7月7日(土)、等々力陸上競技場にて“第69回サッカー早慶定期戦~早慶クラシコ~”が開催される。早慶のプライドがぶつかり合う特別な一戦。ケイスポでは、7年ぶりの定期戦勝利を目指すソッカー部の選手・スタッフたちに意気込みをうかがった。
第6弾は、佐藤海徳(政3・桐光学園)選手のインタビューをお届けする。昨季はケガで長期離脱を余儀なくされた佐藤。しかし復帰した今季はここまで右サイドバックの主力として活躍し、セットプレーのキッカーも務めている。クールな攻撃的サイドバックがその内側に秘めた思いに迫った。
(取材日:6月20日)
――まずは今季ここまでを振り返ってもらえますか?
そうですね……。監督が代わってみんな新鮮な気持ちで新チームに入れて、競争も激しくできていたと思っていたんですけど、実際に関東リーグが始まってみたらその競争のレベルが他のチームと比べてやっぱり低かったのかなと思って、もっと練習のレベルを高いものにしないといけないなというふうに今は思っています。
――当初思い描いていた順位ではないですよね
そうですね。最低でも3位とかには入っていなくてはいけなかったかなと思ってます。でもまだ目標は変えていないですし、まずは日体に勝つだけです。
――佐藤選手自身はシーズン初めから監督の信頼を勝ち取りスタメン出場を続けていましたが、個人としての出来はどのように感じていますか?
開幕戦は出ていないんですけど、その前の週に天皇杯予選(東洋大戦)がありまして、そこで指をケガして開幕戦に出られなくて、そこからちょっと調子はあまり良くなかったんですけど、でもだんだん試合を重ねるごとに自分の中でも調子が良くなってきていて、っていうときにまたケガをして、なのでまたゼロから、個人的にはやっていきたいなと思います。
――天皇杯予選の東洋大戦で今季のチーム公式戦初得点を挙げましたが、あの場面はその後のリーグ戦に向けて良い自信になりましたか?
そうですね。自分の中で前期の目標を立てていて、それが3ゴール7アシストだったんですけど、その中で点を決められたということで今年はいけるんじゃないかと思っていて、攻撃参加も結構ありましたし自信もあったんですけど、まあなかなかできていないという現状ですね。
――リーグ戦では攻撃の部分はあまり出せていなかったですか?
はい。その攻撃の部分でだんだん良くなってきていたと思っていたんですけど、まだ出せていないですね。
――守備の面はどうですか?
守備の面では結構トミケンさん(冨田賢監督)に「抜かれるな」とか「クロスを上げさせるな」というふうに言われていて、なのでまだ足りていないですね。
――監督から結構言われているんですか?
はい。まだ要求されているレベルにはないと思っています。
――今季ここまでで印象に残っている試合はどの試合ですか?
立教戦(第6節)ですね。なんでかっていうと、ここで勝たないと結構厳しい状況になるというところで、しかも相手のキャプテンの井上瑠寧選手が自分の先輩で、桐光で一緒で結構仲が良かったので、そこには絶対に負けたくないという気持ちで試合に入って、で最後同点に追いつけるところだったんですけど、だからまあ印象に残っていますね。
――もう少しで追いつけた悔しい試合だったと
はい。あそこは勝ちたかったですね。
今ではあの期間があって良かったと思える
――昨季はケガで長期離脱をされましたが、どのような期間でしたか?
新チームが始まってすぐにケガをしてしまって、当時の監督の須田さん(須田芳正前監督)と話をして、ここは2年生だし、しっかり治して運良く間に合えばリーグ戦の終盤に出てもらえればいいからというふうに言われていて、自分も色々な人と、お世話になっていたコーチの人と話をして、ここは頑張り時だなという話をして、トレーナーの三浦(哲哉)さんと長い間トレーニングをさせてもらって、そこで強くなるぞというふうに思ってリハビリをやっていました。
――大きいケガだということが分かった時はどのように思いましたか?
落ち込みましたね、最初は。でも手術した後からはもう前向きに。昔お世話になったコーチに、「乗り越えられるやつにしかそういう壁は現れない」というふうに言われて結構元気をもらえたというか、それをいつも思ってやっています。
――自分がトップフォームに戻ってこれるのかという不安はなかったですか?
感じませんでしたね。何なら自分は何でもできると思っていて、その体の面でも色々改造ができていて、だからもうやれる気しかしていなかったですね。
――逆にそこで体を鍛えることができたと
――具体的にはどのようなことをしてきましたか?
可動域を広げることですかね。自分がプレーする幅というか、自分がボールを奪おうと思える距離をなるべく広くするとか、パスを拾うときになるべく届くとかそういうところを、本当に最初はストレッチで広げたりとかそういうことですかね。
――プレーに復帰してからその成果は感じてられていますか?
そうですね。疲れがない体になったというふうに感じています。
――佐藤選手は1年生の頃からセットプレーのキッカーを任されていますが、右足でのキックには自信がありますか?
はい。そこを逆に自分の長所にしていかないと、自分にはあまり特長がないので、そういうところで違いを見せられたらいいなと思っていて、まあ練習は結構しましたね。特に今年に入る時は結構練習したんですけど、結果が出ていないですね。
――満足できる数字は出ていないと
はい。それも課題です。
――立教戦のアシストは手応えがありましたか?
あの試合は結構前半から何本もFKとかもチャンスになっていて、ハーフタイムの時にセットプレーで1本いこうということをチームでも話していて、それであそこで決められたというのは良かったと思います。
――理想のサイドバック像があったら教えて下さい
プレー的には誰かと自分が似ているということはないと思うんですけど、一番参考にしているのは内田篤人選手です。内田篤人選手を一番参考にしているというのは、どこにパスを出すとかクロスをいつ上げるとかそういうのではなくて、動きの面で素晴らしいなと思います。
――先ほどは自身を特長のない選手だとおっしゃっていましたが、弱点のようなものはありますか
スピードがないことですね。やっぱりプロの選手を見てもスピードがある選手じゃないと活躍していないなと思っていて、なのでそこは弱点かなと思います。ただ弱点ですけどそこはカバーできると思います。読みとか予測とかで、そこは自分のポジショニングとかを伸ばしていければ大丈夫です。
――以前はボランチもやっていたと聞きましたが
1年の前期もずっとボランチをやらせてもらっていて、多分スピードがないからその分中で守備のところでボールを奪ったりというところを期待されていたんですけど、ボールロストとかも多くてあまりうまくはまっていないなというのがあったのでサイドバックになりました。
――自分でもあまりうまくいっていないという感じはありましたか?
はい。高校の3年まではトップ下をやっていて全然できると思っていたんですけど、大学に入って身長もでかくなって、まあシンプルに言えば下手になったという感じですかね(笑)。それまでは小さくて逆にサイドバックとかをできるような体格ではなかったので、テクニック系だったんですよね。
――サイドバックとしては今でもテクニックがある選手ではないですか?
サイドバックとしてはですね。ボランチの選手の方が全然うまいと思います。
――その経験というのは生きていますか?
そうですね。今サイドバックをやれているのもその経験があったからかなと思います。やっぱりスピードがないとサイドバックはダメと言われていますけど、判断とかは昔の経験が生きているんじゃないかなと思います。
感謝の気持ちをプレーで表現したい
――ここからは早慶定期戦についてお聞きします。これまで2回定期戦を見てきましたが、振り返っていかがですか?
悔しい思いしかしていないですね。1年の時は早慶戦の決起会で指名されてみんなの前で話したんですけど、そこで「なんで自分が選ばれないのか分からない」って言って、「出る人は責任を持って戦って欲しい」って1年ながらに言ったんですけど、それは悔しかったですし、2年目はケガで全然出られないという状況で当日は試合も見られないほど色々仕事があって、まあ悔しかったですね。
――1年の時は自分が出ても良いくらいの自信があったと
はい。
――1-5で惨敗した昨年の試合はいかがでしたか?
みんなめちゃくちゃ頑張っていたとは思うんですけど、なんか準備の差というか純粋にサッカーの質の差が出たかなというふうに思います。
――もし自分が出ていたら何かできたかもという気持ちはありますか?
もちろん何か違いを見せることができる自信はあります。
――早大に対する印象はいかがですか?
印象は、新チームになった時に1回早稲田とやらせてもらって、その時に勝ててそんなに強くないなって正直思っていたんですけど、実際結果見て、あとはリサーチの人が撮ってくれた映像とかを見るとやっぱり徹底されているというのがすごくあると思います。守備の時に特に徹底して全員で守るときは守るし、でクリアだけじゃなくてそこからシュートまで持っていっちゃうっていうその強さは結構手強いなと思います。
――戦い方が共有されていると?
はい。実際共有されているし、個もそれに伴うくらい高いなって思いました。
――個の強い早大攻撃陣に守備陣全体でどのように対応していきたいと考えていますか?
そうですね、個で止めるのが理想ですけど、手強いので1人抜かれたらしっかりカバーに入るとか、組織でバックライン4人とキーパーとで一つにならないと本当に手強い相手だなと思います。
――セットプレーも重要になってくると思います
そうですね。早慶戦の注目してほしいところみたいなアンケートがこの前あって、それに「慶應のセットプレー魂」って書いたんですけど、そのセットプレーのところで結果が出せたらなと思います。
――中で合わせる選手は誰を信頼していますか?
えっと……(岩崎)湧治(商4・ベガルタ仙台ユース)くんですね。あと、ピーダーセン(世穏=経3・FCトリプレッタユース)。
――リーグ戦ではその2人にアシストをしていますよね
そうですね。練習とかでも結構湧治くんは決めてくれますし、ピーダーも強いので。でも結構みんな強いですよ。
――それでは最後に定期戦に向けての意気込みをお願いします!
やっぱり他のリーグ戦と違って1万人を超える人たちが見に来てくださいますし、応援してくれて、特別な試合のために準備してくださるマネージャーさんと他の選手たちとあとリサーチの人、すべての人に感謝の気持ちをプレーで表現したいです。
(取材:桑原大樹 写真:髙橋春乃)
佐藤海徳(さとう・みとく)
桐光学園高を経て、法学部政治学科3年。ポジションは右サイドバック。正確な右足のキックでサイドからチャンスを演出する攻撃的サイドバック。どんな時も物怖じしないメンタルの強さも魅力だ。