2006年の創部から20周年を迎えたソッカー部女子。チームの歩みを語るうえで、やはり小川愛(令3総卒/現サンフレッチェ広島レジーナ)選手の存在は欠かせないだろう。
幼少期はミャンマー、ナイジェリア、ベトナムといった海外にも在住していた小川選手は、鹿児島の神村学園中等部・高等部で中高6年間を過ごし、2017年に慶大に入学。1年時に関東大学リーグで1部に昇格すると、2年時は3年ぶり2度目のインカレ出場、チーム史上唯一のインカレ勝利も経験。4年時は副将を務めた。
大学卒業後はWEリーグのサンフレッチェ広島レジーナに入団。レジーナではWEリーグカップで2連覇(2023−24、2024-25)。今年の元日の皇后杯決勝ではキャプテンを務め、先制点をアシストし、チームを初優勝に導いた。
今回のインタビューでは、小川選手が慶大とソッカー部を選んだ理由、ソッカー部での4年間、プロでのここまでのキャリア、さらにはソッカー部の後輩たちへの想いまで、余すことなく語ってもらった。
(インタビューは2026/7/4にオンラインで実施)
――大学進学にあたり、慶大、ソッカー部を選んだ理由
慶應を選んだ理由は、中高は鹿児島の寮で生活していて本当にサッカーしかやってこなかったので、自分の視野を広げるためにSFCに興味を持ったことがきっかけです。高校2年生の時に受験したいと思い始めました。そもそも大学でサッカーを続けるか、大学に行くか行かないかということもいろいろな選択肢がある中で、周囲の方のサポートやアドバイスもあって、一番はサッカー以外のところで視野を広げて、違う環境に挑戦したいと思ったことがきっかけです。
サッカーを中心に大学を選んだわけではなかったのですが、ソッカー部は高校3年生の時に見学に行って、その時のチームの雰囲気や、入学前に貰ったパンフレットに書いてあった「慶應は誰かの為に闘った時、真の裁量を発揮出来る」という言葉が私自身がそれまでのサッカー人生で一番大切にしていたことでもあったので、すごく心に響いたこと、また、SFCを受けるにあたってたくさんのソッカー部の先輩たちがサポートしてくださったこともあって、入部を決断しました。
――幼少時代の海外在住経験が大学受験に与えた影響
いろいろな世界でいろいろな国の人たちと関わる中で、日本で生活をしている中では考えられないような環境にいる自分と同じ年代の子どもたちが、その日その日を生きていくために裸足でお仕事をしていたことにすごく衝撃を受けたので、それを自分の目で見て肌で感じたことはすごく大きかったです。
途上国に住んでいる時間が長かったので、貧困の問題や、逆に宗教や国籍を超えてつながることができるサッカーの魅力を感じましたし、机の上の勉強ではない社会で起きていることや問題に対して考えさせられたことがSFCで何か学べると思ったきっかけで、そういったことがなければSFCを選ばなかったと思うので、幼少期の経験はすごくつながっていると思います。
――大学4年間で一番印象に残っていること
やっぱり一番最初の早慶戦です。1年生の時に等々力でやった早慶戦でピッチに立った時に、今までサッカー選手としては感じたことがない鳥肌が立つような経験をあのピッチでしました。大学に入って、サッカーをするだけではなくてそれをつくり上げる人だったり、伝える人、サポートする人、いろいろな形でのサッカーとの関わり方であったり、自分たちがしようとしていることを実現できることの規模の大きさを感じた瞬間で、自分がソッカー部女子として戦うことに責任や誇りを感じた一日でもあったし、忘れられない一日です。ソッカー部に入って早慶戦ができて、あの舞台を経験できることは普通ではないことなので、今でも印象に残っていることですごく特別な一日です。

慶大時代の小川選手
――大学4年間で最も成長できたこと
さまざまなバックグラウンドを持つ人が集まっている部活で、経験者も初心者の人もいる中でたくさんの人との出会いがありましたし、学連(他大学の学生と連携して、学生主体でつくる関東大学リーグやインカレの運営に関する仕事)もやっていたのでつくる側にも関わる中で、自分の視野を広げることができた4年間だったと思います。それ自体がすごく刺激になったし、今の自分につながる成長を得られたと思っていて、それまではサッカーだけを一生懸命頑張る世界にいたので、ソッカー部で出会った人たちにかけてもらった言葉の一つひとつがサッカー選手としても人として生きていくうえでもすごく大事になっています。そういう人たちに4年間で出会えたことと、想いだったりサッカーに対する熱量が違う選手が集まっている中でどう戦っていくか、モチベーションを持ってやっていくかということを自分たちで考えたり、小さいことでも行動に起こしてみたり、一生懸命頑張るという難しさや面白さや楽しさを学べた4年間だったと思います。
――2年生の時にインカレに出場、チーム史上初のインカレでの勝利を挙げた
インカレに出ることはソッカー部で戦っていく中でも一つの大きな目標でした。1年生の時は何も分からずただ先輩たちの後をついて行って、2部で優勝することだけに対して一生懸命やっていただけの中で、1部に上がってインカレに出て、先輩たちのおかげで戦うことができましたが、3・4年生になって1部で戦うことの難しさが分かりましたし、4年生の時は1部で一勝もできなかったので、それがすごく特別だったことを後になってからの方が感じているかもしれないです。全員が自分の立場でできることをチームのために頑張っていたからこそ行けた場所だと思いますし、チームスポーツなので選手の見えない頑張りだったり、チームのために行動する選手、学年関係なくそういった人たちの存在がチームで勝つことに直結していたんだなということを今になってすごく感じています。その時は楽しさを感じていましたが、今になってインカレで勝ったことはすごかったと思いますし、いろいろな人のおかげで連れて行ってもらえたと思います。

2年時にインカレに出場
チーム史上初のインカレでの勝利に貢献した
――2002年に初開催された早慶戦は今もまだ勝利ができていないが、どんな舞台だと考えているか
やっぱり自分たちにとっては本当に特別な試合ですし、それと同時に「どこかいつも近づいているようでなかなか越えられない壁」があるんだなということを卒業した今でもすごく感じていて、4回しかない早慶戦のチャンスをどうにかして一勝しようと毎年毎年掲げている中で勝ち切れないという難しさがありました。表には見えない意地や想いが詰まっている特別な試合だと思っています。今はもう応援することしかできないですが、ずっと負け続けるチームもないと思うので、いつか後輩たちがその差を勝ちに持っていける日をひたすら応援したいと思いますし、限られたチャンスでそこに立てる人も少ないので、その舞台をみんなが楽しんでほしいと思っています。
――大学を卒業してからソッカー部の後輩との関わり
私が卒業してから監督が(伊藤洋平監督から黄大城監督に)変わったのですが、(黄監督は)「オフ期間中に練習する場所ないんだったらおいで」とすごく気さくに声をかけてくださる方なので、シーズンオフは行ける時は年に何回か顔を出して練習に混ぜてもらっています。
――プロでのここまでのキャリアを振り返って
すごく長いようであっという間の5年間だったと思います。ソッカー部を卒業してプロの道に進むことを決断するまでにもいろいろな葛藤がありましたし、不安もありましたが、まずはその時の気持ちに正直に「挑戦したい」と思ってしたことがすごく良かったと今は思っています。たくさんの試合に関わることが今はできていますが、そう甘くはないこの世界で毎年個人として結果を出すことにもチームとして結果を出すことにも難しさを感じています。日々自分の中で成長できると思えたり、成長したいと思えるところがまだまだあるので、そういったことの積み重ねでここまでやってこられたと思いますし、まだまだ足りないことがたくさんあるので、この5年半でできるようになったこととまだまだ足りないことにしっかり目を向けて、毎シーズン勝負する覚悟と気持ちを持ってこれからもやっていきたいと思います。
――昨シーズンは皇后杯の優勝に貢献した
チームとしても取ったことのないタイトルだったので、楽しさや難しさも感じながら、元日の国立のピッチに立つことはすごく特別なことだと思いましたし、たくさんの人のおかげであのピッチに立てたと思います。チームにとっても広島にとってもすごく大きな一勝で、これまでカップ戦のタイトルは2つ取りましたがそれとはまた違ったすごく大きな意味のあるタイトルだったと思います。
――「誰かの為に闘うこと」を大切にされている小川選手にとって、今はどんな方の存在が原動力になっているか
応援してくださるファン・サポーターの方がいて、サッカーをすることを支えてくれる家族や友人がいて、クラブや個人を応援してくださるスポンサーの方もいるので、数え切れないほどチームや個人に関わってくれるたくさんの方がいて、それが学生でやっていたスポーツとはまた違うところだと思いますし、プロとしては結果の部分にはよりこだわって、サッカーでしか返せないと思うので、自分の中での原動力はそこにあります。
――今シーズンの目標
まずは自分の中でパフォーマンスや気持ちの部分で大きな波をつくらずにシーズンを戦い抜きたいという思いがあって、その中でもより結果にこだわって戦っていきたいというのが大きな目標です。昨年はなかなかゴールというところで結果を残せなかったですが、一つでも多く点を取りたいですし、セットプレーも蹴っているのでそこからたくさんのゴールが生まれるようにアシストの部分にもこだわってやっていきたいです。一番は大きな波をつくらないことを目標に、チームとしてもたくさんのタイトルを取れるチームに成長し続けないといけないと思うので、個人の成長がチームの勝利につながるようにやっていければと思います。
――(インタビュー時点で)1部で最下位と苦戦しているソッカー部女子の後輩たちへ
私も(大4時に)1年間一勝もできないなかなかない経験をして、本当に苦しいと思いますが、自分自身のこともチームのことも信じてやり続けることと、この限られた時間の中でソッカー部の仲間とサッカーできるのはそう長くはないので、本当に楽しんでほしいと思います。今は苦しいと思いますが、絶対に下を向かないでほしいですし、とにかく目の前の一勝、一点というところをぶらさずに前を見続けて、やり続けてほしいと思います。
ソッカー部のみんなに頑張っている姿を見せられるように頑張ります!

※レジーナでの写真は昨季撮影、すべてチーム提供(©SANFRECCE)
※慶大時代の写真はすべて弊会撮影
(取材:柄澤晃希)
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