1回戦で創部以来初のインカレ勝利を飾った慶大は、ベスト8を懸け関東第1代表の帝京平成大と激突した。強敵にも臆さず慶大は序盤からボールを支配し、試合を優位に進める。しかし、0-0のまま迎えた54分、一瞬の隙から見事なミドルシュートを沈められ先制を許すと、直後に守備陣のミスから追加点を献上。76分に平田朋(環1・日ノ本学園)のゴールで1点差に詰め寄ったものの、堅守の帝京平成大から2点目は奪えなかった。1-2で敗れ、慶大はインカレの舞台から去ることとなった。
第27回全日本大学女子サッカー選手権大会 2回戦 vs帝京平成大学
2018/12/25(火)11:00KO @三木総合防災公園陸上競技場
【スコア】
慶應義塾大学1-2帝京平成大学
0-1 54分 市川碧(帝京平成大学)
0-2 55分 鈴木愛里沙(帝京平成大学)
1-2 76分 平田朋(慶應義塾大学)
◇慶大出場選手
GK 志鎌奈津美(環4・常盤木学園) |
DF 奥本くるみ(環3・浦和レッズレディースユース)→64分 足立智佳(環2・大阪桐蔭) |
DF 小川愛(総2・神村学園) |
DF 熊谷明奈(総2・十文字) |
DF 佐藤幸恵(総2・十文字) |
MF 平田朋(環1・日ノ本学園)→83分 勝木日南子(総3・大和) |
MF 工藤真子(総3・日テレ・メニーナ) |
MF 中島菜々子(総4・十文字)Ⓒ |
MF 松木里緒(環3・常盤木学園) |
FW 山本華乃(理2・横須賀シーガルズ) |
FW 鈴木紗理(総2・十文字) |
「インカレベスト4を目指す上では必ずどこかで越えなきゃいけない壁」。1回戦・活水女子大戦後、主将の中島菜々子(総4・十文字)は、帝京平成大をそう表現した。関東大学リーグを制し、インカレ優勝候補本命に挙げられる同大には、慶大も今季2戦2敗を喫している。番狂わせを起こすべく、この試合こそ、今季の集大成を見せる時。目標のインカレベスト4へ、最大の山場となるゲームが、クリスマスの朝、幕を開けた。
慶大はいつも通り、丁寧なビルドアップから攻撃を組み立てる。ボールを支配する慶大に対し、守備陣形を整えじりじりとプレッシャーをかける帝京平成大という構図が明確に見られた。両チームなかなか決定機は生み出せないものの、慶大は確実に試合を優位に進めた。相手がプレッシャーを強めればボランチの中島らが最終ラインに加わり組み立てをサポートするなど、巧みな戦いぶりを見せる。39分には鈴木紗理(総2・十文字)のスルーパスから山本華乃(理2・横須賀シーガルズ)がシュートを放ったものの、これは相手GKの守備範囲内。45分間を通して相手にはほとんどチャンスを作らせず、ひとつのミスが命取りになりそうな緊張感のある試合は、0-0で前半を折り返した。
後半に入ると、帝京平成大は明らかに前線からの圧力を強めた。プレスを剥がしてチャンスを作りたい慶大だったが、試合の行方を決定付ける2つのプレーが訪れる。54分、慶大が中盤でボールを奪われると、相手FWの思い切ったミドルシュートがクロスバーを叩いて枠内に収まり、先制を許してしまう。そして直後の55分、動揺を隠せない慶大は、最終ラインでの雑なパス、トラップミス、判断ミスが重なり、ゴール前でボールを奪われて痛恨の2点目を献上。伊藤洋平監督が「年間通しての課題だった」と語ったミスからの連続失点で、2点のビハインドを負ってしまった。その後、再び試合は前半と似た展開へ。鈴木のアイディアや工藤真子(総3・日テレ・メニーナ)の推進力が光ったものの、帝京平成大の堅守の前にゴールが遠い。それでも76分、松木里緒(総3・常盤木学園)が右サイドの裏へ抜け出すと、クロスのこぼれ玉を1年生の平田がゴールに流し込み、1点を返した。何とか同点弾を――。攻勢を強める慶大だったが、あと一歩守備を崩しきれず、時間は過ぎていく。89分、鈴木のスルーパスに反応した山本のシュートは、相手GKが足で決死のセーブ。1-2で試合終了の笛が鳴り響き、慶大のインカレは終わりを告げた。
関東第7代表が、優勝候補本命に対して互角以上の試合をした。大健闘だと賞賛することは簡単だ。しかし、試合後の監督、選手たちの表情、コメントから滲み出ていたのは、“勝てる試合”に勝てなかった悔しさだったように感じた。それだけ彼女たちは、1年間貫き続けた自分たちのサッカーに、自信と手応えを持っていたのだろう。敗因となったのもまた、「ミスありきでボールを大事にする」(伊藤監督)自分たちのサッカーだった。「我々らしく負けた」――。真に賞賛されるべきは、結果それ自体よりも、強敵相手にもリスクの高い自分たちのサッカーを貫き続けた勇敢さではないだろうか。インカレベスト4には届かなかった。それでも、彼女たちのサッカーは、全国に確かな爪痕を残した。散り方も含めて、この試合は紛れもなくTEAM2018の集大成だった。
(記事:桑原大樹 写真:柴田航太郎、岩見拓哉)
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以下、試合後コメント
伊藤洋平監督
選手は本当によく頑張ったと思いますし、我々らしく負けたかなと。こういうサッカーをやらせたのは僕の責任ですし、選手たちはそれに応えて本当によく頑張ってくれました。
――試合を振り返って
前半とかはゲームを支配できてましたし、以前戦ったときより手応えも感じてたんですけど、我々の年間通しての課題だった、ミスから連続失点してしまったところが、ちょっと痛かったですね。
――特に前半は試合を支配していたが、これまでの2戦から立てた対策ははまっていたか
そうですね。もうちょっと(相手が前から)来るかなと思ってたんですけど、まあどんな相手が来ても戦える準備ができていたので、よくやってくれた選手たちが素晴らしかったと思います。
――立て続けに2点を取られて崩れるかと思ったが、巻き返して追い詰めた
そうですね。一瞬バラバラになりかけたんですけど、また(中島)菜々子中心に最後まで追い上げることができたので、まあひとつ成長できたのかなと思います。
――インカレベスト4という目標には届かなかった。何が足りなかったか
難しいですね……。やっぱりラスト30メートルのところのクオリティと、ミスありきでボールを大事にするサッカーなので、その中でいかにポジティブな雰囲気作りだったり、ミスを補う周りの声掛けをするかというところだったかなと。
――TEAM2018最後の試合は30日の入替戦となる
本当に気持ちを切り替えて、まずは1回休養を与えて、本当に下田という意味でも4年生という意味でも最後の試合なので、必ず勝って終わりたいと思います。
中島菜々子(総4・十文字)主将
うーん…もう一度やりたいなって、悔しいなっていう気持ちが強いです。
――最後のインカレはどうでしたか
楽しかったなっていうのが一番の感想で、1年生の時も一番楽しかったのはインカレだったし、それとはまた違った楽しさとプレッシャーを感じつつではあったんですけど、やっぱりこういう舞台に立てるのは本当に楽しいなって。楽しかったです。
――応援してくれた人たちにメッセージを
本当に神戸まで、1回戦もたくさんの方々が応援に来てくれて、今シーズンは大学リーグとかも本当にアウェイとか遠方での試合が多かったんですけど、それでもこれだけ応援に駆けつけてくださって本当に力になったし、感謝しています。でまた30日もあるので、最後まで応援よろしくお願いします。
工藤真子(総3・日テレ・メニーナ)副将
本当に悔しいの一言に尽きますね。
――試合を振り返って
前半は良い感じでボールをつなげていて、流れも良かったんですけど、やっぱり後半相手の勢いに負けて失点してしまい。そこから自分たちのサッカーができなくなってしまいました。
――前半はやりたいことがかなりできていたように見えた
そうですね。前半はシュートもあったし、中盤でサイドチェンジもできたし、自分たちが今までやってきたサッカーができたと思うんですけど、後半相手のプレッシャーが強くかかってきたときに、自分たちのサッカーができなくなってしまったので、そこはまだまだ自分たちの足りないところだなと実感しました。
――最後は勢いを持って追い詰めたが、あと一歩届かなかった
1点取った後、もう行くしかないって感じでみんなで前へ前へ行ったんですけど、得点が遠くて……後半もシュートは少なかったですし、2点は遠かったなという感じです。
志鎌奈津美(環4・常盤木学園)
特に2失点目に関しては連携ミスでの失点だったので、すごく悔しいの一言で。試合を通して、自分たちのサッカーをしてたけど、やはり少しの連携のところとか、そういうところのミスで負けてしまったのは悔しいし、インカレは終わってしまったんですけど30日に入替戦がまだあるので、そこでもう1回締め直してそこは勝ちきれるようにしていきたいと思います。
――ご自身のGKとしての成長を振り返って
時間が、本当に無い中で少しでも上手くなるために練習だけじゃないところ体づくりとか、小さいところからずっとやってきたので…そうですね…ここまでの取り組みに関しては、まあやれることはやってきた自信があったので…勝ちたかったなあという気持ちです。
平田朋(環1・日ノ本学園)
本当に悔しいです。
――今日の先発はいつ伝えられたのか
昨日です。
――おとといの1回戦は応援席から試合を見ていたが、何を感じていたか
悔しい思い、自分が出たいっていう思いもあったんですけど、先輩とかのプレーを見て、しっかり応援しようって言う気持ちでした。
――今日の左サイドは、特に前半は監督から指示が多く飛んでいたが、どのような指示だったのか
相手のディフェンスラインを下げろと。裏にどんどん走って、周りの人にスペースを空けろという感じでした。
――得点シーンを振り返って
得点できて嬉しかったですけど、チームが勝てなくて本当に悔しかったので、1点じゃなくて2点決めて、結果につながったら良かったなと思います。