいって言ったら変ですけど、そんな感情があります。
――ぶっ潰す機会、早慶定期戦は楽しみですか?
楽しみでしかないですね。これだけリーグ戦で結果が出せなかったので、きっかけを作るのはここしかないと思いますし、逆にここで勝ったらチームがどう変わるかっていうのは僕も想像つかないぐらいのものがあると思うんで、今年で一番大事なゲームになるんじゃないかなと思ってます。
――勝機を見出だすためには何が必要ですか?
僕のゴールだと僕は思ってます。僕が点を取れば本当にチームが盛り上がると思いますし、みんなもそれを求めてくれていると思うんで、その期待に答えなくちゃいけない。じゃないと僕が主将になった意味もないし、10番を背負わせてもらった責任も果たせないので、自分が勝たせるという気持ちは常に持っていたいです。ただ、その中でもサッカーは1人じゃなくチームでやるものなので、チームでどう戦うのかっていうのはしっかり準備していかなきゃいけないと思うんで、そこは自信を持ってぶつかっていけるように準備していきたいと思います。
――ゴールで等々力を沸かせるイメージはできていますか?
等々力って自分の中で大きなゲームがいくつかあって、2年生の時に立った早慶戦はもちろんですし、高校の時、1つ上の代で出場した選手権でピッチに立てなかった、すごく悔しい思いをした場所でもあるし、全日本大学選抜の日韓戦で活躍できた場所でもあるし、色々な経験をしてきたスタジアムで、良いイメージも悪いイメージもたくさんあります。良いイメージを持って試合に入れるように、やっぱり自信っていうのは日々の練習や過ごし方から出てくるものだと思うので、自分に絶対的な自信を持ってピッチに立てるように、やっぱり準備が大切かなと思います。
――観客の皆さんに見て欲しいところはどこですか?
早慶戦に懸ける思いっていうのはピッチで表現したいと思ってるんで、そこは見てもらいたいというか、伝わるように僕たちがやらなくちゃいけないと思ってます。見てもらいたいところとしては、サッカーももちろんなんですけど、学生主体となって運営してああいう舞台を作り上げてくれている仲間の部員がいて、サッカーだけじゃなくて楽しめるところっていうのはたくさんあると思いますし、大学サッカーの今後の立ち位置というか、可能性を感じてもらいたいなと。早稲田と慶應の学生で、これだけの舞台が作れる。だからもっと大学サッカーはやれることがあるっていうのを、示せる場だと思っていて、このために尽力してくれている仲間がいるので、そういった姿は感じてもらいたいですね。
――最後に早慶定期戦に向けて意気込みをお願いします!
やっぱり僕は1度も勝ったことがなくて、勝ってどんな景色が見れるのかっていうのが想像つかないので、勝って部員全員でその景色を見たいなっていうのが一番大きなモチベーションです。それから、トミケンさんが監督になって初年度の定期戦なので、トミケンさんからしても僕たちはたぶん特別な代になると思うし、その1年目の早慶戦も絶対印象に残るものになると思うので、トミケンさんを勝たせてあげられるように、一緒に勝てるようにと思ってます。
(取材:桑原大樹 写真:髙橋春乃)
松木駿之介(まつき・しゅんのすけ)
青森山田高を経て、総合政策学部4年。ポジションはFW。抜群の身体能力と得点感覚で攻撃をけん引する慶大のエース。強い責任感で人望は厚く、今季主将を務める。慶大卒業後はJ2・ファジアーノ岡山に入団することが内定している。