【away プロジェクト】スポーツ×ジェンダー 女性の生理について可視化する

大学関連

慶應義塾大学SFCの東海林祐子研究会に所属するジェンダー班は、スポーツとジェンダーに関するイベントの開催、SNSの発信を行う「away プロジェクト」を2022年に発足させた。

「away プロジェクト」は慶應義塾大学日吉キャンパスにて「スポーツと生理を可視化するイベント」を下記の通り開催する。

日時:2025年3月17日(月)、18日(火) 

   13時から17時

場所:慶應義塾大学日吉キャンパス・独立館D203

 

発足

スポーツとは本来ジェンダー、年齢、宗教、社会的な背景から解放されるものであるが、体育会は勝利を目指す厳しい体制の中で、特にマイノリティである女性や生理当事者は重苦しく感じることがある。

「away プロジェクト」はこのような重苦しさからの解放を目指し、慶應義塾大学の体育会生を中心にスポーツにおけるジェンダーの課題について話し合い、大学内で様々な取り組みを行っている。

メンバーは、慶應義塾大学SFC東海林祐子研究会のジェンダー班に所属する学生で構成されている。学部生時代に空手部に所属し、ジェンダー班を立ち上げた田野恵都(修士2・東京女学館)さん、バドミントン部に所属する駒井琴羽(総3・西武台千葉)さん、競走部に所属する倉田紗優加(環2・伊那北)さんの3人である。

(左上)倉田さん(右上)田野さん    (下)駒井さん

田野さんは、体育会空手部で競技に取り組んでいた。女子部員が3割程度と少ない中、女子更衣室で生理について話し合うことはあったが、女子更衣室を出た瞬間にその話が一切出なかったことに違和感を抱いていた。現在、活動のメインとして発信している生理は本来は当たり前のものであるにも関わらず、そのように捉えられていない面があるという。

「もしも男性にも生理が来ていたら、スポーツにおいても生理はこんなにタブーなものじゃなかったのではないか」と考え、生理当事者がよりスポーツにポジティブに取り組んでいけるような活動が必要だと考えるようになった。

より、多様な人たちにスポーツを楽しんでもらえる環境づくりを目指してジェンダー班、「away プロジェクト」を発足した。

駒井さんは、田野さんが修士研究で体育会に生理用品を設置する実験を通してジェンダー班の「away プロジェクト」を知った。駒井さん自身、生理痛を理由に部活を欠席することはできず、生理痛がひどい時は痛み止めを飲んで練習に参加してきたという。バドミントン部は男女一緒に練習している。女子部員間でさえ生理に限らず、精神的・身体的なコンディションについての相談ができないことに悩みを抱えていた。ジェンダー班チームの話を聞くうちに同じ悩みを共有し、体育会の横のつながりを広げたいと思い、参加した。

倉田さんが所属する競走部は部員150名中約30名ほどしか女子部員がおらず、どこかで女子の居づらさを感じていたと語る。実際に倉田さんが入部した当初は同期に女子部員が8人いたが、1人が退部し、4人が休部を経験するという事態に直面した。「同じ組織の人間として何かできないか」と考えていた時に田野さんが立ち上げた「away プロジェクト」を知り、自分自身が女性の悩みについて理解を深め、悩んでいる人たちに寄り添える人間になりたいと思い参加した。

 

開催背景・目的

「生理について可視化する」ことによって生理を当たり前のものにできる機会を設けたいという思いで今回のイベントを企画した。例えば、女子アスリートは生理用品の貸し借りを隠れて行うことが多い。生理はスポーツのコンディショニングに影響を与えるが、ケガとは違って相談しにくいところがある。ウェアに漏れたり、休憩時間がなく、トイレに行けないなどスポーツにおいて無いものとされている。

田野さんが一部の体育会に生理用品を設置してインタビューを行い、どのような変化があったか調査したところ、女子部員間で生理について対話する機会が非常に少なかったという。女子の体育会では、全員が生理当事者であるからこそ「みんなが我慢しているから私も我慢しなければ」と思う人が多かった。対話し、共感すると多くの部員から「楽になった」、「ポジティブになった」という声が集まった。

そこで先輩・後輩という縦の関係で話すことが難しいのであれば、他の体育会との横のつながりでお互いの生理について知り、共感して対話できる場所づくりをしたいと思い、企画した。

 

イベント内容

イベントでは普段は見えづらい生理を「当たり前」とし、生理やジェンダーにまつわる課題について共感と対話を生み出すきっかけをつくれる内容を企画している。

展示内容イメージ

 

展示エリアでは大学体育会生における生理に関する調査や実態をポスターなどで発表する。生理の様々なコントロール方法を知れる・もらえるエリアでは、給水ショーツや月経カップなど生理を楽に対処できるアイテムを展示する。さらに、サントリーmenphysが提供するPMSをサポートするドリンクの配布を行う。また、他社のプロテインやアスリートに特化したサプリメントの展示や、実際に体育会に配布した生理用品を手に取ることができる。生理自体の症状が改善されなくても、精神的に楽になれるよう生理についての共有・対話を促すエリアも設けられている。

博物館や美術館の展覧会のような形式で展示を見て、最後にお互いに話し合い、感想を共有できる。さらに、アイテムをもらえるスペースがあり、部活の練習の帰りに気軽に立ち寄れるよう工夫している。

会場イメージ

展望

以前、田野さんは体育会に所属する女子アスリートを対象にどのような悩みを抱いているのかについて調査したところ、生理以外に関して悩みを抱いている人が多かった。そのため、今後は生理以外をトピックにしたイベントを開催していきたいと考えているという。

「away プロジェクト」の公式インスタグラム(@_awayproject)では女性がよりよく生きていけるような情報を投稿している。「発信だけでなく、双方向のコミュニケーションも重要である」と考えており、女子アスリートの方々がどのようなことに悩んでいるのかを知る対話の機会を検討している。

今回のイベントで「体育会に所属する女子アスリートの第二の居場所になる」ことを目指している。イベントでは同じ悩みを持つ仲間がいることを知り、悩みの相談や解決策の共有をすることができる。「第二の居場所」になることで女子アスリートが周りに惑わされずに自分らしく生きていけるきっかけになるだろう。

(取材・記事:檜森海希、吹山航生)

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