【競走】「ラスト200mに懸ける1年間」記憶が飛ぶほどの極限に興奮と喜びを求めて・市村瞭太郎(後編)/関東インカレ直前インタビュー2026・第1弾

競走

開催が目前に迫った第105回関東学生陸上競技対校選手権大会(関東インカレ)。今大会、チームが掲げる目標は「1部残留」だ。昨年死守したこの地位を今年も守りきることができるか。この大舞台で1点でも多く掴み取るために部員たちは全てを懸けてピークをここに持ってきた。

本企画では、今年の関東インカレで活躍が期待される選手、関東インカレを支えるサポートブロックの部員に、意気込みや目標についてのインタビューを行った。第1弾は、中距離ブロック長、市村瞭太郎(経3・慶應志木)選手!

 

 
 
——2年次に大きく飛躍された要因はどこにあったと感じていますか?

1年の冬季に、高校時代とは比較にならないくらいの距離を踏んで、自分なりに試行錯誤した結果だと思います。あとは、前年に強い先輩方が引退された中で「自分が(関東インカレの)A標準を切らなきゃ、誰も出られなくなる。これはやばい」って思って。「春の1試合目で絶対に切るんだ」と自分を律してやった結果、(1分)52秒台まで出すことができました。そこから自信もついてきて、練習の水準も上がって、トントン拍子に記録が出ていった感じです

 

——今シーズンに向けて、集中的に取り組まれた練習はありますか?

さらに距離を踏むことです。1年の時にやったベースアップをさらに引き上げて、今は副将の成沢さんにメニューを立ててもらって、それをひたすらガムシャラにやっています。一番大きく変わったのは、理学療法士の先生のパーソナルトレーニングを受け始めたことです。正しいフォームや筋肉の使い方を一から叩き込んでもらって、動き作りの面で走りが大きく変化しました。動画で見ても、去年とは全く違う走りになっていて。その点が昨年からの成長かなと思います。

 

——現状でのご自身の強みは?

技術的には、着地の上手さや足の回し方ですね。短距離の選手からも「上手いね」と言ってもらえるくらいで、それによってスピードを楽に出せることが持ち味だと思っています。 精神面で言うと、誰よりも陸上を楽しんでいるところです。走ること自体が本当に好きで、速く走ることがとにかく楽しいんです。嫌々やっているわけではなく、心の底から好きなので、そこが自分の強みなのかなと思います。

 

——今年度の競走部を一言で表してください

「拮抗」ですね。常に誰かが競り合っている状態だと思っています。例えば1分54秒が参加標準記録だとしたら、1分55秒台の選手が6人くらい乱立している状態が作れているんです。

中には2分1~2秒といった、ほぼ初心者ぐらいのレベルから始めた人たちも、1年経ってその争いに食い込めるようになっています。「誰が最初に標準を切るんだ」という争いが生まれている状況ですね。それぐらいの緊張感を持って、ブロック全体の記録を底上げできているのかなと思って、その点で「拮抗しているな」と感じます。

今までは、できている選手とそうでない選手の差が大きく、初心者が伸びるのにも時間がかかるし、上位層がさらに伸びるのも大変という状況でした。それが今は全員が競い合って、誰が飛び出すかわからない状態にあります。これは組織としてすごくいいことだと思っています。

 

——今年、中距離ブロック長を務める中で、特に意識している役割や責任は?

去年お声がけいただいてブロック長になったのですが、正直、以前は「自分だけが競技で結果を出せばそれでいい」と思うところがありました。

でも、ブロック長になってからは「どうすれば中距離ブロック全体でもっと結果が出るのか」というところを、本当に深く深く考えるようになりました。そこがやっぱり一番大きく違うところですね。本気でブロックの子たちに結果を出してほしいと思うし、自分と同じぐらいの結果を出してほしいとも思います。そのためにどうしたらいいのかな、と「人のために考える時間」がすごく増えました。

 

そのうえで一番意識していることは、全員が本気で記録を出したいと思える環境作りですね。体育会としてやっている以上、自分の記録に人一倍のこだわりを持ってやってほしいです。自分がメニューを出してはいますけど、それをただやるだけではなく、「さらに伸びる要素はないか」と一人一人が試行錯誤してほしいと思っています。みんなが競い合って、少しでも高みを目指したいと思えるような環境作りは、常に心がけています。

 

——1つ上の学年であり、中距離ブロックのエースである成沢翔英(環4・山梨学院)選手の存在について

めちゃくちゃ面白い存在です(笑)。頻繁に電話していますし、色々喋る中で、やっぱり成沢さんの陸上に取り組む姿勢っていうのは、自分たちも絶対参考にしなきゃいけないなと思ってます。

誰よりも自分の結果にこだわっているし、「人一倍結果を出さなければならない」という責任を自分に課してやっている。そこは尊敬できるところですし、全員がそうならなければいけないと思っています。

今の中距離ブロックのみんなが、成沢さんのような精神を持ってほしいんです。もちろん、成沢さんはずっと上位で戦ってきたからこその「洗練された厳しさ」みたいなものがあります。今のブロックには大学から本格的に始めた1、2年生もいて、今すぐその水準を求めるのは難しくもあるんですけど、成沢さんのように結果にこだわる精神を目指していくことは、本当に重要だなと思っています。

自分もこの1年で少しはその精神に近づけたと思いたいんですけど、もし成沢さんに聞いたら「まだまだだね」と言われる気がしますね。

 

——昨年の関東インカレを振り返っていただけますか?

去年は初めての関東インカレだったこともあって、「準決勝進出」を一番の目標にしていました。慶應としても準決勝進出は5、6年ぶりだったので、それを達成したいという気持ちで出場し、準決勝までは行けました。

でも、実際に準決勝で走ってみて、本当に実力差を感じました。もう正直、最初から体が重くて、全然戦えるものではありませんでした。そこで「準決勝で満足しちゃダメだな、決勝に行って得点を持ってこないとダメだな」と痛感しました。この1年は、とにかく「関東インカレの決勝に絶対に行く」という気持ちだけを持ってやってきました。

 

——昨年の大会でご自身が1番差を感じた部分は?

レース運びもそうですし、全部ですかね。特に大きいのは経験値ですね。準決勝に出るような選手は、インターハイ入賞・優勝しているような人たちばかりです。自分はその経験値が何よりも足りていませんでした。上位大会での経験値が足りていないまま、大学2年からようやくそういう舞台に出るようになったので、展開や位置取りのスキルがまだ追いついていないなと思いました。あとは単純にスピードや走力も、まだまだ足りないと感じました。

 

——現在のコンディションと、関東インカレに向けた手応えをどのように感じていますか?

去年と比べても、動きに加えて、練習メニューの水準もかなり上がっています。数字で見てもわかるレベルで成長できているので、自分にプレッシャーかけちゃうかもしれないですけど、「行くしかない」というか、「行けるだろう」と思っています。

 

——関東インカレに向けて、チームとしてキーマンになると感じている選手を教えてください。

絶対に成沢さんだと思います。これはもう中距離ブロックというよりは、部全体として「成沢翔英」かなと。ケニアで修行をしてきて、その成果が一番現れる時だと思いますし、部の1部残留もかかっていますし、得点をもぎ取ってこれる成沢さんは、誰が見てもキーマンになる存在です。

 

——800mという種目において、関東インカレのような舞台で勝負を分けるポイントはどこにあると考えていますか?

やはり「準決勝」ですね。自分にとっての最大の勝負所です。800mは同じ日に予選と準決勝があるんですよ。予選で使いすぎたら準決勝で戦えないので、勝負は予選から始まっていると言ってもいいくらいです。

その中でのラスト200m。関東インカレでは、最初はみんな牽制するので、600mまでは誰でもいけるようなスローペースで進むことが多いんです。そこから一気にペースが上がるのがラスト200mで、その時にどれだけ食らいついていけるか、スローな区間で消耗せずいかにラスト200mに体力を残しておけるかが一番のキーポイントです。「この200mのために1年間練習してきた」と言っても過言ではないです。それぐらいの勝負所だと思っています。

 

——個人として、中距離ブロックとしての関東インカレでの目標は?

個人としてはもちろん決勝進出、そして1点でも多く得点を持って帰ってくることが目標です。 チームとしては、成沢さんも自分もしっかり入賞すること、特に成沢さんに関しては「優勝する」ぐらいの意気込みで臨むことです。どうしても今の慶應競走部は短距離が人数も実力もあって、短距離中心の競走部になっていますけど、これからは「中距離が競走部にとって不可欠な存在」となるように、得点という形できっちりそれを示していきたいなと思っています。

 

――ありがとうございました!

 

 (取材:竹腰環、中島冬奈、中原亜季帆 編集:吾妻志穂、片山春佳、中原亜季帆)

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