迎えた今季最終戦。慶大はピーダーセン世穏のヘッドで幸先良く先制したものの、試合をコントロールできず、30分に同点、49分には逆転される苦しい展開に。終盤に入り、3人の4年生を投入して執念を見せると、89分、途中出場の小谷春日(環4・藤枝東)が起死回生の同点弾。2-2の引き分けに終わり、勝利で有終の美を飾ることはできなかったものの、見ごたえある好ゲームを披露して今季を終えた。
第92回関東大学サッカーリーグ戦 第22節 vs神奈川大学
2018/11/24(土)11:30KO@柏の葉公園総合競技場
【スコア】
慶應義塾大学2―2神奈川大学
【得点者】
1-0 7分 ピーダーセン世穏(慶應義塾大学)
1-1 30分 金澤蓮(神奈川大学)
1-2 49分 西川公基(神奈川大学)
2-2 89分 小谷春日(慶應義塾大学)
◇慶大出場選手
GK藤川誠人(総4・桐蔭学園) |
DF佐藤海徳(政3・桐光学園) |
DF鴻巣良真(総4・国学院久我山) |
DF野村京平(総3・国学院久我山) |
DF 中島玲央(総4・柏レイソルU-18) |
MF 増田皓夫(商4・桐蔭学園) |
MF八田和己(総3・桐蔭学園)→86分 岩崎湧治(商4・ベガルタ仙台ユース) |
MF橋本健人(総1・横浜FCユース)→59分 小谷春日(環4・藤枝東) |
MF多嶋田雅司(商3・国学院久我山)→73分 堤惠杜(商4・清水東) |
FWピーダーセン世穏(経3・FCトリプレッタ) |
4年生の引退試合となった最終節・神奈川大戦。試合前には、スタンドの応援団が塾歌を響かせた。やることは「ベストゲームをしよう」(冨田賢監督)ということだけだ。負傷中の主将・松木駿之介(総4・青森山田)もベンチに入って見守る中、最後の舞台が幕を開けた。
試合の入りは慶大が伸び伸びとしたプレーを披露した。7分に早くも試合が動く。ピーダーセン世穏(経3・FCトリプレッタ)がペナルティエリア前でタメを作り、右サイドに上がってきて佐藤海徳(政3・桐光学園)へパス。佐藤がダイレクトでクロスを上げると、中で動き直していたピーダーセンがヘディングで叩き込み先制点を挙げた。勢いに乗って畳みかけたい慶大だが、2部残留が懸かった神奈川大の気迫に押されたか、20分過ぎからは徐々にトーンダウン。そして30分、中央にスルーパスを通され、GKとの1対1を決められて追いつかれてしまった。慶大は直後の32分、ペナルティエリア前から橋本健人(総1・横浜FCユース)が左足を振り抜いたが、シュートはクロスバーの上へ。これ以降は効果的な攻撃を見せられず、1-1で前半を終えた。
後半、先手を取ったのは神奈川大。49分、左サイドの裏を取られ深くまで侵入を許すと、折り返しに中で合わせられ、逆転を許してしまった。慶大はすぐに反撃に転じ、51分、53分とピーダーセンがシュートを放ったものの、枠を捉えられず。その後は試合が落ち着き、両チームなかなかチャンスを生み出せない状況が続く。慶大は小谷春日(環4・藤枝東)、堤惠杜(商4・清水東)と攻撃的なカードを切り、86分には岩崎湧治(商4・ベガルタ仙台ユース)副将を送り込んで、メンバー入りした4年生7人全員がピッチに立った。なんとか1点を――。思いは89分に実を結ぶ。増田皓夫(商4・桐蔭学園)からのパスを岩崎が触り、ボールはペナルティエリア内の小谷へ。コントロールから左足を振り抜くと、渾身のシュートがネットに突き刺さった。最後の最後に、4年生がつないで決めた同点弾。小谷はユニフォームを脱いで真っ先にベンチの松木主将のもとへ駆け寄り、抱き合った。その後、終了間際に大ピンチを迎えたものの、GK・藤川誠人(総4・桐蔭学園)がビッグセーブで救う。勝ち越し点は生まれず、2-2の引き分けに終わった。
慶大の最終順位は7位となった。1部昇格を絶対目標としていた以上、結果に満足している者はいないだろう。しかし、後期の11試合で彼らが見せたパフォーマンスは素晴らしかった。敗れたのは昇格を決めた中央大、立正大の2チームとの対戦のみで、最後は7試合負けなし。特に守備の安定は、後期の最少失点チーム(9失点)であるというデータが明確に示している。「みんなが折れないで、どうやったらチームが良くなるか考え続けた」(冨田監督)。今季、あるいは選手たちは昨季からだろうか、苦しみ続けながらも少しずつ積み上げたものは、確かに結果に表れた。
毎年秋、ソッカー部のHPで全4年生部員によるリレーブログが掲載されている(http://keio-soccer.com/official-blog/39025.html)。そこでは、入学前に思い描いていた理想とは違った4年間を過ごしたことを、赤裸々に語っている選手たちも多い。そしてこの日、4年間のラストシーンとなった小谷のゴールを、松木主将、岩崎副将はともに「報われた」と表現した。数多くの挫折と苦しみを越えて、最後の試合を終えた彼らの表情は、勝利を飾れなかった少しの悔しさと、それ以上の晴れやかさに満ちていた。笑顔の終幕。4年間、ソッカー部で戦い続けて、最後の試合の89分に生まれた小谷のゴールは、彼らにとって「一生忘れられない」(岩崎)ゴールになった。
(記事:桑原大樹 写真:髙橋春乃、室留裕介)
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試合後コメント
冨田賢監督
最後は本当にベストゲームをしようと言っていた中で、最後小谷が決めて、もちろん勝ちたかったけど、向こうも最後残留が懸かってた中で必死に戦って、素晴らしい戦いをして、その中で最後決めて、来年に繋がるゴール、試合だったんじゃないかなと思います。
――ビハインドの展開で4年生を3人投入して、彼らが結果を出した
4年間彼らが培ってきたものを、3年生以下が感じ取ってくれたらいいなと思って送り出しました。
――今シーズンを振り返って
本当に苦しいスタートで、そこからみんなが折れないで、どうやったらチームが良くなるかっていうのを考え続けた結果、ちょっとずつだけどチームとして良くなってきて、チームとしての基盤みたいなものができた1年だったと思います。本当に一生懸命やってくれた選手たち、それから社会人スタッフに感謝ですね。また来年、さらに飛躍できるようにと思います。
――開幕前に、「開幕戦より最終戦でより良いサッカーを」と仰っていたが
本当にそういう意味では、今日も立ち上がりすごくうまく入って、その後苦しくなった中で取り返せたっていう、それも途中出場で出た4年生が結果を出したっていうのは、素晴らしい。本当にみんな苦しんだけど、4年生はそれが絶対これからの人生の自信になると思います。
――応援しているファンの方々へ一言
本当にありがたいですね。今日も見に来てくださったり、熱く応援してくれる方々がいて僕らが戦えてるって本当に思ってるので、その人たちに「今日の試合見れてよかったな」と思って頂けるようなゲームを続けていけるように、頑張っていきたいと思います。
松木駿之介(総4・青森山田)主将
最後の大学サッカーの試合だったので、出たかったっていう気持ちがあった中で、でも外から見て最後ああやって小谷がゴールを決めてくれたことで、すごく今シーズン苦しかったですけど、報われた気持ちになりました。
――主将としてソッカー部を牽引した今シーズンを振り返って
何度振り返っても苦しくて悔しいシーズンではありましたけど、今年のこのシーズンの経験を通して後輩たちが来シーズン昇格してくれれば僕たちは報われると思うので、後輩たちには僕たちの思いも背負って頑張って欲しいです。
――ソッカー部で過ごした4年間を振り返って
本当に成長させてもらえた4年間だったと心の底から思っています。いろんな指導者にも出会いましたし、仲間も先輩から後輩まで、自分が今までに出会ってこなかったようなバックグラウンドを持った選手もいた中で、すごく人間関係っていうのは個人的に難しいところがありましたけど、その中でいろんなことをみんなから学べて、本当に成長につながる4年間だったなと振り返って思います。
――来年からはファジアーノ岡山の選手としてプロのキャリアがスタートする
ずっとプロを一緒に目指してやって来た小谷であったり、湧治であったり、誠人であったり、彼らの夢の分まで自分はプレーしないといけないなっていう責任を、今日の試合を見ててすごく感じましたし、彼らが松木と一緒にやってたんだって自慢できるような選手になれるように頑張りたいと思っています。
――応援しているファンの方々へ一言
本当に自分だけでは夢も叶えることはできなかったし、慶應でこれだけ素敵な4年間を過ごすことはできなかったので、本当に支えてくれた全ての方に感謝しています。ありがとうございました。
岩崎湧治(商4・ベガルタ仙台ユース)副将
今日は自分にとっては最後の試合ですし、チームとしても今季最後だったので、絶対最後笑って終わりたいなという思いがあって、その中で最後、一年苦しんだ春日が最後に決めるっていうのが、今年一年を表しているようで嬉しかったです。
――途中出場でアシスト。あのシーンを振り返って
皓夫のパスが速かったので僕は反応するだけで、ちょっと軌道をずらせば何かが起きるかなっていうような気持ちだったんですけど、それが春日のもとに渡って、春日が決めてくれて。個人的に春日とはすごく仲が良くて、一昨日の練習の最後に、春日がCKを蹴って、僕がヘディングでゴールを決めたんです。僕はそのゴールがあって今日試合に出れたというのもあって、今日は逆というか、それはすごく嬉しかったです。
――副将として送った今シーズンを振り返って
自分が試合に出れなかったり、けがをしたり、チームにあんまり貢献できなくてすごく迷惑をかけてしまったんですけど、本当にみんながそれぞれの立場でもがいていて、苦しんでいて、それが最後にこうやって、少しずつですけど、勝利だったり、今日みたいに負けないっていうところに結びついていると思います。自分たちが成し遂げられなかったことはいっぱいあって、1部昇格もそうですし、総理大臣杯で全国に行きたかったですし、そういったことは全部後輩たちに引き継ぐしかないので、この流れのまま来年、強い代なので、やってくれると思います。
――ソッカー部で過ごした4年間を振り返って
多分色々な人がそうだと思うんですけど、今までのサッカー人生で一番きつい4年間でした。今までの挫折が挫折じゃなかったと思えるくらい、たくさんの困難と挫折があって、でもそれがあったからこそ見えてくるものがあって、自分で言えば東海大戦(第13節)のゴールだったり、去年の残留争いの中での東洋大戦でのゴールだったり、そして今日の試合だったり、厳しい状況の中でもそれが報われた瞬間っていうのは一生忘れられなくて、それでみんなと喜びを分かちあっている瞬間とか写真っていうのは何にも代えがたいものだと思うので、それは本当に良い4年間だったなと思います。
――応援しているファンの方々へ一言
今日応援してくれた部員のみんなは、自分が出たいっていう気持ちだったり、昨日までベンチ入り、スタメンを懸けた争いをしていたり、様々なものがあって、そういったものを全て押し殺して応援してくれていて、自分が試合に出たことで喜んでくれる同期、後輩、仲間がいて、そして保護者の方々がいて、こうやって慶應を応援してくれる方々がいて、挙げ切れないくらい多くの人たちの支えと思いがあって自分たちがピッチに立てていると思うので、本当にこう引退を目前にすると、ただ「感謝」っていう一言じゃなくて、それが身に染みて分かるというか、本当にひとりひとりにありがとうございますと伝えたいです。
鴻巣良真(総4・国学院久我山)ゲームキャプテン
負けゲームを引き分けにできたりとか、引き分けのゲームを勝ちゲームにできるっていう意味では、今の慶應にやっぱり力がなかったっていうのを感じさせられたような、今の慶應を表しているようなゲームだったのかなと思いました。
――今シーズンを振り返って
やっぱりその前期なかなか勝てなくて苦しんだんですけど、そこでやっぱりもっと自分個人で何かできたんじゃないかなという思いはありますね。
――ソッカー部で過ごした4年間を振り返って
今まで高校時代とかはずっと試合に出てきた人間だったので、初めて自分よりも確実にうまい選手が自分のポジションにいて、その人をどう追い抜くかって考えて過ごした2年間と、試合に出始めて降格を経験した3年生の1年間と、昇格を目指した1年間っていうのはすごく今までじゃ味わえなかったような経験を、この4年間で過ごさせてもらったかなと思います。
――応援しているファンの方々へ一言
結果でやっぱり応援してくれた人に恩返ししたかったんですけど、なかなかそういう形の恩返しができなかったのですごい非常に悔しい気持ちでいっぱいなんですけど、自分のプレーを見て何か感じてくれるところがあったらすごい嬉しいなと思います。本当にありがとうございましたと伝えたいです。
小谷春日(環4・藤枝東)
本当に最後の試合だったので、頑張るだけでした。
――途中出場からの劇的なゴールシーンを振り返って
結構あれは4年生がつないでくれたボールだったので、最後ゴールにつながってよかったなと思います。
――今シーズンを振り返って
前期とか苦しいシーズンで、その中で昇格も最後なくなっちゃってモチベーションの維持だったり自分がどういうことをやればいいかっていうのにすごい悩んだ時期があったんですけど、最後本当に同点という形ですけど、自分のゴールで終われたっていうのは嬉しかったなって思います。
――ソッカー部で過ごした4年間を振り返って
ブログを書く機会がありましてそれにも結構書いたんですけど、本当に自分にとって初めての挫折だったり苦しいっていうことがすごい多くて、その中で本当に社会に出るにあたって良い経験ができたかなと思います。
――応援しているファンの方々へ一言
社会人になってもぐんぐん前に進みます。
藤川誠人(総4・桐蔭学園)
本当に勝ちたかったですけど、最後春日が点取って引き分けにしてくれたんで、それは良かったなと思います。
――終盤はビッグセーブでピンチを救った
父が先日他界して、生前に「最終節出るよ」って言ってて、もう喋れない状態でしたけど意識はあって「うん、うん」って頷いていたので、知ってくれている状態で亡くなって、その父の思いとかも背負って今日はピッチに立ったので、そういったことも影響して止められたのかなと思います。
――今シーズンを振り返って
苦しいことの方が多かったですけど、最後は7試合負けなしのチームになりましたし、そういった意味では4年生として何かひとつでも残すことができたのかなと思います。
――ソッカー部で過ごした4年間を振り返って
僕自身は1年の時一番下のチームだったり、指導者の方とぶつかったりつらいことは色々あったんですけど、それを乗り越えて最終節にこうやって170人を代表してピッチに出ることができたっていうのは、本当に自分が腐らずにやり続けた結果だと思います。
――応援しているファンの方々へ一言
本当に苦しい思いの中で、僕たちに最大限の応援をしてくれて、感謝してます。ありがとうございます。
増田皓夫(商4・桐蔭学園)
神大側がボランチのところに前にくることが分かっていたのでFWに良いボールを当ててボランチが前に行くのか、僕たちのところに引きつけてはがしていくのかというところを狙ってたんですけど、前半後半通じてそういう形を作ることができなくて2-2という結果になりました。
――今シーズンを振り返って
昇格したいという気持ちが強かったんですけど、2連勝した後に僕が遅刻をして、その後にチームが2連敗をしてしまって、本当に申し訳ない気持ちがありました。でも、どうしても来年に繋げたいという気持ちで今までやってきたので、その気持ちを3年生以下の後輩たちが少しでも汲み取ってくれたら嬉しいと思います。
――ソッカー部で過ごした4年間を振り返って
僕は一般受験で慶應に入ったんですけど、1軍の人たちはスポーツ推薦だったり上手い選手が多くて、その中で試合に出るためにはコツコツ自分ができることをやらないと結果は見えませんでした。部員が180人いる中で正直試合に出るのは14、5人なので、部員のみんなは今いる現状を見つめて目の前のことに取り組んで欲しいです。
――応援しているファンの方々へ一言
応援してくださる人たちが原動力で、勝つことでその人たちを笑顔にしたいというのが僕の思いでここまで来ることができました。今までありがとうございましたという言葉だけを伝えたいです。
中島玲央(総4・柏レイソルU-18)
最初は良い形で得点できました。その後に自分のサイドで失点をしてしまって、これが最後の試合なので何とかもう1点取れるようなチャンスを作れればいいなと思って後半は臨みました。
――今シーズンを振り返って
開幕から4試合くらいは出場したんですけど全然上手くいかなくて、チームも降格圏になるかもという状態で、自分もなかなか出場できない時期もありました。それでもそこで腐らずに、松木を中心とした4年生が頑張ってくれて後期はうまく立ち直ることができて、見違えるほど良くなりました。運良く残留も決まって、残りは最後のサッカー人生をかけたプレーができたのかなと思います。
――ソッカー部で過ごした4年間を振り返って
1年生からずっと上のチームに上がらせて頂いたんですけど、3年間で全く出ることができませんでした。その分4年生で監督が変わり試合に出られるようになって、本当に続けてきて良かったと思います。諦めなかった結果が今の自分の立場につながっていると感じてます。本当に貴重な4年間でした。
――応援しているファンの方々へ一言
本当に苦しい時もそうでない時も変わらず厳しくも温かい応援をしてくださり、それが自分の原動力になりましたし、結果として今のチームの順位に繋がりました。温かい応援ありがとうございました。
堤惠杜(商4・清水東)
1対2っていう後半の状況になって、負けてるか同点の場面の時に出るっていうのは言われていたので準備はしてました。ただ、振り返ってみると個人的には良いパフォーマンスではなかったです。
――今シーズンを振り返って
今シーズンは残り6節になってから初めてトップチームに上がって、そういう中で懸ける思いは強かったです。関東リーグで点を取ろう、そして最後くらいチームに貢献できたらいいなという気持ちで臨んでました。
――ソッカー部で過ごした4年間を振り返って
本当にあっという間でした。最後に試合に出ることができて嬉しい反面、もっと試合に出たかったという気持ちが今残ってます。
――応援しているファンの方々へ一言
声援が本当に力になって、こんなに応援されるということがありがたいことなんだって感じました。本当にありがとうございました。
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