敗れれば最下位転落となる前期最終節。慶大は前から積極的にプレスをかけて押し気味に試合を進めると、41分に八田和己(総2・桐蔭学園高)がCKを頭で合わせて先制する。しかし後半に入り徐々に流れを失うと、57分に不運なPK判定で同点とされ、その後は劣勢に。終盤には幾度か決定機を迎えたものの決めきれず、1-1の引き分け。降格圏内の2チームで勝ち点1を分け合い前期を終えた。
第91回関東大学サッカーリーグ戦 第11節
2017/06/25(日)11:30KO@龍ヶ崎市陸上競技場たつのこフィールド
慶應義塾大学1-1桐蔭横浜大学
【得点者(アシスト者)】
【慶】41分 八田和己(近藤貫太)
【桐】57分 石川大地
◇慶大出場選手
GK上田朝都(総2・横浜F・マリノスユース) |
DF手塚朋克(環4・静岡学園高) |
DF鴻巣良真(総3・国学院久我山高) |
DF八田和已(総2・桐蔭学園高) |
DF増田皓夫(商3・桐蔭学園高) |
MF杉本崇太朗(政1・名古屋グランパスU-18)→61分 田中健太(法4・横浜F・マリノスユース) |
MF片岡立綺(総4・桐蔭学園高) |
MF渡辺夏彦(総4・国学院久我山高) |
MF近藤貫太(総4・愛媛FC) |
FW宮川大史(総3・暁星高)→83分 渡辺恭平(商4・新潟高) |
FW小谷春日(環3・藤枝東高) |
不振に喘いだ前期リーグもとうとう最終節。12チーム中11位の慶大と12位の桐蔭横浜大による“裏天王山”は、両チームともに何が何でも勝ち点3が欲しい一戦となった。慶大はルーキー杉本崇太朗(政1・名古屋グランパスU-18)が5戦ぶりのスタメン復帰。3戦連続無得点とゴール欠乏症に陥っている慶大に得点をもたらす働きが期待される。
すると開始2分、いきなり杉本が魅せる。中央寄りのポジションで前を向くと、寄せてきたDFを股抜きで抜き去り、そのままミドルシュート。ボールは枠を外れたが、前の2試合で計1本しかシュートを打っていなかった慶大は、これを機に試合を優位に進めていった。29分、小谷春日(環3・藤枝東高)がスルーパスに抜け出してシュート。GKの後ろにこぼれたボールを押し込もうとしたが、うまくミートできず決定機を逃した。40分には杉本がPA付近ゴール正面から得意の左足を見舞ったが、強烈なシュートは相手GKの好セーブに遭う。そろそろ得点を…という雰囲気が漂う中、直後の41分、仕事をしたのは伏兵だった。近藤貫太(総4・愛媛FC)の蹴ったCKを頭で叩き込んだのは、センターバックの八田和己(総2・桐蔭学園高)。「周りの選手がブロックとかをしてくれて、自分がフリーな状況を作れた」(八田)という理想的なセットプレーの得点で、ようやく慶大が先制点を奪った。前半を通して桐蔭横浜大にはほとんどチャンスらしいチャンスを与えないまま、1点のリードを保って試合を折り返す。
後半に入ると桐蔭横浜大も鋭いカウンターで慶大守備陣を脅かすシーンが見え始める。すると57分、自陣PA内の接触プレーで鴻巣良真(総3・国学院久我山高)がファウルをとられ、PKを与えてしまった。タイミング的には鴻巣が先にボールに行っていたようにも見えたため慶大にとっては不運な判定だったが、このPKをきっちりと沈められて1-1に。そして、今季の慶大の悪癖である失点後の立て直しの遅さがこの日も顔を出し、試合の主導権を桐蔭横浜大に握られてしまった。須田芳正監督はそれを感じたのか、61分に田中健太(法4・横浜F・マリノスユース)を杉本に代えて投入。しばらくは耐える時間が続いたが、終盤に入り、我慢を続けた慶大に決定機が訪れる。81分、ロングボールに宮川大史(総3・暁星高)が抜け出し、相手GKとの一対一へ。しかし宮川のシュートはうまく距離を詰めたGKに弾かれ、こぼれ球をもう一度打ったシュートもゴールライン際でDFにクリアされてしまった。90分には途中出場の渡辺恭平(商4・新潟高)がPA左隅から浮いたボールに左足を振り抜いたが、ドライブのかかったシュートは無情にもクロスバーを直撃。お互いに勝ち越しゴールは奪えず、1-1でタイムアップを迎えた。
最下位転落という最悪のシナリオは避けたものの、勝ち点は1しか積み重ねられず、降格圏脱出とはならなかった。決定機の数を考えれば、1点しか奪えなかったことには不満の残るゲームだっただろう。これで、7戦勝ちなし。前期を終え、須田監督、近藤ゲームキャプテンはともに、「自分たちは弱いチーム」だと強調した。開幕前には関東リーグ優勝を目標に掲げていたものの、現時点での現実的な第一目標は1部残留だろう。もちろん、彼らがそれで完全に納得しているはずはない。理想と現実のギャップに、荒鷲軍団は苦しんでいる。後期が開幕するまでに、彼らは少しでもそのギャップを埋めていかなければならない。「弱いチーム」はどうすれば勝てるのか――。その答えを見つけ、体現すること。それがこの夏、慶大がやるべきことだ。
(記事 桑原大樹)
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試合後コメント
須田芳正監督
(立ち上がりから積極的で入りは悪くなかったと思うが)そうですね。基本的にはどこのエリアでもボールホルダーには前から行こうと、そこを基本にミラーゲームをやろうとしたんで、ボールには行けていたんじゃないかなと思います。(前半に関しては狙い通りだったか)チャンス勘というか…あれで1点じゃ物足りないですよね。あそこで畳み掛けないと。点数を取るチャンスは何回かあったんですよ。もっとチャンス勘を持たないと。そういうのがチーム全体としては足りなかったですね。1点は取りましたけど、もう1点取りにいくんだ、試合を決めてやるんだという気迫や雰囲気がなかったと思います。(後半、少し不運な失点の後にいつも通り崩れてしまった)まああれも不運というよりは流れの中だと。あの悪い時間帯やちょっとしたミスの流れで取られているわけだから。中盤でのイージーミス、あれが大きかったと思います。大事なところでミスがあればそれは相手もそういうチャンスを突いてくる。チャンスか、ピンチか、ここは耐えるんだ、というようなゲームコントロールは全くできていない。(流れを持っていかれかけたところで田中健太選手投入の決断を早めに下した)相手の左サイドバックが結構オーバーラップしてきていて、それに対して杉本がもうついていけない状態で、あそこからチャンスを作られていたので代え時かなと。うちらはカウンターをするから速い選手を入れようと。(どちらかと言うと守備的な趣旨の交代だったのか)あとは速い選手をどこで入れるかというのもあって、(杉本は)もうちょっといけるかと思ったんですけど、守備のところが少し目についたので代えました。(前期を振り返って)まず分かったことは我々は12チーム中11位で、これで終われば降格だと、つまり弱いんだということ。それが分かったことはすごく良かった。それを受け止めて、後期に向けて見つめ直す時間があるので、そこで個人やチームとして足りない部分を修正していく。選手たちは大きな勘違いをしていたんじゃないかなと。それが分かっただけでも良かったんじゃないかと思います。中途半端に8位とかよりも、降格だからと。それを受け止めてやっていく。それしかないんじゃないですか。
近藤貫太(総4・愛媛FC)ゲームキャプテン
(試合を振り返って)絶対勝たなきゃいけない試合で勝てなかったので、非常に悔しいです。(勝てなかった要因は)ずっとここ1週間言われてきたけど、相手より走るだったり、気持ちの部分だったりというところで慶應は勝っていくしかないのに、そこが相手より大きく勝らないと勝てないので、そこはできなかったかなと思います。(前半は良い内容だったが、後半同点にされてしまった)自分たちが全部1試合通してやっていたつもりだったんですけど、そこで後半落ちているように見えるっていうことは、まだまだチームとしての力が足りてないかなと思います。(降格圏内のまま後期を迎えることになるが、課題や強化していく点は)サッカーの部分もそうなんですけど、とりあえずもう1回自分たちが弱いチーム、そんなに強いチームじゃないっていうことを認識してその上で後期まで取り組んでいかなきゃいけないと思います。(アミノバイタルカップに向けて意気込みを)チームとしても成長できる大会だと思いますし、メンバーとかがどうなるか分からないですけど、とにかく試合をやって得られるものは公式戦より大きいと思うので、頑張ってやっていきたいです。
八田和己(総2・桐蔭学園高)
(試合を振り返って)絶対に勝たなきゃいけない試合だったので、勝ち切れなかったところは本当にチームの課題だと思います。(前半の得点シーンについて)本当に(近藤)貫太くんが良いボールを上げてくれて、周りの選手もブロックとかをしてくれて、自分がフリーな状況を作れました。本当に良いゴールだったと思います。(ボールは真ん中から遠目を狙ったものだったことについて)真ん中あたりのボールで、少しニアで潰れて、みや(宮川)が行ったところで少し後ろから入っていけた形になりました。気持ちの入ったシュートだったと思います。(チーム戦術としてのセットプレーの形だったか)セットプレーでしばらく入ってなかったので、セットプレーのところはチャンス感を持ってやっていこうというふうにチームの中でもやってきたところなので、それが形となってゴールが生まれたのは本当に良かったと思います。(PKの判定について)難しいところでしたし、(鴻巣)良真くんがいいカバーをしてくれていたんですけど、ただ、ああいう状況を作らせていること自体がまずいけないと思っているので。あとはPAの中ということはやはりリスクを冒さないで取らないといけないところでもあるんで、本当に難しいところですけど、ああいう状況に持っていかせなくするのがセンターバックの仕事だと思うし、そういう形を作らせないというのはチームとして意識してやっていかなきゃいけない点だと思います。(アミノバイタルカップに向けて)本当にアミノバイタルは連戦になるので、チーム一丸となってやっていかないと勝てない試合だと思うので、今まで出ていない選手だったり出場時間が短い選手だったりが本当にみんなで競争意識を持ってやっていけば、つかみとれるものだと思うので、一丸となって頑張っていきたいと思います。