関東大学リーグ1部後期第7節。1部・2部入れ替え戦圏内の11位・慶大は、アウェイで4位・神大に1−2で敗れた。
前半は木田遥(総1・十文字)、野口初奈(環4・十文字)、山田葵(総2・聖和学園)の中盤3枚が神大ダブルボランチに対する数的優位を突いて前進を試みる。しかし、劣勢で試合が進むと、ロングボールから先制され、0−1で終える。
後半から徐々にチャンスをつくると、66分、米口和花(総3・十文字)のスルーパスに反応した福島紗羅メヘル(政1・昌平)がクロスを供給。髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)のシュートは防がれたが、こぼれ球を野村亜未(総4・十文字)がシュート。再び防がれたが、こぼれたところを野村が押し込み、同点に追いつく。試合終盤は神大のフォーメーション変更に伴い、慶大も5−3−2から5−4−1へとシステムを変更したが、押し込まれる時間が続くと、アディショナルタイムにCKから決勝弾を浴びた。
同日、9位・十文字大が勝ち点3を獲得。勝ち点21とし、インカレ出場ラインの8位に浮上した。勝ち点11の慶大は残り3試合で十文字大との勝ち点差10を覆すことはできないため、インカレ出場の可能性が消滅した。
翌日には、最下位(12位)・順大が勝ち点3を獲得。慶大は自動降格となる最下位に転落した。
【試合結果】
2026/10/3(土)13:00キックオフ@神奈川大学附属中・高等学校サッカー・ラグビー場
O.R.S 第40回関東大学女子サッカーリーグ戦1部 後期第7節
神奈川大学2−1慶應義塾大学
【得点(アシスト)】
36分 神大 松澤実来(樋口三夏)
67分 慶大 野村亜未
90+2分 神大 宮内愛美(安藤麻耶)
【慶大出場選手】
ポジション
背番号 選手名(学部学年・出身高校)
GK
1 四宮里紗(環1・桐蔭学園)
DF
11 森原日胡(総2・作陽学園)
→89分 18 岩田理子(総3・十文字)
2 竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)
5 米口和花(総3・十文字)
15 田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)
→65分 3 岡田恭佳(環4・十文字)
14 福島紗羅メヘル(政1・昌平)
MF
13 山田葵(総2・聖和学園)
→78分 8 佐藤凜(総4・常盤木学園)
6 木田遥(総1・十文字)
10 野口初奈(環4・十文字)
FW
9 野村亜未(総4・十文字)
7 髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)
前期は0−3で敗れた神大戦。神大は今節の試合前時点で4位。フィジカルに優れ、タレントの揃ったチームだ。
慶大は5−3−2システムを採用。前節はけがの影響で途中出場となった木田遥(総1・十文字)がアンカーでスタメン復帰。スーパーユーティリティ・田中紗莉(総3・市ヶ尾/日体大SMG横浜U18)が今季初の左CBでのスタメンとなった。

3試合連続スタメンの田中紗
対する神大は5−2−3。激しいプレスをかけてくる。
慶大のビルドアップのキーマンは、9試合ぶりのスタメンとなった右IH・山田葵(総2・聖和学園)だった。アンカー・木田、低い位置で攻撃のリズムをつくる左IH・野口初奈(環4・十文字)に対し、神大2ボランチがマンツーマンでつくと、ライン間にスペースができる。山田がトップ下気味に位置取り、縦パスを引き出す役割を担った。

スタメン復帰の木田

積極的にボールを引き出す野口
しかし、神大の屈強なフィジカルに苦戦し、なかなかいい形で攻められない。ボールを前線に送っても枚数が足りず、孤立する場面が多かった。被カウンター時はリベロ・米口和花(総3・十文字)がさすがの対応で防ぎ続け、開始から20分ほどは両軍大きなチャンスはないまま進む。
22分、ゴールまで30mほどの距離からミドルシュートを浴びるが、キーパー・四宮里紗(環1・桐蔭学園)が横っ飛びでファインセーブを見せる。
ファーストチャンスは26分、敵陣深く押し込むと、一度ボールを奪われるがFW・髙松芽衣(環3・植草学園大学附/ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18)が素早い切り替えから奪回。左WB・福島紗羅メヘル(政1・昌平)につなぎ、福島紗はキーパーとDFラインの間へクロスを供給。FW・野村亜未(総4・十文字)が合わせる寸前のところでクリアされるが、惜しい場面をつくる。

素早い切り替えが光る髙松
しかし36分、神大最終ラインからのロングボールを処理できず、ワンバウンドしたところを押し込まれ、ワンチャンスで先制される。
38分、四宮のフィードを受けた野口が胸でワンタッチで髙松につなぎ、野村とのパスワークから右サイドに展開。右WB・森原日胡(総2・作陽学園)、山田、右CB・竹内あゆみ(看4・日ノ本学園)が攻め上がるも、ゴールに近づけない。
44分、米口がライン間でフリーになった山田に縦パスを打ち込むと、山田から髙松、左サイドの福島紗まで展開。福島紗はオフサイドだったが、山田を経由した狙い通りの形で攻め込む。「相手のフォーメーション的にも、自分のところがフリーで浮くことが多かったので、斜めに抜けていく動きだったりも含めて自分のポジションのところで優位性をつくれていたと思いますし、良かったと思います」(山田)。

攻撃の中心を担った山田
45+1分、左サイドの深いところまで攻め込まれるが、田中紗が好対応。0−1で前半を終えた。
前半はシュート0本に終わり、攻撃は苦戦したが、守備での粘り強さはあっただけに、先制されたことが痛かった。「ちょっとしたロングボール一本で、『前に人数かけてくるよ』と言われていた中での失点だったので、チームとしても痛い失点でした」(野村)。
前半途中から神大左CBが山田をチェックするようになったが、FW・野村が神大左CBの裏へのパスを右CB・竹内に要求するなど、だんだんと5バック攻略の糸口を掴みかけていた。

広い視野で攻撃のタクトを振るう竹内
しかし、後半も苦しい時間が続く。59分、右サイドからフリーでクロスを入れられ、ヘディングで完璧に合わせられる。四宮が指先で触り、クロスバーに当たってボールがこぼれ、3CBの体を張った守備でなんとか失点は逃れる。この場面でDFリーダーの米口に対し、黄監督が「ボールサイドに(人を)押し出して」と指示を送る。「(右IHの)うた(山田の愛称)が1人で追ったところで無理だよそれは」という声が選手からも飛ぶなど、後ろ重心を修正するためのコミュニケーションが取られる。

懸命のセーブを見せた四宮
65分、田中紗に代えて岡田恭佳(環4・十文字)を投入。そのまま左CBに入る。

攻撃のリズムを変える岡田
すると67分、岡田からパスを受けた米口が最後方から持ち運ぶと、左サイドへ絶妙なスルーパスを供給。抜け出した福島紗がダイレクトでクロスを入れ、フリーの髙松が合わせる。キーパーに防がれたが、止まることなく走り込んできた野村がいち早く反応し、シュート。ゴールライン際でかき出されるが、再び野村がこぼれに反応し、左足で隅に流し込んだ。

起点となった米口の縦パス

福島紗のクロス

ストライカー・野村が今季10得点目
チームとして、夏の中断明け3試合は得点がなかっただけに、大きな1点となった。「得点を取った瞬間に結構チームが活気づいた」(野村)。勢いそのままに75分、敵陣でボールを奪われるが、森原、髙松、山田の3人で囲い込み、すぐさま奪回。野村のシュートはDFにブロックされるが、野村がこぼれを福島紗につなげ、福島紗が左足でシュート。しかし、枠を捉えられない。右IH・山田はこのプレーで足が攣り、ピッチを後にする。代わって佐藤凜(総4・常盤木学園)が入る。

守備からチャンスをつくった森原

テクニシャン・佐藤
終盤は神大が5−2−3から4−3−3にフォーメーションを変更。80分頃、慶大も大きな決断を下す。黄監督は「迷いもあった」と振り返るが、5−3−2のままでは「うちの3ボランチが相手のインサイドハーフを捕まえながらDFに出していくのは、時間を考えても難しいと思った」ことから、相手との噛み合わせの良い5−4−1に変更した。
しかし、ここからは防戦一方に。ボールサイドに人を押し出せず、ハーフコートマッチに近い戦いを強いられる。89分、右WB・森原に代えて岩田理子(総3・十文字)を投入。苦しみながらもハードワークを続け、なんとか耐えていたが、90+2分、CKを与えると、打点の高いヘディングで合わされ、痛恨の勝ち越し点を許す。その後も反撃できず、1−2で惜敗を喫した。

岩田を投入も苦しい時間が続いた
後期第2節に5−3−2を使い始めてから、「5−4−1は守備的なシフト」と考えるようになった選手もいたかもしれない。後期第3節の東洋大戦も、後期第5節の山学大戦も、格上をリスペクトしつつ、ロースコア勝負に持ち込む明確な共通認識があった。後期第6節の5−4−1は意味合いが違ったが、5−4−1システムがブロック守備を基調とするという潜在的な意識が、今節の終盤にラインを下げることにつながってしまったのかもしれない。
「やっぱり5−4−1だと下がり気味になっちゃうときがあって、前もフォーメーションを変えた時に崩れて負けた試合があって、でもそうやって変える中でもお互いに声をかけ合って共通認識を持ってもっとうまくやれていたら、もうちょっと違う試合になったのかなと、テソンさんが『責任を感じている』と言っていたけど、自分たちにもできたことはあったという思いはあります」(野村)。
見ている側としても、「勝ち点3を取りたいけど、悪くても1は絶対に取りたい」そう思ってしまう展開だった。今後の試合でも似たようなシチュエーションを迎えるかもしれない。その時に、勝ちを狙うのか、引き分けを覚悟して戦うのか、フォーメーションと戦術の落とし込みを含め、チーム全体で同じイメージを持って戦えるかがカギを握る。
10/12時点で、全チーム残るは3試合。10位は勝ち点15(得失点差−25)の帝平大。11位は勝ち点13(得失点差−27)の順大。12位は勝ち点11(得失点差−21)の慶大。9位以上で1部残留が確定、10位と11位が1部・2部入れ替え戦に進み、12位は自動降格となる。
慶大は9位以下が確定していて、9位の勝ち点20(得失点差−7)の東国大を逆転するには、残り3試合を東国大が全敗し、慶大が全勝したうえで、得失点差14を覆さなければならない。
慶大は次節、勝ち点差4で追う帝平大と戦う。帝平大戦で自動降格が決まることはないが、勝ち点3を取らなければかなり厳しくなり、勝ち点1でも物足りない結果となる。その後の2試合は格上の日大、早大と戦うことを考えても、帝平大戦は是が非でも勝ち点3が欲しい。シーズンの結果を、チームの未来を左右する大一番となる。

【試合後インタビュー】
野村亜未(総4・十文字)
――試合の総括
(前節、)最下位だった帝平が早稲田に勝って、自分たちの順位が1つ(10位→11位)に落ちちゃった状況で、前節は引き分けたので今節は勝ってまた入れ替わりたいというところで臨んだ試合でした。(神大の先制点は)ちょっとしたロングボール一本で、「前に人数かけてくるよ」と言われていた中での失点だったので、チームとしても痛い失点でした。一回追いついたものの、最後に勝ち越されてしまって、だいぶ悔しさが残る試合だったと思います。
――得点シーンを振り返って
紗羅(福島)がサイドで、「これはクロス来るな」と思ったけど、中の状況的に私がそのまま真っ直ぐ入っていくよりも、芽衣(髙松)が前にいたので芽衣にニアに突っ込んでもらって、自分も最後まで入っていきました。「(髙松が)決めてくれたら」と思いながらも、ちょうど自分のところにこぼれてきたので、落ち着いて、一回またディフェンスに弾かれたけどあとは勢いだと思って振り抜きました。
――夏の中断期間明けの3試合はチームとして得点がなかった
あまり攻撃がいい形でできていないことが多くて、ゴール前まで攻められない状況も多かったです。きょうは久々の得点というのもあって、得点を取った瞬間に結構チームが活気づいた感じがあって、言い方が正しいか分からないですけど点を取ると元気になるというか、そういうエネルギーを発せられるからこそ、もう1点取りたかったという思いはありますし、もっと得点を取れるチームにならなきゃなとは思います。得点を取れていない状況で、「取らなきゃいけないという焦りがチームの中で醸成されちゃっているよ」という話もテソンさん(黄大城監督)からあって、ネガティブな要素じゃなくて「得点を取りにいくんだ」という気持ちの部分で押し切って、きょうは点を取れたと思います。
――試合終盤に5−4−1に変更したが、ピッチ内でのコミュニケーションは
そこについてはテソンさんも試合が終わったあとに「自分の采配に責任を感じている」という話をしていて、もちろん自分たちが中でうまくできれば良かったんですけど、やっぱり5−4−1だと下がり気味になっちゃうときがあって、前もフォーメーションを変えた時に崩れて負けた試合があって、でもそうやって変える中でもお互いに声をかけ合って共通認識を持ってもっとうまくやれていたら、もうちょっと違う試合になったのかなと、テソンさんが「責任を感じている」と言っていたけど、自分たちにもできたことはあったという思いはあります。
――キャプテンとしてチームの雰囲気をどう感じているか
本当に難しいですね。「自分の感情は二の次」という話をきょうテソンさんからされて、もちろん組織のため勝利のためにやらなきゃいけない部分はあるけど、それが逆に表に出過ぎてなかなかチームがまとまらなかったり、それぞれの個人のパフォーマンスの最大化につながらなかったりだとか、いろいろな葛藤が自分の中にあるんですけど、もうあと3試合しかないので、点を取ることをやるだけだし、自分がやるだけだと思うので、できることを最後までやり尽くしたいと思います。
――次節の帝京平成大学戦まで2週間、野村選手は国スポでチームを離れる時間もあると思うが、他の4年生を含めたチームづくりは
最近は4年生で集まる機会を意図的に設けていて、「最後は4年生の力だよね」という話もしていて、練習の雰囲気づくりも緊張感も、プレーで示すところもですけど声とかで自分たちから発信して、いい雰囲気をもたらしていこうというのは話しています。逆に自分が崩れそうになったときに、きょうも周りの4年生が支えてくれた部分があったので、みんなのことを信頼しています。自分はチームを離れるけどレベルアップして帰ってきたいですし、一旦みんなにチームを任せられる信頼はあると思います。
山田葵(総2・聖和学園)
――試合の総括
自分たちの思うようにボールを運べていた時間もあった中で、途中追いつけたものの最後勝ち切れなかったところは自分たちの課題だと思います。
――前半から「うた(山田の愛称)のところ空くよ」「うたポジショニングいいよ」という声がベンチから飛んでいたが、相手のダブルボランチに対して攻撃ではどんな役割を与えられていたか
相手のフォーメーション的にも、自分のところがフリーで浮くことが多かったので、斜めに抜けていく動きだったりも含めて自分のポジションのところで優位性をつくれていたと思いますし、良かったと思います。
――前期は相手の中盤の10番の選手を起点に攻められた印象があったが、きょうの10番の選手に対する守備は
守備は5−3−2だった中で、できるだけ逆サイドを締めることを意識していて、セカンドボールに遅れちゃうこともあったんですけど潰しにいけたところがあったのは良かったと思います。
――山田選手含め気持ちの見えるプレーがあったが、チームの雰囲気は
1部残留という目標に切り替えた中で、一つでも多く勝ち点を積み重ねていきたいという思いがみんなの中にあって、4年生を中心に声かけやプレーのところで見せてもらっているので、自分の中でもできることはやろうと思っていました。
――次の帝京平成大学戦は大きな試合になる
きょうはスタートでしたけど、試合によって自分の役割は変わってくると思うので、その中でも自分のベストを尽くしてチームの勝ち点3に貢献したいと思います。
(取材:柄澤晃希)
リーグ戦19試合、苦しい試合が多かった。レベルの高いカテゴリーで、レベルの高いサッカーに挑戦してきた。試合を重ねるたびに課題が出てきて、状態が上向いたと思ったらまた後戻りして、解決したはずの課題がまた露呈する。底なし沼でもがいているような感覚が続いている。
失点するとナーバスになるのも十二分に分かる。点を取ることがどれほど難しいのか嫌というほど思い知らされてきたし、19試合で複数得点が2回しかなかったのだから、逆転することは簡単ではないし、焦りが出るのも無理はない。
ただ、このチームのサッカーには大きな力がある。慶應の技術に、思考に、信念に、総和の力に、魅せられ、追いかけてきたものとして、断言する。慶應は強い。結果は出ていないけれど、ソッカー部女子のサッカーには絶対的な魅力があり、そして強さもある。だから、1点取られたくらいで肩を落とすな。下を向くな。難しいことに挑戦している。だけど、試合中にビハインドを跳ね返すのは不可能なことではないだろう。スタイルを貫くこと、諦めないことの大切さを教えてくれたのはこのチームだった。試合の中であれほどナーバスになる必要はない。顔を上げろ。胸を張れ。筆者はいつまでも慶應のサッカーを信じ続ける。
ここまでのシーズン、TEAM2026は決して炎を絶やすことなく、想いを灯し続けてくれた。1部残留を掴み取れるよう、心から願っている。









