春の歓喜を力に、再び頂点へ。3季連続5位から巻き返し、東京六大学野球春季リーグ戦で完全優勝を果たした慶大。全日本大学野球選手権大会でも準優勝を収め、その快進撃をスタンドから支え続けたのが應援指導部だ。野球応援を企画する「野球サブ」の3人が、春の激闘と優勝の喜び、そして悲願の日本一へ懸ける思いを語った。
K.Sさん:野球サブは、1年間を通して野球部と一緒に戦い、野球応援を企画する立場です。150人を超える全部員が一堂に会して応援する大規模な活動なので、神宮という広い場所でいかに選手へ応援を届けるかを常に意識しています。部員全員の力を引き出し、さらに1000人の応援席を一つにまとめて、応援を届けることが野球サブの役割だと思っています。
個人として試合中に意識しているのは、一人ひとりと目を合わせることです。自分が盛り上げなければいけない場面では、それをしっかり表現する。太鼓をたたいている時や応援を振っている時には、自分の姿で示せるようにしています。秋季リーグ戦でも、顔や背中で部員に思いを伝えられる野球サブを目指し、試合中の振る舞いを大切にしていきたいです。

H.Sさん:野球サブの役割としては、本当にK.Sが言ってくれた通りです。個人としては、3人の中だとどちらかというと、熱量を持って引っ張るというよりは、その熱を時には抑えながら、冷静に判断するタイプだと思っています。応援席では、みんながどんな表情で応援を楽しんでいるのか、というところをよく見るようにしています。全員が参加するからこそ、まずは全員が楽しめる場所であってほしいと思っているので、部員も含め、一人ひとりがどんな表情で取り組んでいるのかを常に意識しています。
S.Mさん:応援席では、予想外のことや、普段は起こらないようなことがたくさん起こるんですけど、そういった情報を漏らさずにしっかり把握して、誰かに聞かれた時にはきちんと答えられるようにすることを意識しています。みんなから「頼れるな」と思ってもらえるような振る舞いをしながら、常に情報を吸収することを心がけています。
また、野球サブの役割自体は先ほどK.Sが話してくれた通りなんですけど、今年度は野球応援スローガンとして「逆襲」を掲げて応援席をつくっています。どんな状況でも、その目標やスローガンを思い出して、全員が同じ方向を向いて前に進めるように、自分自身が背中で示すことを意識しています。
K.Sさん:「逆襲」というスローガンに関しても、やっぱり慶立戦の初戦が一番印象に残っています。試合の途中まではずっと拮抗した展開だったんですけど、そこから野球部がまさに「逆襲」の狼煙を上げるような大量得点をしてくれて。「自分たちの応援が届いたんだ」と感じられた瞬間でした。秋季リーグ戦でも、自分たちが10点、20点を取っていくくらいの気持ちで、野球部を後押しできるような応援をしていきたいと思っています。
H.Sさん:そもそも「逆襲」というコンセプトは、それまで3季連続5位で、なかなか優勝には届かず、守勢に回っていた状況から、次は自分たちが攻勢に転じようという思いを込めて掲げたスローガンでした。そういう意味では、春季リーグ戦だけでなく、全日本選手権まで含めて振り返ると、3季連続5位だったチームが六大学優勝を果たし、さらに全日本選手権でも決勝まで進むことができました。本当に「逆襲」の道をしっかり歩むことができたシーズンだったと思っています。
ただ、その「逆襲」を本当の意味で成し遂げたと言えるかというと、六大学では達成できたものの、全国で日本一になるという目標はまだ果たせていません。秋こそ日本一を達成できるよう、引き続き頑張っていきたいと思っています。

S.Mさん:少しかぶってしまうんですけど、昨年度の結果と今年度の結果を比べると、「逆襲」はかなり順調に果たせてきていると思います。ただ、それはやはり塾野球部自体がさらにレベルアップして、その力が結果につながった部分がすごく大きいと思っています。だからこそ、秋は自分たちも応援でさらに支えられるように、もう一段階レベルアップした応援席で臨みたいです。
S.Mさん:全日本選手権での戦いぶりも本当にすごくて、日本一まであと一歩というところまで進んだので、もちろん全ての試合が印象に残っています。ただ、その中でも私にとって一番印象に残っているのは、やはり慶明戦の一回戦です。それまで、自分が應援指導部に入ってから一度も勝てていなかった相手に、まず一勝をつかみ取ってくれて。塾野球部の勢いと応援席の盛り上がりが一つになっていくような、今までに感じたことのない空気がありました。その時に、「今年は本当に優勝するんだ」と強く確信したことを、今でもすごく覚えています。あの感覚が忘れられないので、一番印象に残っている試合です。

H.Sさん:本当に印象に残っているのは、慶早戦第2回戦の8回、9回です。8回にかなり攻め込まれて、「危ないぞ」という場面を何とか抑えてくれて、あとは9回を守り切ればというところでした。ただ、9回も本当に何が起こるか分からなくて。「早慶戦には魔物がいる」と言われますけど、まさにその言葉通りというか、早慶戦の難しさを身に染みて感じた日でした。今回、春季リーグ戦から全日本選手権までを通して、負けた試合が本当に少なかったからこそ、逆に敗戦した試合が、良くも悪くも強く印象に残っています。全日本選手権の決勝も、9回にみんなで全力を出して、特にあの回の「朱雀」は本当にすごい威力があったと思います。それでも勝ち切ることができなかった。そのことから、勝負の難しさを改めて強く感じました。
S.Mさん:吹奏楽団所属の野球サブとしては、5月中旬頃の慶法戦から1年生が吹奏楽団に加わり、人数が一気に増えて、座席をどれくらいの幅で使うのか、どのような編成にするのか、楽器をどう置くのか、さらに1年生への対応をどうするのかなど、新しいシステムを考える必要がありました。ただ、それと同時に他の業務も重なっていて、新しいものを考えること自体にすごく体力が必要なのに、ほかのことにも体力を使わなければならなくて。精神的にも体力的にも、すごく苦しかった期間でした。
K.Sさん:準備の面でいうと、まず応援では人員表を組みます。その人員表をスプレッドシートで作るんですけど、関数がすごく複雑で、その編集だったり、人員配置を一つひとつ考えながら組んだりするのは大変だったなと思います。ただ、その部分は3人で協力しながら乗り越えることができたかなと思っています。応援中で一番大変だったことを挙げると、やっぱり「ダッシュケイオウ」の場面ですね。「ダッシュケイオウ」の後にそのまま得点が入って、「若き血」まで続くと、フィジカル的にはかなりきつかったです。どれだけ「ダッシュケイオウ」を振っても、「若き血」を振っても疲れを感じさせないような、かっこいい應援指導部員になれるように頑張っていきたいと思っています。

H.Sさん:特に土日で決着がつかず、月曜日に試合があった時は、その日の試合が終わってから翌日の準備を一から進めなければいけませんでした。さっき話した人員表もそうですし、その日のうちに作って、みんなが寝るまでには必ず共有しなければいけなかったので、個人的には作業量がかなり多くて大変でした。試合中でいうと、この野球サブになってから「戦況把握」という、応援中にどの曲を流すかを判断する役割を担当するようになりました。その判断次第で応援席の雰囲気が良くも悪くも大きく変わってしまうので、その責任の重さはすごく感じていました。特に、自分が担当している試合で苦しい展開になると、「ここでどう応援を組み立てるか」というプレッシャーは常に感じていました。
K.Sさん:とにかく嬉しかったですね。自分は戦況把握を担当していたんですけど、野球部が本当に応援席の思いに応えてくれて、素晴らしいプレーを続けていたので、「勝てる」という確信はありました。それでも、実際に勝って優勝が決まった瞬間の気持ちは、やっぱり何にも代えがたい嬉しさがありました。
H.Sさん:とにかく嬉しかったですね。もちろん優勝できたこと自体も嬉しかったんですけど、その嬉しさ以上に、安堵というか、安心した気持ちの方が大きかったかなと思います。これだけたくさんのお客さんが応援席に来てくださって、自分たちもここまで積み重ねてきた中で、もしここで早稲田に負けたら明治が優勝するという状況でした。自分たちの手で優勝を決められるかどうかという大事な一戦で、しっかり勝ち切ることができて、応援席に来てくださった皆さんの期待に応えられたという安心感がありました。また、優勝というのは一つひとつの勝利を積み重ねた先にあるものだと思うので、振り返ってみると、短いようで本当に長い道のりだったなと感じています。そして、優勝したことで全日本選手権への道も開けたので、「まだまだこれからだ」という気持ちにもなりました。

S.Mさん:この試合に勝ったら優勝だということは、もちろん最初から分かっていましたし、ここまでの流れを見ていて、「このまま優勝するだろう」とも思っていました。でも、いざ優勝が決まった瞬間は、「ついに、本当に勝ったんだ」というか。「信じられない」という言葉が正しいのかは分からないんですけど、「本当に優勝したんだ」という気持ちでいっぱいでした。野球サブとして全うしなければいけない役割があって、リーグ戦優勝で一つの区切りを迎えられたというか。安堵というか、「本当によかった」という気持ちがすごく大きかったです。
K.Sさん:あともう一つは、感謝の気持ちがものすごくこみ上げてきました。リーグ戦前からずっと一緒に戦ってきた塾野球部はもちろんですし、自分たちの応援企画についてきてくれた150人の應援指導部員、そして何より応援席に来てくださった皆さんがいたからこそ、リーグ戦優勝をつかみ取ることができたんだと思っています。その感謝の気持ちは、本当にどこからともなく湧き上がってきたというか、自然と込み上げてきました。「自分たちが優勝した」というよりも、「みんなでつかみ取った優勝だった」という感覚がすごく強かったです。多分、野球サブ3人とも同じように感じていたんじゃないかなと思います。
H.Sさん:本当に写真でしか見たことがない光景だったので、「優勝するってこういうことなんだ」と実感しました。日中、まだ明るいうちに外苑前を歩き始めて、三田に着く頃にはもう暗くなっていて。それでもたくさんの方が待っていてくださって、その景色も含めて、全部が初めての体験でした。パレードや祝賀会を通して、「優勝するってこういうことなんだな」と改めて感じました。歩く距離が8.5キロと聞いた時は、「結構長いな」と思ったんですけど、実際に歩いてみると、もちろん長くはあったんですけど、本当にあっという間に終わってしまって。純粋にすごく楽しかったですね。
K.Sさん:自分は提灯を持ってパレードの一番前を歩いていたんですけど、三田の地まで天皇杯が運ばれてきて、東門に着いた瞬間は本当に感慨深かったです。また、これだけ大きなパレードができるというのは決して当たり前のことではないなと改めて感じました。伊藤塾長も「本番は秋だ」とおっしゃっていたので、秋はもっと盛大なパレードができるように、自分たちもさらに頑張っていきたいなと思いました。
S.Mさん:私は、パレード中に本当にたくさんの方の喜んでいる表情を見ることができたのが、すごく嬉しかったです。歩道でずっと追いかけながら応援してくださる方や、沿道に並んで待っていて、手を振りながら祝福してくださる方もたくさんいらっしゃいました。そういう方々も一緒に、これまでずっと応援してくださっていたんだと思うと、本当に嬉しかったです。皆さんが喜んでいる姿を見ることができて、「優勝してよかったな」と改めて思いました。
K.Sさん:まずは、本当に毎試合1000人を超える応援席をつくってくださった、応援席に足を運んでくださった皆様に、心から感謝を申し上げたいです。秋に向けても、皆様の力が本当に必要ですし、我々も野球部と同様に、成長した姿をお見せできればと思っています。まだ自分たちには明治神宮大会優勝、日本一という目標が残っています。その目標に向けて、これからも野球部を全力で応援し、応援席の皆様と一緒に、日本一を勝ち取りたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
H.Sさん:まずは、本当に応援席に来てくださってありがとうございました、という感謝の気持ちを伝えたいです。春季リーグ戦では、どの試合でも相手側を上回る多くの方が慶大の応援席に来てくださったことが、一つの特徴だったと思います。純粋に、これだけたくさんの方が応援に来てくださったことが、すごく嬉しかったです。秋季リーグ戦でも、私たちは野球部も応援席も含めて、全員で楽しみ、全員で戦って勝ちたいと思っています。応援席にいる全員が仲間だと思って、秋も一緒にたくさん応援してくださると嬉しいです。
S.Mさん:重ねてにはなりますが、本当に応援席に足を運んでくださり、ありがとうございました。お仕事やご予定がある中で、平日にも時間をつくって足を運んでくださったり、球場では声をかけてくださったり、本当に温かく接していただきました。また、学生の方がご友人を連れて応援に来てくださる姿も多く見られて、本当に嬉しかったです。秋季リーグ戦を制し、明治神宮大会まで進めば11月中旬頃まで、皆様と一緒に塾野球部を応援することができます。2026年の最後まで、一番長く塾野球部を応援できるように、皆様と一緒に戦っていきたいと思っています。そして、今度こそ日本一の応援席を、共につくり上げましょう。
ーありがとうございました!
(取材:小野寺叶翔、岩切太志、日比野優)


